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かけたかけら  作者: 一筆
1/4

FRAGMENT3/10

 NO FIT FRAGMENT


 煉瓦造りの建物のならぶ夜の街を、男の子が一人さまよっている。ガーゴイルの造り物が屋根から見下ろす。

 街を行く男の子は、暗がりなど気にならないかのように歩き続ける。

 頭の上で、微かに物音。男の子は顔を上げ、建ちならぶ建物を注意深く見渡す。影に羽が生え、一羽ばたきで影は男の子の前に舞い降りる。

 ――よう、俺。

 ――こんばんは、僕。

 ガーゴイルは羽を震わせ、男の子を包み込む。

 目を閉じた男の子の微笑に街角の明かりが照り、ガーゴイルと共に男の子は消える。

 静寂が訪れる。



 LOOK FOR FRAGMENT


 ――この人を知りませんか?

 煉瓦造りの建物が並ぶ街で、女の子が一人、写真を片手に尋ねている。女の子はカメラを袈裟にぶら下げている。道行く人々は哀れむ目を向け、されど近付こうとはしない。

 女の子は焦るように人を捉まえ、尋ねる。

 ――この人を、知りませんか?

 だが、誰も相手にはしない。女の子を避ける。

 諦めた女の子は、公園の椅子に腰掛ける。手元の写真を見下ろし、それを写したカメラも見る。

 誰もいない公園で、女の子はカメラを構える。なんの目的もなく、ただ、シャッターを切る。ただ、写し続ける。

 撮りながら、女の子の目はぼやける。



 NEAR MISS FRAGMENT


  公園のベンチで、女の子がカメラを片手に俯いている。それを中空で眺めるガーゴイルと、人なざるヒト。

 ガーゴイルが言う。

 ――俺、知り合いなのか、あの娘?

 ヒトは何も言わずに女の子を眺める。

 ――…………。

 ――俺、どうもしない気か?

 ――どうもしないつもりさ、僕。

 ガーゴイルは溜息を吐き、ヒトは無言で女の子を見続ける。

 ――……行こう。

 ――行くって何処へだ?

 ――何処でもいい。だけど、此処以外で……。

 ――詩的な響きだな。

 ガーゴイルは不吉に笑い、ヒトは無関心に女の子へ背を向ける。

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