ピクニックでの事
「トーマス様。準備できましたよ!」
ユリアはトーマスの書斎の扉を開けて顔だけ出して言った。
トーマスはユリアの嬉しそうな顔を見て自然と笑顔になる。
「ああ、わかったよ。今、行く。」
トーマスはユリアと一緒に庭へ出た。
そこにはメイドのメリーが用意した簡易ピクニックが出来上がっていた。
座りやすいように沢山のクッションまで用意してあった。
「凄いね、本格的だ。」
「さぁ、座りましょう。」
2人で敷物の上に座る。
トーマスはユリアの背中にクッションをいくつか置いてあげる。
「ありがとうございます。」
今日のピクニックはあくまでも夫婦水入らずという形だったので、メリーはすこし離れた場所に控えていた。
「トーマス様、今日は私が久しぶりにお料理しました。」
お弁当の箱を開けると、色とりどりの野菜やおかずが入っていた。
もう1つの箱を開けると、そこにはサンドイッチが。
「あ、これは!」
「はい、サンドイッチです。」
「懐かしいなぁ。マグゴナル様のサンドイッチを食べた以来だ。」
そう言ってトーマスはサンドイッチを取って早速食べてみた。
「んー!美味い!」
「本当に?よかった!」
ユリアもサンドイッチを頬張る。
「美味しいー。」
2人で顔を見合わせて微笑み合う。
「こんなにゆっくりしたのは久しぶりだな。」
トーマスはお弁当を食べ終えるとユリアの顔を見て言った。
「あまりユリアをかまってあげられなくて申し訳ない。これからはたまにこうして2人でピクニックしよう。」
「はい。嬉しいです。」
「ユリアの料理はやっぱり美味しい。」
「うふふふ。ありがとうございます。でも、久しぶりだったから…ちょっと心配でした。」
「ユリアは出会った頃から料理上手だよ。」
トーマスはユリアの手をそっと握った。
「ユリアにちょっと話したい事があるんだ。」
「なんですか?」
トーマスはちょっと考えたてから言う。
「街にあるカフェだった家の事なんだけど。」
「魔法カフェの?」
「そう。結婚してから、そのままにしてあるだろう?」
「はい。私も気になっていました。」
「少し考えていたんだけど、あの家はユリアの生まれ育った家だからそのまま使えないかと思ってね。」
ユリアは真剣にトーマスの話を聞いている。
「実はこの間、王様とお話しする機会があって。」
「えっ!王様と?」
「あの家の事を話したら、ユリアの白の力が込められた物を売る店にしたらどうかと言われてね。最近は貴族の間でも商売をする家も増えたようなんだ。」
「わたしの力を込めた物ですか?」
「うん。例えば、パンとか。ほら、ユリアはお店には立てないから屋敷で仕込めないかとか。他にも何か出来るかもしれないと思って。」
「そうですね、パンなら仕込みの時に私が力を込めれば大丈夫そうです。でも、パンは焼き立てが美味しいですからね。」
「そうか…ここで焼いてしまうと美味しさが半減してしまうね。」
「そうですね…。あ!」
ユリアはハッと何か思いついたようだった。
「トーマス様!」
「ん?」
「サンドイッチ!」
「サンドイッチ?」
「そうです!サンドイッチなら、焼いたパンを冷ましてから挟むので!こちらで挟んだ物をカフェに運べます。」
「なるほど!その手があったか。ユリア、それはいい考えだよ。よしっ、その方向で話を進めよう。」
「はい!」
ユリアはとびっきりの笑顔で返事をした。
「トーマス様…」
「ん?何?」
「あの…ありがとうございます。」
ユリアはトーマスの手をギュッと握った。