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蜃気楼  作者: ことり
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4

案内をしてもらったラーメン屋は本当に近くで

そして安くて美味かった。


「うちの会社の奴らもさ、よく来るんだよ。

カウンターに座ってたら、隣に部長がって事もあるんだ」


奥野さんはチャーシュー麺とチャーハンの大盛りを、俺はらーめんと唐揚げの定食を頼んだ。


そういや、前の会社でもよくラーメン食いに行ったなぁ

ここまで決して安くはなかったけど。


「嶋本さんってさ、前は大企業にいたんだって?」


「いやいや、大企業ではないですよ、全然」


大企業ではないが、自社ビルを持ち、全国に営業所が点在する会社ではあった。


社内には食堂もあったが、食堂に向かうエレベーターが混雑していて、やっと着いたら満席ということも多々あり、結局は外へ買いに出るか食べるかだった。


「新しい人が東京の大きな会社から来るらしいって、みんな噂してたんだよ。しかも独身でイケメンらしいとかって女子が騒いでた」


「は⁉︎イケメンとかってどこの情報ですか。酷いデマですね」

一応、身なりは気にして最低限は整えていたが、

決してイケメンではない。


「まぁ、東京の男ってだけで評価は高いんだよ」


「東京って…元々は地元こっちなんですけどね」


「けど、10年以上もいたんだろ?そしたら、やっぱ全然違うよ」


「奥野さんはずっとこちらに?」


「あぁ、大学もここから通った。生まれも育ちも地元でさ、まさか嫁も地元でもらって地元で一生暮らすとは思わなかったな」


チラッと彼の左手を見ると、指輪が見えた。


「離れたいとは思わなかったんですか?」


「思ったよ。大学進学の時にね。

けど、じゃあ地元離れて何がしたいって考えた時に何もなくてさ、特に勉強したい分野もないし。

なら家から通える所でもいいかなって」


「それでも、会社に就職して、結婚して、いいじゃないですか」


「まあな。そっちは?結婚」


「全然ないですよ。相手もいないし」


「そうなん?てっきり、東京に彼女残してきたんだとばかり思ってたよ。意外だなぁ………けど、それなら益々騒がしくなるだろうな」


「は?何ですかそれ」


「ま、頑張れよ」


「何を頑張るんですか」



ガハハハと笑いながら奥野さんはラーメンの汁まで飲み干した。


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