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その五

依頼というのはクモの討伐だそうだ。

クモ。

あの虫の蜘蛛にそっくりなやつだが、歴とした魔獣であり、何よりもサイズがおかしい。これまでに観測されたクモで最も大きいものは、二階建てで他に食堂やら公衆浴場なんかも併設している会館よりも、巨大なやつがいたらしい。


「つっても、そんなでかさがやばそうなやつはいなかったじゃねえか」


現に、お前は素手でクモを撃退していた訳だし。


「ねえ……知ってる……? 繁殖期のクモをプチってやるとね………………お腹から…………わらわらと…………幼体が……………」

「きぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「シノア、棒読み悲鳴やめろ」

「しかも…………その個体が毒もちで………………土壌汚染に気を遣って………………捕獲が必須になったのです…………………!」

「いやぁぉぁぁぁぁぁぉぉ」

「ケイト、君一瞬でブーメラン投げるのやめた方がいいと思うよ」


つい……。

だが、少なくとも帰還が長引いた理由は分かった。

分かったが。


「お前が野生化してた理由と、連絡を途絶えさせてた理由は?」


肝心の部分がなにも分かっていない。というか、野生化って言ってるの俺だけど訳分からねえな。もともと、アイシアは野生っぽいところあるし。


「私は温室純粋培養淑女だから、野生とは最も程遠い存在な訳だけど」

「無理!」

「何を言ってるんですか?」

「アイシア様、頭大丈夫ですか?」


アイシアが刻印をそこら一帯に刻もうとしだしたので、羽交い締めにする。彼女はその状態で身体から力をだらりと抜いて俺の胸に頭を預けてきた。


「私が淑女であるという仮定のもと話を続けるのだけれど」

「あくまでも、仮定だからな」

「クモの子のサイズってどれくらいだと思う?」


ぶっちゃけ、それは種類によるだろう。さっき、追い払われていたエンプレス種なら俺の拳一個分くらいだ。


「そう、これくらいなのよ」


両の手で、俺の手が包み込まれる。


「…………お嬢、アイシア様がここにいる皆が知ってることをわざわざ聞いたのって……」

「お察しの通り……単に手を握りたかっただけですね…………」

「これくらいなの!」


急に叫ぶな。

俺は閉じていた拳を開いて、アイシアと指を絡める。


「…………当たり前の顔して、いちゃつき始めましたね…………」

「……お邪魔かなとは思うのですが、邪魔を、しておかないと…………私達の帰還も遅れてしまうので…………」


うるせえ、久しぶりなんだから許せ!(逆ギレ)


「で、これくらいなのは十分に分かったが」

「このサイズが基本的には地面を歩いているのよ。 捕獲するなら、私はどんな体勢になると思う?」


そりゃお前、屈むとか腰を曲げるとか。


「そうなのよ。 私は四つん這いになって探してたんだけど、動物みたいって思っちゃって……それが……自己暗示になってたみたいで…………」


野生化したと。

そんなバカなことある?

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