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蜃気楼  作者: ことり
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3

「嶋本です。よろしくお願いします」


転職というのは初めてで、こういった自己紹介には緊張をする。

他の社員たちも興味津々とばかりに俺を見ていた。



地元に戻って1週間

荷物の片付けやらであっという間に時間は過ぎていった。

父親の知人の紹介で入った隣町の小さな会社。

電車を使うと1時間以上もかかるが、車通勤が認められていて、車だと30分で着く。


元々は地元と同じ「町」だったにも関わらず、市町村合併で大きな市の一部となり、急激に発展した。

総合病院もある、コンビニもガソリンスタンドも、ファミレスだってある。カラオケ店まで出来たらしい。最近は大きな土地を買収して大きなマンションを建設予定らしい。


一方で地元は喫茶店というよりも飲み屋みたいなのが2件、

コンビニもなく、昔からある食料品店が1件。

病院だって小さな診療所があるだけ。

カラオケもマンションも無い。


「市」になり損ねた我が町とは雲泥の差である。


当然、働く場も「市」の方がたくさんある。

地元の人間の多くも隣町へ働きに行っている。


前職で経理をしていた経験を買われて、ここでも経理課に配属をされた。


「東京から来た人間」


というのは珍しいらしい。

もちろん、この町から東京へ行った人間は他にもいる。

だが、ほとんどが大学卒業と同時に戻ってくるか、東京で一生を過ごすか、定年を迎えた頃に戻ってくるかで、この年齢で戻ってくるのは少ないらしい。



「とりあえず、この席で。仕事の事は奥野係長に聞いて」


課長に言われ、俺の席の隣に座っていた、俺より少し上の恰幅の良い男性社員が立ち上がる。


「よろしく、奥野です」

「よろしくお願いします」


いかにも体育会系の、気の良さそうな同僚に安心をした


それから、業務の説明や引き継ぎをしていると、気がついたら午前中が終わっていた


「嶋本さんはお昼どうするの?何か持ってきた?」


実は前日に母が「お弁当を作ろか?」と聞いてきたが、さすがに34にもなって親に弁当というのは恥ずかしい。

幸い、会社の近くにはコンビニもあるし、そこで調達をすればいいだろうと思っていた。


「いえ、コンビニで買おうと思ってます」


「そしたらさ、ラーメン食いに行かない?安くて美味しい店が近くにあるんだよ」


「はい、ぜひ」



俺と奥野さんは財布とスマホを持って立ち上がった。


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