里帰り
今日、ユリアとトーマスは久しぶりに魔法カフェに向かっていた。
朝から楽しみで落ち着かないユリア。
「トーマス様、何だか緊張して来ました。」
トーマスはそんなユリアが可愛くてしょうがない。
「そうだね、結婚してから初めての里帰りだからね。」
トーマスは笑いながら言った。
今日、2人が魔法カフェに向かう理由は、カフェ再開に向けて家の改修工事の様子を見に行く事だった。
ユリアが生まれた頃からそのまま使っていた家なので、所々だいぶ古くなっていた。
「工事の責任者に会ったら、外壁はほとんど終わったそうだよ。今は中を工事している頃だと思うよ。」
「うわぁ!どんな風になっているのか楽しみです!」
「そうだね、僕も楽しみだ。」
そんな話をしているうちに、馬車は見慣れた街並みに到着した。
馬車から降りるユリアとトーマス。
すると、向かいにある家から顔見知りのおばさんが出てきた。
「ユリアちゃんかい?」
「おばさん!」
「まぁ!ユリアちゃんじゃないの!」
「お久しぶりです!」
その声に近所のお店から人が出てきた。
「ユリアちゃん!」
「まぁ!綺麗になって!」
あっという間に沢山のご近所さんが集まった。
「ユリアちゃんなんて呼んだらダメだろ!今は貴族の奥様なんだから!」
「もう!おじさん!そんな事言って。前みたいにユリアちゃんでいいですよ。」
「そうかい?トーマス様もそれでいいですかい?」
「ええ。前のように仲良くしてあげてください。」
トーマスもご近所さんに頭を下げる。
「いや、そんな!貴族のトーマス様にそんな風にされたら困るよ!参ったなぁ。」
すると、1人のご近所さんが言った。
「家を直してるって事は、またここで何かするんだろ?」
「あ、はい。ここで私の力を込めた物を売ろうかと思っていまして。今、色々考え中なんですよ!」
「そうなのかい!いやぁ、嬉しいね。」
しばらくご近所さんとの再会を楽しんだ後、ユリアとトーマスは家の中に入る。
そこはカフェをやっていた以前の面影を残しつつ、洗練された雰囲気の内装になっていた。
「うわぁ!素敵。」
「内装は前の雰囲気を残しておきたかったので、色々考えたんだ。どう?気に入った?」
「はい!とっても!」
「2階と3階の部分もお店には使えるようにしてるよ。これからはおそらく貴族のお客も増えるだろうから、上はサロンにしようと思っているんだ。」
「サロンですか!すごい!」
王都のカフェには、貴族のお客用にサロンを完備している店も多い。
そのサロンで買い物やお茶が出来る様になっている。
「こんな大掛かりな改修…驚きました。トーマス様、本当にありがとうございます。」
トーマスはユリアを見ながらニッコリ笑った。
「ユリアの為なら、これくらいの事は当たり前だよ。これからは、忙しくなるよ?」
「忙しいのは慣れてます!それにその方がやりがいがあるので、大丈夫です!」
帰りの馬車の中でも、色々なアイデアが飛び出すユリア。
トーマスは愛する妻の喜ぶ顔を見るのが、何よりの幸せだった。