トーマスの笑顔
クリスティ退治をした後、
ミュゼットの周りにいた御令嬢達とユリアは
会場の隅に移動してしばらく和やかにお喋りをした。
独身の御令嬢達のキラキラ押せ押せ攻撃に
多少疲れて来た頃、やっとトーマスが帰ってきた。
「ユリア、待たせた。何事もなかったか?」
「ええ、大丈夫です。ミュゼットさんが居てくれましたから。」
「そうか。」
突然のトーマスの登場と、あの絶対笑わないで有名な副総長の笑顔を間近で見た御令嬢達は
雷に打たれたかの如く見入っている。
しかも、その後ろには王都きってのイケメン集団・王宮騎士団の皆さんが揃っているのだ。
「では、そろそろ帰ろう。みなさん、これからも妻と仲良くしてやってください。」
「「「はーいー♡」」」
こういう時のトーマスの何気ない優しい言葉と表情は、反則だと思うユリア。
まだ出会ったばかりの頃、カフェにやって来るトーマスが時折見せる笑顔にキュンキュンした事を思い出す。
キュンキュン慣れしていなかった当時のユリアには、その意味があまり分からなかっただけの事だった。
「では、皆さまお先に失礼致します。ミュゼットさんもありがとうございました。」
「ええ、またねユリアさん!」
笑顔での別れ際、ミュゼットがトーマスに言った。
「トーマス様!ちゃんとユリアさんを守ってくださいね?いつも私が居るとは限らないのですから。」
急にそんな事を言われたトーマスも何のことやらさっぱりでユリアを見ている。
先程のクリスティ事件の事はトーマスには言わないでおこうと決めていたのだが、そういう訳にも行かなそうだ。
ユリアは満面の笑みでトーマスに言った。
「詳しくは帰りの馬車でお話しますから。行きましょう、トーマス様。」
とりあえず、ここから早めに出た方がいいと思ったユリアは足早にトーマスと会場を後にした。




