その十七
人類滅亡の危機。
うんまあ。
「良くあることだな」
「そうね」
「カイ、どうしましょう。想定した反応が帰ってきません」
「人選を間違えているって、あれほど言ったじゃないですか」
この前も滅びかけてたし。季節の風物詩だ。季節を無理やり塗り替えることもできちゃう環境種が移動するだけで、俺達はピンチなのだ。まあ、さすがに毎年じゃないけど。
「冗談はさておき、何が分かったの?」
「それなんですが、この魔獣の分泌液ですが固形物であれば何でも溶かしてしまいます」
「なんでも?」
「はい、材質に関わらず」
「うわあ」
ん?なら、なんでシノアが掲げている瓶は溶かされてないんだ?
「危険を察知したときだけ分泌されるようですね」
「あー、なるほど」
常に周りを溶かす訳じゃないのね。
「ただ、本来のコケシタと違って、乾燥にとことん弱くなっています」
マモノ化の弊害なのだろう。マモノ化は、ある種の賭けみたいなもんだからなあ。
「逆にいえば、乾燥しないような所に居ることができれば、何も問題はないんですよね」
「ひょっとして、大当たりひいちゃってる……?」
「そうなんです、アイシアさん。弱点が極端な弱点にはなっていないんですよ」
何つーはた迷惑な。これも、ついこの前俺達が撃退した環境種──文明喰らいの影響なのだろうが。おのれ環境種。
「でも、案がない訳じゃないんでしょ?」
「ええまあはい。乾燥に弱いのは、間違いないので何らかの手段で水気を失くせばどうにでもなります」
「塩でもかけとくか?」
魔狩り必須スキル保存食作成の基本だ。取りあず塩ふっときゃなんとかなる。
だが、俺の提案はカイに否定された。
「ダメなんだよ。いわゆる塩だと、固形物ってことで溶かされるんだ」
「ええ……」
「種族魔法が変化しすぎね……」
コケシタの種族魔法は「何か周りをじめじめにする」だったはずなのに。人間の文明の破壊に特化しないでほしかった。
「なので、火にあてます」
「あー、なるほどね」
炎の熱で、水分を飛ばすのか。マモノ化コケシタ──長いからマコケと呼ぼう──が絶命するまで時間がかかりそうだが、シノアが乾燥に極端に弱いと言っていたので、何とかなるんだろう。
「ひとまず、ここ周辺のマモノ化コケシタを駆除したいのですが、アイシアさん燃料になりそうなものに心当たりはありますか?」
「私の家焼いちゃって大丈夫よ」
「「え?」」
「良い機会だしどうせなら、俺と一緒に暮らすか」
「そうするわ」
「「え???????」」