魔獣報告書 零足科湿地這類コケシタ種+おまけ掌編(カップルの日常)
宿題消化
零足科湿地這類コケシタ種
コケシタの正式な分類は、零足科湿地這類コケシタ種である。
《零足科》
命名理由:足が0本であるように見られたため。実際は、極めて短い足が幾本もついていることが、近年明らかにされてきた。
《湿地這類》
命名理由:湿気が多い地域に生息し、その移動方法が地を這うというものであったことから。なお、乾地這類も存在する。
特徴:足が非常に小さく、移動する際はその身体を左右に揺するようにして前に進んでいく。雌雄はなく、分裂で増加してする。個体としての寿命は、ニ、三ヶ月である。気性は穏やかである。
生息地:湿ったところであればどのようなところでも生息する。
特殊な個体は、他の魔獣の口の中をその巣とする。
《コケシタ種について》
主な生息地:日が差さない森、川や沼の付近
特徴:石の裏や、苔が自生するところに生息する。人間の居住地域でも、植木鉢の裏などでしばし発見される。その身体は体液で常に湿っており、肌の乾燥を防ぐためである。
命名理由:苔の下で見つかることが多いため。
《コケシタ種マモノ化個体について》
コケシタがマモノ化すると、体液はあらゆる物質を溶かす液体へと変化する。これは、外敵から身を守るためであると考えられる。通常、マモノ化は一個体のみで生じるが、コケシタは分裂して増殖していくという性質があったことから、ある個体が何らかの要因で分裂し、複数のコケシタ種マモノ化個体が発見されたと考えられる。
なお、乾燥に弱いという性質はそのままであった為、炎や風などを用いて排除することができた。
《退治について》
コケシタ種:基本的に無害なのだが、見た目が不評なためしばし処理されることになる。代表的な対峙方法としては、塩をかけることである。また、日当たりが良いところにコケシタを移動させれば、自然と処理することが可能である。
コケシタ種マモノ化個体:塩がその身体を乾燥させる前に、塩そのものを溶かしてしまうため、何らかの物体を近づけることは良い方法とは言えない。そこで、熱や風といった形を持たないものでその水分を奪っていく方法が最適解であるといえる。
【おまけ:カップルの日常】
自身の恋人は、意外と一肌恋しいタイプだということを、アイシア・ディ・グノルは最近知った。
「ケイト」
「んー」
呼び掛けても、ケイトはぐりぐり頭を動かすだけで、アイシアのことを手放そうとしない。
「もう、太陽大分高いところにあるんだけど?」
「今日予定何もないだろ」
寝室の天窓から差し込む陽光が、今日は快晴であると告げている。
一緒のベッドで眠っていたと言うわけではなく、アイシアが暇をもて余して、ケイトのことを起こしにきたら捕まった形だった。
「でっかい犬みたいね……」
ボサボサになってる頭を、ぐりぐりしてくるところとか。
撫でてやろうかと思い、手を彼の頭に近づけようとして、
「きゃっ」
彼にその手をぐいっと引っ張られた。アイシアはバランスを崩して、そのままケイトの横に寝転がる形になる。
ケイトは、ぎゅうぎゅうとアイシアのことを抱き締めながら、鼻をスンスン鳴らす。
「匂い、かがないでよ」
「んー」
返事はなく、彼の目は閉じられたまま。
アイシアはため息をついてから、諦めて隣のでっかいワンコみたいな野郎の胸元に顔を埋めた。