FRAGMENT3/10
NO FIT FRAGMENT
煉瓦造りの建物のならぶ夜の街を、男の子が一人さまよっている。ガーゴイルの造り物が屋根から見下ろす。
街を行く男の子は、暗がりなど気にならないかのように歩き続ける。
頭の上で、微かに物音。男の子は顔を上げ、建ちならぶ建物を注意深く見渡す。影に羽が生え、一羽ばたきで影は男の子の前に舞い降りる。
――よう、俺。
――こんばんは、僕。
ガーゴイルは羽を震わせ、男の子を包み込む。
目を閉じた男の子の微笑に街角の明かりが照り、ガーゴイルと共に男の子は消える。
静寂が訪れる。
LOOK FOR FRAGMENT
――この人を知りませんか?
煉瓦造りの建物が並ぶ街で、女の子が一人、写真を片手に尋ねている。女の子はカメラを袈裟にぶら下げている。道行く人々は哀れむ目を向け、されど近付こうとはしない。
女の子は焦るように人を捉まえ、尋ねる。
――この人を、知りませんか?
だが、誰も相手にはしない。女の子を避ける。
諦めた女の子は、公園の椅子に腰掛ける。手元の写真を見下ろし、それを写したカメラも見る。
誰もいない公園で、女の子はカメラを構える。なんの目的もなく、ただ、シャッターを切る。ただ、写し続ける。
撮りながら、女の子の目はぼやける。
NEAR MISS FRAGMENT
公園のベンチで、女の子がカメラを片手に俯いている。それを中空で眺めるガーゴイルと、人なざるヒト。
ガーゴイルが言う。
――俺、知り合いなのか、あの娘?
ヒトは何も言わずに女の子を眺める。
――…………。
――俺、どうもしない気か?
――どうもしないつもりさ、僕。
ガーゴイルは溜息を吐き、ヒトは無言で女の子を見続ける。
――……行こう。
――行くって何処へだ?
――何処でもいい。だけど、此処以外で……。
――詩的な響きだな。
ガーゴイルは不吉に笑い、ヒトは無関心に女の子へ背を向ける。




