してもいいですか?
階段から急いでる降りてトーマスを迎えるユリア。
「トーマス様、お帰りなさい。」
「ああ、ユリア。ただいま。」
トーマスは上着を脱ぎながらユリアに微笑む。
そして、いつもの儀式のハグとキスをする。
こんな時、執事やメイド達は目を伏せて見ないフリをする。
自分達の主が仲睦まじいのは良い事だ。
夫婦円満であればこそ、働きやすい職場になる。
クリムト家は代々夫婦円満の家系なのか、トーマスの両親も未だに仲が良い。
愛妻家の血筋の様だ。
「トーマス様、先に着替えられますか?」
「そうだな、そうしよう。」
「お着替えは私がお手伝いするので、お食事の用意をお願いしますね。」
ユリアはメリーにニコッとしながら言った。
「ん?どうしたんだい?」
トーマスがユリアとメリーの雰囲気に気づく。
「あ、何でもありませんよ!さっ、トーマス様行きましょう。」
寝室でトーマスの着替えを手伝うユリア。
騎士団の制服からラフな服に着替えたトーマスが、ソファに座りユリアに言った。
「それで?何か話したい事があるんだろう?」
トーマスはユリアの顔を見て微笑んだ。
「トーマス様…気づいていたんですか。」
ユリアは決まり悪そうにした。
「何か欲しい物があるのかい?」
「え?いいえ?欲しいものはないですよ!」
「じゃあ、なんだろう。」
「実は…トーマスさまにお願いがあって。」
トーマスは来たか!という顔でユリアの言葉を待っていた。
ユリアはトーマスの横に座り、トーマスを見る。
「あの…私、お手伝いをしたいんです。」
「お手伝い?」
ユリアの言っている意味がわからないトーマス。
「その…家の中のお掃除とかお料理とか…メイドの皆さんと一緒にお仕事を…」
「うーん……」
トーマスは少し考えている。
ユリアはトーマスの返答をドキドキしながら待った。
「あ、あの!一日中何もしないで居るのが申し訳ないんです。体も鈍ってしまうし…あまり無理はしませんので!トーマス様!お願い!」
ユリアはトーマスに手を合わせてお願いした。
その姿が何とも可愛く思えたトーマス。
目を瞑ってお願いしているユリアを見て、顔がにやけてしまうのを一生懸命に我慢した。
コホンッ。
ひとつ咳払いをしてトーマスが言った。
「あくまでも、お手伝い。」
「そうです!お手伝い!」
「絶対に無理しないね?」
「しません!」
「お手伝いは屋敷の中だけ。」
「はい!中だけ!」
トーマスは仕方ないと言うように息を吐いた。
「分かった。お手伝いを認めてあげよう。」
トーマスがそう言った瞬間、ユリアはトーマスに思い切り抱きついた。
「トーマス様!ありがとうございます!」
トーマスからお許しが出たユリアは、大喜びだった。