朝から大忙し
「魔法カフェにいらっしゃい」の続編です。
今回はユリアがトーマスの奥様として頑張ります。
それから、白金の魔法使いとしても成長して行く予定です。
ユリアの出生の秘密なども取り上げて行こうと思います。
どうぞ、新しい「続・魔法カフェにいらっしゃい」よろしくお願いします!
ここは、白い大きなお城を中心に沢山の家が広がる街。
その町の中心にある、貴族のお屋敷が並ぶ通りに一際大きなお屋敷がある。
そのお屋敷には、とても珍しい魔法の力を持つ魔法使いが住んでいる。
その魔法使いは、1人の騎士と出会い、そして結ばれて
このお屋敷の奥様になったのです。
名前は、ユリア・クリムト。
彼女の魔法は白の魔法と言い、沢山の人達に癒しを与える。
貴族の奥様、魔法使いと顔を持つユリアは
今日も大忙しのようです。
「ユリア!ユリア!」
ユリアの旦那様のトーマス・クリムトは、朝から何やら大きな声でユリアを呼んでいた。
「はーい。トーマス様、どうしたのですか?」
「すまない…ユリア。このカフスボタンの片方がないんだよ。どこに行ったかな?」
寝室の中を探すトーマス。
「カフスボタン?うーん…見てないですよ。メリーに聞いてみましょうか?」
そう言ってユリアは、メイドのメリーを呼んだ。
「メリー、旦那様のカフスボタンを見なかった?」
「カフスボタンでございますか?それなら、この引き出しにしまってございます。」
メリーは、スタスタと寝室の棚の引き出しに向かい、沢山のカフスボタンを出した。
「いや、ここにはなかったんだよ。」
「トーマス様、違うカフスボタンじゃダメなんですか?」
「今日は騎士の昇進式があるから、このカフスボタンをしたいんだ。」
そのカフスボタンは、金色の中に白い花の模様が入った物だった。
「あ、これ。」
「これはユリアに貰った物だから…。しかし、困ったな。」
このカフスボタンは、ユリアがトーマスの誕生日にプレゼントした物だった。
「トーマス様、私が探しておきますから!まずは、朝食を召し上がってください。」
ユリアはトーマスを寝室から追い出すと、カフスボタンを探し始めた。
「うーん、ないなぁ…。」
部屋中探したが、カフスボタンはなかった。
ユリアは諦めてダイニングのトーマスの元へ行く。
「トーマス様、カフスボタンなかったんです。」
「そうかぁ…どこに行ったのかな…。ん?…ん??」
トーマスが上着のポケットの中に手を入れて、おかしな顔をしている。
「トーマス様?」
すると、トーマスは申し訳なさそうな顔をして言った。
「ユリア…ごめん…ここにあった。」
掌に乗ったカフスボタン。
トーマスが外した時にここに入ってしまったようだった。
「まぁ!よかった!安心しました!」
ユリアは怒ることもなく、見つかった事を喜ぶ。
「僕の失態だ。本当に申し訳ない。」
トーマスは頭を下げた。
「いいんですよ!あったんですから。今日はそのカフスボタンを付けて行ってくださいね。」
「ああ。」
結婚して分かったが、トーマスは意外とそそっかしい所がある。
ユリアはそんなトーマスの一面も好きな所だった。
朝食を済ませたトーマスを見送るユリア。
「では、行ってくる。」
「行ってらっしゃいませ!」
トーマスはユリアを抱きしめる。
そして、軽くキスをして王宮に出かけて行った。
このお見送りのハグとキスは、結婚した当初から続いている朝の儀式のような物で、屋敷に働く執事やメイド達も見慣れた光景だった。