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もう一人

「あ、ありがとうございました…」


今だ黒ずくめの男の手荷物となっている状態で、ローランはボソボソとお礼を言う。

色々と納得いかない点は多いけど、命を助けられたことには変わりない。


男は気づいたように、ローランを見下ろし、そしていとも簡単に放り投げた。


「っ、どわあっ!」


べしゃっ…と地面に無様に衝突する前に、慌てて自分の手と足でなんとか体を支える。


息を整え、気付くと男が尊大にこちらを見下ろしていた。

180は優に超える身長と、細身ながら引き締まった身体。長めの黒髪の下に鋭利な金茶の瞳があった。

無表情なのに、森の暗さの中で怪しく光る男の瞳の危険な雰囲気に、その美貌も相まって、ローランの身体はゾクリ、とした。


…こ、怖いんですけど。


はっきり言って、さっきのラミアーの方がまだわかりやすい怖さだった気がする。

男からは得体の知れない怖さ、未知の物に対する恐怖とでも言うべきか、本能的に体が拒否しているのだ。

言っておくが、別に自分は男性恐怖症とかではない…。

そういえば、なんか、あのラミアーも逃げて行かなかったっけ?

…なんか相当やばい人に助けてもらったのでは??



「あーっ、ちょっと、ゲシュディル!どこ行ってたのよ!肝心な時にいないんだから!」


突然、女の高い声が薄暗い森に響く。

それに気づいた男もようやくローランから視線を外し、声のする方をめんどくさそうに振り返った。


「...ナイエルか」


バタバタと小さい影が近づいてきて、男の目の前まで来た。

みれば、黄金の豊かな髪を持つ、華のある美少女である。背には弓と矢を担いでいるため、射撃手(スナイパー)なのだろう。…そういえば、男の方は武器らしき物を所持していない。魔物の森の中にも関わらず、だ。

美少女は、綺麗な顔を思いっきり歪めて、男に詰め寄る。


「あんた、スナイパーと剣士の二人でゴブリン50匹って、ちょっとどんだけ大変かわかってんの?期待させといて、敵前逃亡するってどういうことかしら?」


きっと黙って微笑んでいたら、絶世の美少女にしか見えないだろうに、現実はそうはいかなかった。

だが、男の方は面食らう風でもなく、冷ややかな目で少女を見下ろしている。


「うるせえな。俺は俺の好きなようにやる」


はっ、と呆れ口調でため息をつき、そしてローランの方を指差す。


「あれ、捕獲しとけ。弱っちいが、多少はあいつの代わりになるぞ」


そう言い残して、男の姿が忽然と消えた。高位魔法の瞬間転移である。

あっ、ちょっと…とまだまだ文句がいい足りなさそうな、金髪の美少女の手が虚空を掴む。


チッ、とおよそ可愛らしい顔には似合わない声が聞こえた気がする...。

そして睨んだ顔をそのままに、ローランの方を初めて向く。


「…ど、どうも…」


今日は、どうやら怖い人によく出くわす日らしい。







紅一点だった、ナイエル登場。まだ他にもいます。

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