第3話 『半魔の子』
2021年は更新頑張りたいと思います。
1/1 0:00から投稿スタートしました!
新しく戦闘物が書きたいとなり、
書き始めました。気軽に始めました。
のんびりと更新していくので、
末永くよろしくお願いします。
真夜中の星が綺麗に光っているなか、
少年と黒服の男は話していた。
「そういえば、君の名前はなんて言うんだ?」
「僕は、モノシロ カズユキっていいます。」
「カズユキ君か、いい名前だな。母親がつけたのか?」
「はい。父さんと母さんから貰いました。」
モノシロ カズユキ。
彼は、現在1人でこの家に住んでいた。
両親は共に不慮の事故で亡くし、祖父や祖母も
既にこの世を去っていた。
少年は、親戚や近隣住民の力を借り、何とか今日まで生きのびていたのだ。
「貴方は・・・?」
「レン。ミカミ レンだ。」
「レンさん!よろしくお願いします!」
カズユキは手を差し出した。
――――・・・。
それを見たレンは、過去のことを思い出しながら
その手を握った。
「よろしく、カズユキ君。」
――――ピピッ
「お・・・。」
レンはそっと立ち上がると、口を開けこう言った。
「君を、特殊警察本部へ連れいく事になった。」
「僕を・・・?」
「あぁ。アンズさん・・・。いや、上司が、君をよく見てみたいってさ。」
「僕は構いませんよ。」
――――数分前――――
「と、言うわけなんです。」
アンズ管理官へ、先程あった出来事を一から説明した。小規模な戦いがあったこと、少年のこと、継承の魔人のこと。
「なるほど・・・。その少年は今どうしてるの?」
「はい。今は大人しくしてます。」
カズユキは静かに夜空を舞う星を観察していた。
「なるほどね。少年が身体の所有権を持っている時は害はなくただの子供。ただし、継承の魔人が身体の所有権を持った場合には暴れかねない。継承の魔人の時の記憶は彼には全くないの?」
「いえ、彼は見ていたが頭の中は真っ白だったって言ってます。」
カズユキは、先程の戦闘を目で見ていただけであり、自身で身体を動かし、考えることまではできていなかった。
「わかったわ、彼をここへ連れてきて。私の目で見て判断します。」
「本部へ?!いいですか?!」
「えぇ。私が決めます。彼を『殺す』か『生かす』か。」
――――現在――――
「協力感謝する。」
そういい、レンは手錠を出し少年の手へと付けた。
「あの、これは・・・?」
「すまないな。もし、また魔人が暴れても大丈夫なように念の為だ。」
カズユキは、少し不満そうにしたが納得し、レンへとついて行った。
―――おい、ガキ。
「え・・・?」
―――おっと、悟られないように話を聞けェ。
「ん?どうした?」
カズユキは、レンにそう問われると、いいえと首を振った。
カズユキの脳内には魔人の声が響いた。
――――お前、このまま奴に着いていけば間違いなく殺されるぞ?いいかァ?
「・・・っ!」
少年は足を止めた。
「・・・?」
――――さっきの通信、我にはハッキリと聞こえていたさ。お偉いさんが、お前を殺すか生かすかを決める。そう聞こえたさァ。
「どうした?カズユキ君。」
レンは少し怪しい目で見ていた。
「と、トイレ!トイレに行きたくて!」
咄嗟に出た嘘だった。
バレれば確実に切られる。
そう考えていた。
「なんだ。トイレか。トイレならすぐそこだ。待ってるから行くといい。」
「ありがとうございます!」
そう言われると、カズユキは颯爽とトイレへと向かった。
「ああ、カズユキ君!」
「はい!」
カズユキが足を止め振り返ると、
「・・・っ!」
刀を片手にしたレンが居た。
「魔人にも忠告をしておく、聞いているならな。少しでも逃げようなどの真似をしたら切る。」
そう低く呟いた。
「そ、そんなことしないよ!」
そういい、止めていた足をトイレへとは知らせた。
――――おぉ。怖い目をしていたなァ魔人狩りめ。
「いいから教えろよ!どうしてこうなったのか、どうして、死ぬのか生かされるのか決められるのかを!」
――――あぁ、教えてやる。だが、教えてやる代わりに条件を設けよう。
「はぁ?」
――――我が貴様の身体の所有権を自由にできる。という条件だ。
「断る。」
――――な。
魔人の考えていること。
そんなことは明白だった。
カズユキでもわかるくらいに。
「僕の身体を自由にさせることは出来ない!そんなことをして僕が人を殺したら僕が人殺しになる、そんなの嫌だね。」
――――あぁはいはい。それじゃあ、"人"は殺さん。それでいいだろう。
「分かった。ただし、僕が返せと言ったらすぐに返せ!」
――――わかったよ。
「よし、じゃあ教えてくれ。」
――――まず、我が貴様の身体の乗っ取りを完全に出来なかったことについてだ。
そこからは、長々と経緯について語られた。
継承の魔人が上手く乗っ取れなかったこと、
それは、レンとの戦いでの消耗とダメージの蓄積、その両方が大きすぎたためであるのと同時に、
腕にしか意識がなかったからであった。
「なるほど、だから腕だけ僕の家に・・・。きもっ。」
――――失礼なクソガキだなァ。んで、生きるか死ぬかのことだが、魔人狩りはお偉いさんにこう言われてた。
『えぇ。私が決めます。彼を『殺す』か『生かす』か。』とな。
恐らく、お前が上手く我を抑え込めず、暴走させると断定された時点で死刑だな。
「なっ!それは困る!」
――――我も困る。
継承の魔人にもそれは不都合だった。
前回とは違い、身体が完全でない為に、
次への乗っ取りが出来ないためだ。
継承できなければ、魔人も死ぬ。
「僕は頑張る。」
――――まあ、その辺は我も協力するさ、我の為にな。そして、生かされた場合だ。お前はおそらく、特殊警察官への加入を求められるだろう。
「な、なんで?」
――――当然だろ。お偉いさんにも、魔人狩りにも監視される。いつでも殺せるようにな。
暴走した時点で切られる。それだけだろ。
「なるほど・・・。警察官・・・。」
――――なんだ不満なのか?
「・・・・。」
カズユキには夢があった。
何にも縛られずに、平凡に生きる。
その為に、収入もいい公務員になる。
市役所かなにかになって、平凡な暮らしをする。
それが夢だった。なのに、警察官しかも特殊警察官。平凡とはまさに程遠い存在になろうとしていた。
――――なあに。我の為に貴様は生かしてやる。もし、死刑宣告されたら、我に身体を一時的に譲れ。逃がしてやる。逃げて生き続けるのだ。我と共にな。どちらにしろ平凡なんて無理だ、諦めろ。そうだ・・・、先に行っておくぞ、――――――――――
カズユキはレンの待つ車へと向かった。
「長いトイレだったな。」
レンの元へとカズユキは戻ってきた。
「はい。大きい方だったので。」
そう言うと、レンは車に乗りこみ、カズユキと共に特殊警察本部へと向かった。
――――東京 特殊警察本部 管理室――――
「失礼します!」
レンとカズユキは管理室へと入った。
そこには、アンズ管理官が座ってこちらを見ていた。
その目は少し怖くもあったが、なぜか安心もしていた。まるで、天使と悪魔の狭間に住む者のような瞳をしていた。
「君が、話に聞いていた半魔の子だね。」
ニヤッとしながら、カズユキへ話しかけた。
第3話 『半魔の子』(完)