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俺が魔法少女でいいんスか?  作者: バビタナさん。
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2話『魔法少女(男)』

「………ハイ?」


ちょっとおかしな単語が聞こえた気がした。なんて?


『ん?聞こえなかったか?魔法少女になってくれと言っているのだ!!』

「おかしいだろ!!なんだよ魔法少女って!!俺は男だぞ!!」


やっぱり聞き間違いじゃなかった。

ペルは苦い顔をしながら説明する。


『分かっている……元来、この仕事は、幼い女性に手伝ってもらっていた。だが……その、なんだ。』


苦虫を潰したような顔をするペル。この顔全然可愛くねぇな。


「なんだよ。はっきり言えよ。」

『………ふむ。まぁ、直接見てもらおう!!』


ペルがそういった瞬間、体に強烈な違和感を感じる。


「ぐっ!?な、なんだこれ……!?」

『そのうちなれるさ。ガマンしてくれ。』


夢のくせに随分リアルな感触だ……!

しかし、その違和感は10秒ほどで終わった。


『さぁ。着いたぞ!!ここが世界の裏側だ!』


辺りを見渡す。が、風景は何も変わっていない。

だが……


「なんだ……?なんか…違う…?」


まるでよく似てるだけの違う街に来たかのような、そんな違和感。


『世界の裏側は基本的には元の世界と変わらない。しかし、上を見ろ。』


そう言われて上を見る。

そこには…


「な、なんだよあれ!!」


空に浮いていたのは、火の玉……いや、白くモワッとした煙のような玉だった。


『アレが概念。大きいのが魂で、小さいのは感情や記憶だ。』


無数に浮かぶ白い玉。暗いはずのこの道を昼間のように照らしている。


『そしてアレらが融合すると……』


ペルの説明の途中で、背後から物音が聞こえた。

振り向くとそこにいたのは、


「う、うわぁぁぁぁ!?」


まるでなにかの死体のような、とてつもなくおぞましく、不気味な四足歩行の『何か』だった。


『昔はもっと……こう、この僕みたいに愛らしい見た目をしたやつが多かったのだが……元の世界の魂のあり方が変わったのか、嫌な記憶や感情で溢れているのかはわからないが、こういう姿のアベルシオが多くなってきたのだ……』

「た……確かに……これを女児に見せるのは……」

『そう……そうなのだ……』


男で高校生である俺でこうなのだ。女児が見たら一生トラウマものだろう。


「で、俺は何をすればいいんだよ?」

『そ、そうだったな。まずはあれを倒してほしいのだ。』

「どうやって?」

『それはだな……』


どこから取り出したのか、謎の袋をあさり始めるペル。そして、袋の中から出てきたものは……


「……魔法のステッキ?」

『そう!!魔法少女といえばステッキ!!さぁ!!変身するんだコースケ!!』

「嫌だよ!!なんで男子高校生がステッキ回して呪文唱えて変身しなきゃなんねぇんだよ!!」

『最初は仕方ないんだ!!アベルシオを倒して行けばそのうち装備も変わるから!!ほら!!早く!!アベルシオが近づいてきた!!』


くそっ……やるしかないのか……夢とはいえ、死ぬのは怖いし……


「だぁぁちくしょう!!やってやんよ!!なんて言えばいいんだ!?」

『魂に浮かんだその言葉をそのまま叫べばいいんだってギャァァァァ!!!早く!!早く!!喰われる!!』


確にこのステッキを受け取ってから、謎の言葉が胸に浮かんでいた……けど、こんな恥ずかしいこと言うのかよ……!!


「クッソがぁぁぁ!!!き、『煌めけ心よ!!輝け愛よ!!マジカルガール、メイクアァァァッップ!!』」


俺がそんなクソ恥ずかしいセリフを叫んだ瞬間、俺の身体から光が溢れた。

そして、足、腰、胸、腕、そして頭の順番で光が弾けていく。

残ったのは、フリフリのフリル付きのドレスを身にまとった俺だった。

……なんかもう、死にたい。


『や、やはり僕の目に狂いは無かった!!キミに頼んで正解だったよコースケ!!今まで見たことない魔力量だ!!』


お前ただ通りすがりの俺にお願いしただけじゃん選んだわけじゃないじゃんとか言いたいことは色々あるが、とりあえず後だ。


「おいペル!!どうやって戦えばいいんだ!?」

『魔法少女なんだから魔法を使え!!ステッキに念じて振れば出るはずだ!!』


くっ……念じるったって……炎…とかか?とりあえず炎を出すイメージ……


「今だ!!喰らえ!!!」


俺はその掛け声と共に、ステッキを全力で、渾身の力を込めて横薙ぎに振った。

そしてそのステッキはアベルシオの頭にクリーンヒット。そのままアベルシオは壁に吹っ飛んでいった。


ドガアァァァァン……


……いや、魔法出てないんですが。完全に物理攻撃なんですが。

恐る恐るペルを見る。

ペルもまた、微妙な顔をしていた。


☆☆☆


元の世界に戻ってきた俺たち。


『ま、まぁ。あんな感じでドンドンアベルシオを倒せばいいんだ。』

「……またあの恥ずかしいセリフ言わなきゃいけねーの?」

『まぁ、最初のうちはそうだね。でも実は、キミはまだ数いる初級魔法少女の一人に過ぎない。』

「数いるのかよ」

『しかしなんと、中級以上になれば自分で自分の衣装、セリフ、武器を選べるようになるのだ!!』

「つまり、中級に上がれば、このフリフリのドレスともおさらばってことか?」

『そういう事だ。』


っていうか、これ、夢なんだよな?なら夢から覚めたらもうこんな事しなくていいんだよな?

そんなことを考えていると、ペルが俺に背を向けこう言った。


『さて、とりあえず今日はもう遅い。また明日にしよう。』

「ちょ、ちょっと待ってくれ。参考までに聞くが、中級に上がるにはどれくらいアベルシオを倒せばいいんだ?」


顎に手を当て、考え込むペル。


『そうだな……ざっと……10…』


10対か……まぁ、それくらいなら何とかーーー


『10万体くらいか?』


俺は膝から崩れ落ちた。

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