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蜃気楼  作者: ことり
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休業期間の暇つぶしに書いてみました

ミーンミーンミーン…


9月も終わりというのに、うだるような暑さ。

都会と違い、田舎は少しくらいは涼しいかと思っていたが、期待を裏切り何処へ行っても暑いものは暑いらしい。


2時間に1本しかないローカル線に乗り、小屋のような駅員もいない駅に降り、もちろんタクシーもバスも無い。


70を超えた母が車で迎えに行くと言っていたが断って

田舎道をひたすら歩く。


学生時代に何度も通った道。

その頃はで50分くらいどうって事も無かったが、さすがに30も半ばに近い体だとキツイ。さらに暑さも加わって素直に迎えに来てもらえば良かったと後悔をした。


それでも、今も昔と変わらない寂れた街並みにどこかホッとしている。



「変わったのは俺だけか」



高校を卒業し、地元を離れて16年。

それでも、大学の長期休暇の時や就職をしてからもちょくちょくは帰省していた。

でも、25歳の時を最後に色々と理由をつけて帰ってきていない。


この町に帰ってくるのは、9年ぶりの事だった。



あの時、もう二度とこの町には戻らないつもりだった。

もちろん、両親にとって俺は1人息子で、年老いた親のことは心配だった。

帰省しない分、まめに連絡を入れたり仕送りを提案したりしたが、元気そうで「こっちはのんびり元気にやっている」「金の心配はするな、自分の貯蓄にまわせ」といって笑っていた親父。


だが、その親父も脳梗塞で倒れ、今までのように暮していくことは難しくなった。

幸いにも、命はとりとめ、日常生活を送る分には回復したが、今までのようにとはいかず、同じく年老いた母が心配だった。


母も「何とかやっていくから大丈夫」とは言うものの、その声から不安を抱えていることは一目瞭然であった。



2人ともこちらへ来ないか?と言っても、この町で長年過ごしていた2人がいきなり町を離れる事は気持ちが向くはずもない。


身体が不自由になった父と、毎日不安に押し潰されている母



放っておく事はできなかった




決心をした俺は上司に説明し、同僚に引き継ぎをして会社を退職し、不要な家財道具を処分してマンションを引き払った。

幸いにも、父の知り合いの伝手で実家から通える会社を紹介してもらい、働く場所も決まった。


生まれ育ったこの土地で、両親と3人で暮しながら静かに生きていく。

それでもいいかもしれないと思ったのは、俺には結婚をするような相手もいないし、作る気もない。

いづれ両親が死んだら、この家で1人、ただひっそりと生きていく。


そんな未来にも、それでいいと思う。



それでいい。



もう、誰も愛する事もない。


田舎の1本道

誰も歩いていないし車も通っていない

ふと顔を上げれば、道の先に蜃気楼が見えた。


まるで俺の気持ちを代弁するかのように

一応補足として、父が倒れた時に搬送された病院が隣町で、滞在したホテルも病院の近くに泊まっていたので、地元には足を踏み入れていないという設定です。


投稿してから、「お父さんが倒れたのに、地元に戻らないのは親不孝だなぁ」と思ったので。

ちなみに、両親も息子が町に戻りたくないと思っている事を分かっているので、無理に実家に帰りなさいとは言わない。

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