【歌・青春時代・海】
【歌・青春時代・海】
放課後の教室から聞こえてくる歌を、僕らは毎日聞いていた。どこまでも透き通っていて、きれいなその声の持ち主は、僕の……いや、僕らの初恋だった。
僕ら二人は小学校からの親友で、いつも行動を共にするほど仲が良かった。きっとこれからも同じ道を歩んで行くような感覚さえあったほどだ。
クラスでも病弱で儚げな彼女は少し浮いていた。話したことなんてあまりなくて、僕らはいつも少し離れたところから眺めているだけ。
しかし、それを壊したのは、親友だった。
「な、一緒に帰らないか?」
歌声の響く放課後、教室に飛び込んで、親友は彼女にそう声をかけた。彼女は戸惑った後ゆっくり頷いて、初めて僕らは三人で一緒に帰った。
少しずつ僕らと彼女の距離は縮まっていった。怖々としていた彼女の表情も笑顔が絶えないようになり、僕らもすっかり打ち解けた。
そうやって三人で居るのが当たり前になってしばらくした頃。
病弱な彼女は、とうとう重い病気を患って入院した。僕らは一緒に病院へ行ったけれど、面会は出来なかった。
一週間ほどして、やっと面会が許された。久々に合った彼女は、僕らを見て、少し痩せた頬を緩ませた。儚い雰囲気がより一層強まったようで、少なからずショックを受けた。
でも、何よりもショックを受けたのは、――彼女はもう歌えないという事実だった。僕らが会いに来てくれて嬉しいと喜ぶ声は掠れていた。辛いだろうに笑っている彼女に……僕らのほうが辛くなった。
それからは毎日、病院へ通った。彼女の病気のことも、自身から聞かされた。助かる見込みはほぼゼロだという。日に日に声も聞き取りづくなっていく。
明日消えるとも分からない命のもとへ、僕らは毎日通い詰めた。目に見えて痩せていく彼女は、それでも笑って、僕らの話す話を聞いてくれた。
それから一年。彼女は静かに眠りについた。
僕らは、葬儀の後、海へ向かった。
病床でいつも、彼女が僕らに、たったひとつだけ訴えていたこと。
『海に、行ってみたいなぁ』
聞き取りづらくなってしまった声で、毎日毎日彼女は呟いた。いつか必ず一緒に行こうと、約束していた。
彼女は最期に、日記帳に言葉を遺していた。そのページを切り取った紙を丁寧に紙飛行機にして飛ばす。
「私はとても幸福な人生を送ることができました。出会ってくれてありがとう。」
大人になった今でも、時々あの紙飛行機を空に探してしまう。
これは来たお題を見て、勢いで書きたいことだけ書いたやつです…
かなり修正入って途中からよく分からなくなってしまった…




