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今日から学校と仕事、始まります。②莞

そんなこと言うなよ

作者: 孤独

「仕事、辞めさせてください」


若い頃の可能性とは無限大と思われる。


「いいんじゃない。まぁ、まだ若いんだし。次の仕事とかやりたい事とか頑張ってね。あとで辞表を出してね」

「は、はい」


なんかアッサリ……。まだ若さに溢れる者は意外過ぎる会社にやや驚いた。

引き留めとかあると思ってた。

なんだろうか。


◇       ◇


「おう、次の仕事頑張ってなー」

「は、はぁ……。まぁ、あと2日はいますが」

「荷物は纏めて置くんだぞ」


この仕事を初めて……2週間。こんな仕事なんて聞いてない。超辛い。辞めて違うところを探した方が良い。そう思った時には、上司に言ってしまった。

ここに来た時、若いから嬉しいとか言われてたけど……。なんでこんな反応なんだ。

そもそも、この会社はおかしい。こんな運送業ってすっごく体力使うし、天候が悪くても、何食わぬ顔で仕事するとか頭オカシイ。周りの人もおかしい、なんでこんな事に体を使ってられるんだ。

それよりも頭を使って、夏は涼しく、冬は暖かく、それでいて椅子に座っていて、誰からも文句なんか言われず、自分が讃えられて誇りに思われていて、6時間程度の仕事で、200日ほどの休みがあって、月給100万ほどのお仕事が僕にもあっていいと思う。

転職だ!

僕に合った仕事!僕の理想に合う仕事は必ずあるはずだ!


「あ、そうだ。お前。辞めるまでに仕事のミスとかするなよ?」

「へ?」

「辞めた人間が起こしたミスの対応とかホント面倒なんだよ。特に補償レベルの事。交通事故とかよ。指導係の俺に責任が来るからよ」


なに言ってんだ、この木下とかいう人。この人、本当に嫌だ。

自分が30年以上もこの仕事をしているだけのおっさんじゃん。他の仕事ができないおっさんじゃん。他の仕事の事なんか、何も分かってない人だ。こんな人と仕事はしたくない。なんでこんな人が僕の指導係なんだ、頭にくる……。


「…………木下さんは転職とかできなかったんでしょ」

「は?」

「こんなブラック企業!潰れた方がいいんですよ!!あなたみたいなタバコ臭まみれで、教え方下手糞で!仕事もミスしてる!!そんなんだから僕も怒られたんです!!あんたが悪いんですよ!」

「……………」

「こんな仕事辞めてやりますよ!」

「いいぞ」


こんな仕事、辞められてホントに良かった。


◇      ◇


そんな出来事から10年後。

スパァ~っと、変わらずタバコを吸って、公園で休憩している木下。


「ふぅ~……」


仕事は相も変わらず、忙しく大変だ。最近じゃ仕事中にタバコを吸ってるだけで怒られる。配送が間に合えばいいだろうがって気分なんだが……。ま、歳のせいか。体力の衰えは隠せない。転職を少しでも考えたが、さすがに今から完全な別の仕事を覚えるのは無理だ。似たような仕事しかできないだろう。

なにより30年以上、見て来たものがある。


「転職してきた奴等が、また転職する姿を見てると、する気になれねぇんだよな。転職」


昔から客やら上司やら怒られているが、『もう、木下さんは~』ってレベルの注意。ま、始末書レベルの事はやっちゃいねぇ。

それに自分のミスと自分の歳の事を会社が考えてくれてるから、もうちっと仕事を軽くしてもらえるよう交渉できる。それは長年勤めて貢献してきたベテランの特権だわな。なんやかんやでこれ大事。

最近、この仕事を始めたおっさんには悪いが、厳しさを味わうものさ。なんか最初からズルしてるとか思われるけど、ズルをするって事はそのズルに責任を持たなきゃいけないんだよ。


「っし。仕事すっか」


人間関係も大事だわな。職場の雰囲気は俺にとっちゃ合ってる。休みもそこそことれるし、給料もなにより良いからな。福利厚生とかも。今更、転職って考えたら……ホントにボケ防止のための時期になった時しか考えられねぇーや。




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