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その二

説明会

 俺たち魔狩りは、基本的に依頼を引き受けてその報酬で生計を立てている。では、その依頼人はというと国であったり、個人であったり、各種ギルドであったりとさまざまである。それらの依頼は、魔狩り個人にするものもあれば、魔狩りを取りまとめる組織を経由するルートもある。後者の魔狩りを取りまとめる組織の名称は、魔獣関連ギルド連合会中央管理会館という長ったらしいものであり、通称会館と俺たちからは呼ばれている。

 そして、この会館のトップはギルドマスターと呼ばれる。まあ、あだ名みたいなもんだ。


 いつもギルドマスターは、依頼受付カウンターの奥にある狭いスペースで、書類に押しつぶされているのだが今日はいなかった。俺は、なじみの会館職員に声をかける。


「あの、ギルドマスターは?」

「ああ、ケイトさんお待ちしてました。ギルドマスターは、執務室にいらっしゃいますので、そちらにどうぞ」

「珍しい……」

「研究所からお客人が来ていらっしゃるんですよ」


 研究所という単語に俺は思わず、うわあという顔をしてしまう。学者という人種は、俺の知る限り我が道を行くやつが多いのである。俺も何度あいつらの検証という名目で、謎の薬や未知の植物を食わされそうになったか……。

 俺のそんな表情に、職員は苦笑いだ。


「えー、もしかして今回の焼き討ちに、研究所が絡んでくるのか」

「それも含めて、説明されると思いますよ。……色々と、ね」


 不穏すぎる。憐憫の眼差しの職員に見送られながら、とてつもなく重い足取りで俺は執務室へと通じる階段を上った。


 執務室の前へと、たどり着いてしまった俺は、扉をノックしようとして張り紙に気づいた。文字を読めない者にも通じるように、絵での説明もされている。ちなみに、俺は読み書きは普通にできるようになった。


「えーと、『ドアが壊れるから、ノック不要。あと、壊れかけているから、ゆっくり開けてね』また、ここのドア壊れかけてんのかよ……」


 俺は、張り紙に従ってゆーくりと、扉を手前側に引いた。うお、がごんってなった。

 執務室の接客用のソファにはギルドマスターと、それに向かい合う形で一組の男女が座っている。二人とも顔見知りである。ギルドマスターは、扉を開けたまま中々部屋に入ってこない俺を、怪訝に感じたようで、声をかけてきた。


「ようやく来ましたかケイトさん。早くこちらに」

「お久しぶりです、ケイトさん。今回はお世話になります」

「ああ、どうも。あの、ギルドマスター」

「何ですか」

「……扉が外れかけているので、元に戻すのを手伝ってほしい」


 ずっと無言だった男の客人が手伝ってくれた。いつも済まないねえ。


 俺は、ギルドマスターの隣に腰掛けて、客人二名と向き合った。女の方はシノア・ド・ディグディグ、男の方はカイという名前だ。シノアは、アイシアと同じく貴族出身だ。


「改めまして、お久しぶりですケイトさん」

 

 紫の虹彩をもつシノアは、俺のほうに軽く頭を下げた。隣のむっつりとした大男は、それに倣って無言で頭を下げる。


「なんというか、相変わらず凸凹してますよね」


 身長というか、性格というか。


「ケイト君」

「大丈夫ですギルドマスター。その通りですから」


 けらけらと笑いながら、シノアは続ける。


「それで、アイシアさんはお元気ですか?」

「元気が有り余ってます」

「あの扉を壊したのは、アイシアさんです」

「え、そうなの?」

「ええ。まあ、彼女はお金持ちなので、弁償させましたが」

「相変わらずですね、さすがです」


 感心するシノアと、その隣のカイは肩を震わせている。笑っているのだろうが、いまいちツボがわからん。


「それで、本題は?」

「ああ、忘れてました」

「「おい」」


 思わずギルドマスターと、俺の突っ込みが一緒になってしまった。一見まともそうなこの女も、研究所の一員であり割と我が道を突き進む。カイは、はよせいとシノアを目で急かしている。


「先日のエンペラー種の調査結果に関しては、後日ギルドマスターに渡しておくというご報告が、まず一つです」

「わかりました」

「それで、本題なのですが……今年の胞子症は例年よりも、勢力が強いようなんです」

「やはり、ですか」


 ギルドマスターは、実感があるようだ。そういえば、この人も胞子症持ちだった。シノアは、深刻な面持ちでうなずく。


「おそらく、ヤマツチモドキが大発生している影響だと思うのですが、少し気になる点があるので、こちらのカイも一緒に焼き討ちに同行させていただけないでしょうか」

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