その十六
ズッコン!という、音と共に研究所コンビが着地する。どこがどうなってそんな音鳴ってるんだよ。
「無事に採取できました!」
シノアは綺羅きらしい笑顔で、報告をしてくる。勿論その手に握られている瓶の中には、コケシタ(マモノの姿)が入れられていた。
うん、さっき嫌というほど見たからそんなに自慢してくれなくても良いんだけど。
「ってお嬢、瓶溶けてきましたね」
「あらあら、それなら…………普通にどうしましょうか……」
こっち見んな。というか、俺達も知りたい。
シノアが何とかして(魔法を使ったらしい)、これからコケシタ(仮)の分析に移るらしい。
で、俺達は何をしているかというと。
「ほれ、アイシア新しい枝だぞ」
「ありがと……ここに溝を掘って……よいしょ」
ボッカーン。
「おー、掘れた掘れた」
「もうちょっとあなたも手伝ってほしいのだけれど」
「だから、枝を提供してるだろ」
アイシアの食糧庫の周りに穴を掘っていた。かろうじてまだ食料庫からあの蠢いている連中は出てきてないが、それもどうせ時間の問題だ。なのでここらの周囲にあれが散らばる時間を遅れさせるために、空堀的なものを今準備しているのだ。主にアイシアが。
「労働量が釣り合ってないでしょ、どう考えても」
「しょうがねえだろ、こんな堀り方お前以外できねえだろ」
「言い出しっぺあなたの癖に……」
それはごめんね。でも、取りあえずこれしか方法思い付かなかったんだもん。
だから、枝いっぱい出してるじゃん。結構つかれるんだよこれはこれで。なお、疲労度はアイシアの十分の一程度だとする。
「というわけで、これぐるっと一周してまんべんなく置いてきて、ダッシュで」
普通にきついんですけどこれ。
「えー、何やってんのさ二人とも」
アイシアと、仲良く指を絡めて遊んでいたら、俺達を呼びにきたカイがすげえ嫌そうな顔になってそんなことを聞いてきた。
「体力回復」
「ケイトがどうしてもしてほしいって言うから」
「嘘こけ」
「…………もう今後二人から目を離した間に子供とかできていても驚かないようにするね」
驚けよ。
そんな一瞬で子供できる分けねえだろ。つーか、手を繋いでいただけでそんなにいうことか?
「冗談は置いといて。解析できたから戻ってきて」
「あいよ」
「手は繋いだままなんだね……」
あっ、忘れてた。
「素晴らしいことが分かりました!」
「魔獣の弱点とかかしら」
「人類は滅亡します!」
勢いつけていえば良いってもんじゃねえぞシノア。