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ぼくのなかにいる  作者: 人工的な深爪シール
1章:彼は世界を知る
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閑話:嘘か真か

 商業都市『バルゴナ』。

 王国領に含まれるその都市は、ありとあらゆるものが集まることで有名である。

 宝石、道具、書物からガラクタまで。

 それは決して物に限ることなく、あらゆる種族の人種から、はたまた奴隷まで。

 そんな人通りの激しい都市の大通りで、物々しい甲冑を身に纏った男女が窮屈そうに歩いていた。


「まったく、馬鹿馬鹿しい……」


 叩き付ける様に紙を掲示板に貼り付け、悪態を吐きながら。


「あんまり口にするべきじゃないわ」

「そりゃわかりますけどね……どう考えたっておかしい、でしょっと」


 配布された()()()を一定感覚で貼っていく。

 意味があるとは到底思えないが、やるしかないのが現状だ。


「こんなん、死んだ人間を探すようなもんですよ。いや、もっとたちが悪いか……なんですか、肉片でも持ってきゃ満足するんですかね?」

「……そういう問題じゃないけれど」

「わかってますよ。ただのスケープゴートだ。一人に罪を被せて『王国に非は無い』ということにする。よくあることだってのはわかってますよっと」


 ばし、と最後の手配書を貼り付け、手を払う。

 悪事に手を染めているようで気分が悪い。

 いくら自分たちが考えたわけではないとはいえ、それに加担していると思うと虫唾が走る。


「隊長だって、絶対に不満を抱えてるのもわかってます。だからこそ、ですよ」

「……そうね」


 ありえない決断と、人を人と思わない判決。

 死んでいる可能性が高いからこそ、死人に罪を押し付けた。

 そのほうが都合がいい。死人に口なし。

 誰がなんと言おうと異を唱える者はいない――異世界から引っ張り出した、天涯孤独であり、殺したって問題の無い人間を選んだのだ。

 故人に泥を塗っても非難されることのないような人間を。


「胸糞悪い」


 騎士というものは正義である。

 騎士は民を護る者である。

 そう教わり、そう成長してきた彼らにとって、王国上層部が下した判決はひたすらに気分の悪いものだった。


「とりあえず貼り終わりましたけど……どうします? とっとと帰りますか?」

「……いえ、もうすこし居座りましょう。嫌な予感がするから」

「へえ。それは隊長の予知みたいなもんですかい?」

「馬鹿言わないで。彼の未来予知とは別物よ。ただの勘。何かがこの街で起きそうな気がするってだけ」

「……外れるといいですねえ」

「そうね」


 だが。

 彼女の予感は的中する。

 商業都市が内側から崩れかねない事件が始まろうとしていた。

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