白い石
その日、朝からトーマスの部屋にハンターがやって来た。
「副総長殿!失礼いたします。例の件、少し進展がありました。」
「そうか、入ってくれ。」
ソファに座るように指示して、トーマスもハンターの向かいに腰掛けた。
「捕まっているリーダー格の者の証言では、かなり身分の高い者からの依頼だったという事です。」
「そうか、直接は会っていないのだな。」
「はい。連絡役はいつも依頼主の使いの者だったという事です。そして、毎回使いの者は違う人間だったと。」
「なるほど、顔を覚えさせない為に違う人間を寄越していたのかもしれないな。」
「依頼内容は、街で若い女を捕まえろ。だそうです。」
「………それはまた随分と大まかな依頼だな。」
「はい。しかし、その男が持っていたコレがカギでございます。」
ハンターは懐から1つの石を出した。
掌にすっぽり収まるくらいの白い石だった。
「これは?」
「依頼内容で、若い女にこの石を見せろ。と。もし、石が光ったら女を捕まえろ。違えば、金銭を奪って物取りの犯行にしろ。と。」
「この石が光ったら…光ったら何なんだ。」
「そこまでは聞いていないそうです。」
「それで、石が光った場合の連絡方法は?」
「それが…知らされていないんだそうです。石が光ったら分かるからと。」
「偽りを言っているかもしれんな。」
「私もそこ辺は鋭く観察しましたが、嘘を言っているとは思えませんでした。」
「そうか…」
「申し訳ありません。」
「いや、助かった。ご苦労だったな。」
「いいえ!とんでもありません!」
「この石は私が預かろう。家に白の魔法使いがいるからな、見てもらうよ。」
「そうですね!ユリア様なら何かご存知かも!」
「また、何かわかったら相談する。」
「はい!では、私はこれで!失礼いたします。」
トーマスはその石を白い布に包み、懐にしまった。
その日、帰宅したトーマスはユリアに石を見せた。
「この石なんだが、どうかな。」
「うーん、そうですね…。私が白の魔法使いの訓練の時にコートおばあちゃんが石を使った事はありましたけど…その時の石とは少し雰囲気が違います。」
「何かここから感じとる事は出来ないかな。」
ユリアは、石に手を当ててみた。
「石から変なオーラは出ていませんね。でも…」
「でも?」
「何かが封じ込まれている感じがします。」
「封じ込まれている?」
「よくはわからないですけど、奥の方に微かに人の念が感じられます。」
「人の念…」
「でも、ごめんなさい。私にはこれくらいしか分からないです。」
「そうか…いや、でも助かった。」
「トーマス様、コートおばあちゃんに聞いてみては?おばあちゃんならきっと何かもっと詳しく分かると思います。」
「そうだな…明日王宮から薬草農園に行ってくるよ。」
「ええ、そうしてください。私も行きたいけど、カフェの方の事があってご一緒出来なくてごめんなさい。」
「いいんだよ。今回の事は騎士団の事だから。」
トーマスは次の日、ハンターと共に薬草農園に向かう事にした。




