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中古のらくがき帳  作者: 暁 乱々
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お会計1,234円です

「お会計1,234円です」


 私はウキウキしてお金を払いました。

 スーパーでこのような数字を見ると「今日は運がいいかも」と感じるのは私だけでしょうか。「別に運良くないじゃん、お前1,234円払ったんでしょ」と言われるかもしれません。そもそも『円』ってついた段階でただの冷たい数字に化ける可能性があります。


 前に行ったスーパーのおばちゃん、レジの画面に描かれた『1,234円』になんの反応も示していません。内心はどうだったかまで鈍感な私にはわかりませんが、たぶん一つの事務処理として割り切っているのだと思います。『777円』も同じでした。さっさと清算終わらせて「はい、次」という感じでした。スーパーはどこも同じでした。


 ある日、家で久しく使っていないクッションを見つけたとき、ダイナミックボロボロになっていることが発覚しました。穴の開いた靴下も補修する、どうしようもなくドケチな私は捨てずに補修部材を買いに手芸店へ行きました。『ユ○ワヤ』みたいなところです。

 裁縫が趣味ではないため、当ての布はもちろん、同色の糸もありません。他にもいろいろ買うことになりました。それらをカゴに詰めてレジへと向かいました。

 レジに着くと布の清算、その後小物のバーコードを読み取っていきます。

 数字がどんどん増えていきます。とはいっても小物ばかり、布以外は大した金額ではありません。そしてカゴの中のバーコードを読み終えた結果……。


「お会計1,234円です」

 私は素直にスゲーと思いました。でもこのときは何かが違いました。

「うわぁ~すごい! 珍しいですね」

 レジの店員が隣のレジの人に呼びかけ『1,234円』を見せて一緒に喜んでいました。場が一時、明るくなりました。

 そして代金を支払い店の外に出ました。そのとき私は思ったのです。


 スーパーの店員は慣れてしまったんだと。

 1,234円という数字を見慣れてしまったんだと。だからもう感動がないんじゃないかと。

 それに感動していられないんだと。

 いちいちストレートやゾロ目にかまっていたら仕事にならないんだと。余裕が一切ないんだと。


 ストレートやゾロ目で感じる幸せ。

 それは余裕の中にあるんだと。ずっと触れ続けていないからこそ味わえるのだと思います。

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