【友情・思い出・遊園地】
【友情・思い出・遊園地】
高校を卒業して離れ離れになった親友から、久しぶりに電話がきた。
「明日引っ越すんだ。それで、荷物整理してたら、懐かしいもの見つけちゃって」
楽しそうに話す親友の声は全く変わっていない。学生時代の感覚がよみがえる。
「覚えてる? 初めて一緒に遊びに行ったときの、"友達のしるし"」
「ああ、あの大ゲンカした時の? まだ持ってたんだ」
高校一年の夏、私たちは友人四人で遊園地へ出かけた。遊んでいるうちに調子に乗った私がふざけすぎてしまい、この親友と大ゲンカしてしまったのだった。もう六年以上も前の話だけど、鮮明に思い出せる。
親友は驚いた声を上げた。
「まだ持ってたんだって、まさかあんたは持ってないの!?」
「そんなわけないよ、ちゃんと持ってる。私も実家出るときにちゃんと持ってきたんだから」
「なんだ、よかった……まだ持ってるのあたしだけかと思ったよ」
ごめんごめん、と平謝りする私に親友は、まったくもう、とため息をついた。このやり取りも相変わらずだ。
引き出しの奥から、思い出の品をそっと取り出す。小さなストラップ。二つの輪がくっついた形をしていて、「無限大」を表すのだという。ケンカをして二手に分かれ、頭を冷やしてみて申し訳なさが押し寄せ、私は謝罪の気持ちを込めてこのストラップをプレゼントしようと買ったのだ。彼女の好きそうなものだったから。やっとのことで合流し、互いに「ごめん」の言葉と共に差し出したのは同じもの。不覚にも彼女の趣味と私の趣味は似ていた。
それが、彼女と私が親友になったきっかけでもある。
この二つの輪に、二人で「いつまでも友達でいよう」と誓った。我ながら、高校生でよくそんな幼稚くさいことをしたものだと思い返す。今考えると恥ずかしい。
しかし、そのおかげというのか何なのか、私たちは今でもこうして友達でいる。二人とも、ずいぶん大人になってしまったけれど。
「ねえ、私たち、これからも友達でいられるかな」
無意識に出た言葉だった。電話の向こうの親友へなのか、手の中の小さな輪に向けてなのか分からない。親友は、安心しなよ、と陽気に笑う。
「大丈夫。あんたがあたしの事忘れても、あたしはあんたの友達でいるよ」
……こういう時にこんなかっこいいことが言えるのも、私の親友ただ一人。嬉しくて少し泣きそうになって、やっと「ありがとね」と搾り出した。
名残惜しく電話を切った後、手の内の小さな"友達のしるし"を空にかざしてみる。
二つの小さな輪は、私たちをずっとつないでいることを証明するように、一度だけきらりと光った。
私の親友(って言っていいのかは知りませんが…)もよくさらっとかっこいいこと言います。
これは私の理想の未来ですね。
以上三部が過去に書き上げたものです。感想、評価、アドバイスなどお待ちしてます。ずばっと「ここが駄目」とか言ってくださると光栄ですが、誹謗中傷はご勘弁。
また、自惚れかもしれませんが、ご希望がありましたら、お題を三つ上げてくだされば書ける範囲で書かせていただきます。よろしくお願いします。




