MRI体験
最近、私は震えが見られると医者に言われ、脳のMRIを撮ることになりました。
MRIに入る前、別室で金属類をすべて外します。全身を検査着に包む人も多い中、脳だけの私は普段着のまま待っていました。私が行った病院はMRIが複数台ある病院でした。あらゆる方向から音が壁を突き抜けます。
ガコン、バコン、ガコン。
いたるところから騒音の嵐です。不穏な空気が漂います。
前の扉から全身検査着の人が出てきました。後ろから技師の声が聞こえます。
「また今度続きをやりましょうね」
どうやらリタイアしたようです。その人は後日リトライが決定しました。
私にそんな余裕はありません。怖いですが一発で終わらせたい。そんな気持ちでいっぱいでした。
私の前には二人いたのですが、MRIの台数が多いので一気に部屋に消えていきました。全身検査着でしたのでリタイアした人のように広範囲の検査なのでしょう。そう思いながら待っていると、影から白衣の技師さんが現れました。順番が回ってきたのです。
再度金属類を持っていないか、手術で埋め込んでいないか聞かれます。私の場合は両方大丈夫でした。それを確認した後、白い筒の前にあるベッドに寝かされました。
「検査時間は15分ほどです。その間工事現場みたいな音がします」
そう注意を受けました。私は鈑金加工のタレパンの「バン! バン! バン!」という騒音を思い浮かべながら構えました。
注意が終わると体をベルトで縛られました。その後、耳元に柔らかいクッションをつけて動きを押さえ、さらに白いガードを降ろされました。これで顔は動きません。あとは左手にスポイトのゴムを大きくしたようなスイッチを持たされました。検査時に問題があったとき、外に知らせるためです。
そのスイッチを持った状態で白い筒の中に突っ込まれました。
中はとても狭く圧迫感があります。中も真っ白なのですが、これがいいのか悪いのかわかりません。とにかく気分が悪いことに違いありません。目の先で装置が少し回転する様子もそれを助長しました。
そして回転が終わると……始まりました。
ピー、ピー、ピー。ピー、ピー、ピー。
最初は優しい電子音でした。ただ、これでは済まないと予想はついています。しばらく続く『ピー』音。
そしてついにやってきました。
キー、キー、キー。ガガガガガ。ガガガガガ。ピチッ、ピチッ、ピチッ。ドドドドッ、ドドドドッ。
ゴゴゴゴゴ、ガガガガガ、ゴゴゴゴゴ、ガガガガガ、ゴゴゴゴゴ……。
こんな音が延々と続くのです。工事現場というよりは電子機器の音を極端に大きくしたもの、といった感じです。非常に耳障りな音でした。高い音が多いので平成生まれには堪えます。
しかし、音以外にも苦痛な点があります。
熱です。頭皮が熱いんです。軽く電子レンジでチンされたような熱さです。この熱さは音の大きさと時間に比例して大きくなっていきます。要するに検査が進めば進むほど熱いんです。
技師さんは15分と言っていました。しかし、15分どころではない気がします。縛られているし、うるさいし、熱い。ひたすら早く終われ、早く終われと願っていました。
ピチッ、ピチッ、ピチッ、ゴゴゴゴゴ。ピチッ、ピチッ、ピチッ、ゴゴゴゴゴ。ピチッ、ピチッ、ピチッ、ゴゴゴゴゴ。ピチッ、ピチッ、ピチッ、ゴゴゴゴゴ。ピチッ、ピチッ、ピチッ、ゴゴゴゴゴ……。
左からピチッ、ピチッ、ピチッと小さな音が鳴り、右からゴゴゴゴゴという騒音。逆転することなく延々とその組み合わせ。だから右ばかりが気持ち悪い感触。これが終わったら右からピチッ、ピチッ、ピチッといって、左からゴゴゴゴゴと鳴るんだろうなと思っていました。
けれども突然、音が止みました。
「はい、画像が撮れているか確認します。しばらくお待ち下さい」
ようやく終わったのです。そして「OKです」の声の後、白い筒から引き上げられました。拘束も外され、ベッドから起き上がるよう促されましたが……。なんだかふらつきます。どうも轟音で耳がおかしくなったようです。しばらくの間バランス感覚が乱れていました。
これは病院内で休憩している内に治りました。しかし、熱の感触はなかなか消えません。髪が焼けてしまたのではないかという感じは、結局一日中残りました。
なお、今のところは無事です。
以上、MRI体験記でした。