9話『魔法少女と魔法少女(男)』
「あぁっっっぶねぇ!!!」
俺は突然現れた変なロングコートの女を抱え、魔力を足に溜め、全力で横に跳んだ。
もちろん家の壁に突っ込んだが、あのアベルシオに蹴られるよりマシだろう。
「おい無事か!?」
俺は腕の中の女を揺する。
「……あ、あれ……なんで私……」
「あんたこんなところで何してんだ!!」
「ひっ!?あ、えと、その……」
慌てふためく女。一体何しに来たんだ?
「わ、私あんたを助けようと……」
「は……助け……?」
『コースケ!!その子は魔法少女だ!!』
今までどこに隠れていたのか、物陰からペルが現れる。
「は!?魔法少女!?この街には他にいないんじゃ無かったのかよ!?」
『……いたんだな』
「お前のミスかよ!!」
どうやら本当にこの街に魔法少女がいたことを知らなかったらしい。使えない野郎だ。
「……ちょ、ちょっと待って……」
「ん?」
どうやら段々意識がハッキリしてきたらしい女が、ポツポツと言葉を零す。
「あんたなんで魔法少女の事……それにそいつ、私の夢に出てきたヤツの似てる……」
「あ、あぁ……あんた魔法少女なんだもんな……その、なんだ。俺も………その、ま、魔法少女……なんだ……」
「…………ハァ?」
何を言ってるんだこいつはって顔をされた。うん。俺も何言ってるかわかんない。
「じゃなくて今はそんな話してる場合じゃねぇんだよ!!とりあえずこいつ何とかしねーと!」
「あ、あぁ、うん。ってあんたアレと戦うつもりなの!?」
どうやら完全に意識が回復したようだ。
「あたりめーだろ!!ここで俺が逃げてどうにかなんのか!」
「い、いや、上級魔法少女がくるまで待つとか……」
「それまでに表の世界に被害とか出るかもしんねーだろ!!バカか!!」
「ば……バカ……」
なんか女が項垂れたので、俺は無視してなぜが今まで襲ってこなかったアベルシオと向き合った。
…………で、でけぇ。
どう戦えばいいんだこれ。ウルト〇マンでも呼ばなきゃ勝てないんじゃないかこれ。
とりあえず顔に向かって『メガ☆粒子砲』を撃ってみる。
アベルシオは避けようともせず、直撃した。
が。
「……あれで無傷かよ……」
何事も無かったかのように悠々と俺に向かって歩き出すアベルシオ。
これやべぇんじゃねーか。
俺がそう考えていると、
「ちょっとあんたが戦うつったのに何やってんの!!」
「お、お前…!!」
「お前って言うな!私には『鳴海 夏恋』って名前があんのよ!!」
さっき助けた女、鳴海?が隣に立っていた。
ってか。
「……は?鳴海?」
「とりあえずあんた魔力の残りは!?」
「え、あ、あぁ、まだまだ余裕だけど……」
「じゃあ残ってる魔力で全力の一撃をぶちかまして!!」
「でもチャージに時間かかるぞ?」
「その間私が引きつけるから!!」
「は!?大丈夫なのかよ!」
「んじゃよろしく!!」
「おい!!………なんだアイツ」
全く人の話を聞かないし、トントン拍子で話が進んでいく。まぁこの状況でゆっくり会話なんか出来ないけども。
とにかく俺はやれって言われたことをやろう。
「俺の全力を……ぶつける!!」
☆☆☆
あの変態、あんだけの威力のビーム(効かなかったけど)撃って余裕って言ってたし、多分魔力量はかなり多いはず。
「流石に上級魔法少女が来るまでの足止めにはなる!!」
しかし、問題は私だ。
私の銃、『ゴルドレオ』と『シルバリオウルフ』の能力はあくまでも『自分以下の実力の敵の動きを封じる』と『トドメを指した相手の強さを奪う』だ。自分より強い相手には全く効かない。
「とりあえず数で押すしか………」
私は能力を使わずにアベルシオに銃撃を浴びせる。
しかし……
「反応無し……か……」
そりゃそうだ。さっきの変態のビームですら効かないのにこんなのが聞くはずもない。
「それなら!!」
私は残る魔力を使い、全力で身体を強化する。
「物理的に叩き伏せるしか無い!!」
まずは足の小指を渾身の力で踏みつける。
この馬鹿でかいアベルシオに痛覚があるなら何か反応があるはず……
「…………?」
ダメだ。全く効いていない。痛覚は無いらしい。
では次。
「オオオオオラアアアアア!!!」
アベルシオが1歩踏み出そうとした瞬間に、地面から浮いてない方の足を全力で蹴りつける。
ズシィィィィン……
地面を大きく揺らしながら倒れるアベルシオ。
もしかしたらダメージは無いかもしれないが、これで私の方に意識が向くはず。
案の定起き上がったアベルシオは、今まで見ていた変態の方ではなく、私の方に向き直した。
「さぁかかってきなさいデカブツ!!」
これであとはあの変態がチャージするまでの時間を稼ぐだけだ。
でも、
「あんたなんかここで私がぶっ倒してやるわ!!」