表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

なろう馬鹿にしてたら酷い目にあった件

作者: バルスィ



 「あーまた異世界モノかよ」


 パソコンと対峙しながら、愚痴を溢す。


 パソコンの画面に映し出されているのは、素人小説投稿サイト『小説家になろう』

 通称なろう。


 あらゆる小説投稿サイトの中で最も規模が大きく、投稿した小説がこのサイト内で人気になれば、出版社からも声が掛かる。中には余りの人気ぶりに、書籍化どころかアニメ化まで成し遂げてしまう作品まであり、プロ作家の最短ルートとも言われる程だ。

 今、もっともアツいッ! と言われていた超人気サイトであった。

 そう、数年前までは。


 そんなサイトも、今ではオタクどもの妄想オナニー小説――もとい、異世界テンプレ作品で溢れかえっている。


 「気持ち悪ぃ」


 そう吐き捨ててから、キーボードをカチャカチャと打鍵する。


 今行っているのはレビューの作業。

 他の読者が同じ轍を踏まぬよう、「これは駄作です!」と事前に忠告するものだ。

 面白い作品であることを他の読者に伝える為の機能、と勘違いしている人も多いが、低評価をつけるのが本来の正しい使い方である。


 勿論、作者に向けて感想を送るのも忘れない。

 散々な罵倒によって作者の創作意欲を削ぐのも、大事なことである。

 特に初めて感想を貰うような底辺作者であれば、「おおっ、感想が来てる……!」という糠喜びが入るぶん、ダメージはより大きくなるのだ。


 読者に向けたレビュー欄。

 作者に向けた感想欄。

 これらを上手く使い分けることで、より効果的に――


 「プッツン……」


 唐突にパソコンの画面が暗転する。


 「ふぁっ!?」


 いきなりの出来事に困惑する。

 焦って色々弄ってみるも反応なし。

 ウイルスにでも感染したのか?

 だとしたら昨日のエロサイトが原因?

 We have a gift for you ってか?


 「簡単なことですよ。コンセントから電源プラグを抜いたまでです」


 背後から掛けられる声に、俺は思わずビクリとする。

 話し掛けられるまでコイツの気配に全く気付けなかったのだ。

 いや、それよりも……


 「誰だお前? そんな革命的発想を思い付くなんて只者じゃねえな?」


 俺の問いかけに、そいつは屈託のない笑みを浮かべる。


 「どこにでもいるごく普通の高校生ですよ」


 答えを聞いた瞬間、驚愕のあまり俺は椅子から転げ落ちてしまった。


 「な、なに~!? 高校生、だと……?」


 この国の国民は教育を受けることが義務付けられている。

 それも9年という長期間だ。

 ただひたすらに毎日勉学に励む苦行。

 沢山の文章を読まされ、複雑な計算を解かされ、国の成立過程を覚えさせられ……。


 その苦行も、中学校を卒業すれば解き放たれる事ができる。

 にも拘わらず、こいつは高校に進学することを選んだのだ!


 「教育の義務を終えてなお、勉学に従事するというのか……!」


 単に苦行が3年延長されると考えるのは甘い。

 その質も量も義務教育のそれとは別物だからだ。

 だと言うのに……


 「話は聞いているよ。君、『なろうスレイヤー』なんだろ?」

 「……なんだ、バレていたのか」


 俺は深くため息をつく。

 奴がどこまで知っているのか。

 下手すると組織(サブカルチャーポリス)の存在も知っている可能性がある。

 そうだとしたらかなりの強敵だ。


 「他人様が時間を掛けて書いた小説。それを『つまらない』と文句を付け、罵声を浴びせる……」

 「だったら何だ? つまらない作品につまらないと文句をつけるのは、読者の権利だろ?」

 「黙れ(ドン」


 なんとドス黒い殺気……!

 突如として激昂する敵に警戒しつつ、俺は机に立てかけてあった――戦槌『蟲業への鉄槌』――にサッと手を伸ばす。

 しかしそれよりも早く敵は動き出した!


 緑色のドカーーン!!


 「くっ……! 何だ今の魔法の威力は……おかしいだろ」

 「それは弱すぎって意味だよな?」


 クソッ、なんて強さだ!

 迂闊に関わると組織(サブカルチャーポリス)全滅の危機もある!

 今ここで滅ぼさなければ……!


 キンキンキンキンキンキン――。


 「『勝利(ネツァク)の炎』」

 「あー、痛い」


 ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ――。


 「……ふぅ、片付いたな」

 「さすがはお兄様ですの」

 「なんだ、お前も来ていたのか。帰るぞ」

 「承知しましたですの」



「『闊歩する罵詈雑言の使い手』がやられたようだな…」

「フフフ…奴は『なろうスレイヤー四君子』の中でも最弱…」

「『なろうを国民から守る党』如きにやられるとは『なろうから国民を守る党』のツラ汚しよ…」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ