金髪。考える。
それはおかしな獣だった。
出会いは、魚屋の前。
猫に表情なんてあるのかと、自分すらもおかしく思えてしまうが、それは本当に目をキラキラさせて魚をくわえていた。
それはそれは嬉しそうに駆け出すところを、捕まえた。
注意力がまるでない。
へにゃん、と力なく垂れた尾。
盗られたのは一匹いくらもしない、どこでも取れる魚。
海が近いこの国では珍しくもない。
逃がしてもいいか、と思えたのは、力ない声と凹んだ腹をみたせいだと思う。
まさか落ちるとは思わなかったが。
グレ先輩に見せた。
手柄だと騒いだけれど、少し不安だったんだと思う。
自分の判断は正しかったのか。
獣はみんな殺すべき。
みんなみんな死んでしまえ。
獣の使役化の話も、俺は断固反対していた。
その俺が獣の保護。
死体を報告すれば、ごまかせるのにも関わらず。
グレ先輩はすんなり受け止めた。
そうなることはわかっていたが、俺は心が少し軽くなった。
獣は先輩の膝の上で、怯えた目で俺を見る。
腹が鳴った。
お前だろう、明後日を見るな。
そういえば魚を道に置いて来たなと、心の隅で思い出した。
獣を泣かせた。
ぼろぼろと後から後から、涙を零す。
小さな体のどこから、そんなに水分を出せるのか。
不安定な揺れからの生理的なものだろう。
なのに何故かその姿は、俺に昔の幼い弟を思い出させた。
思わず、昔のようにぎこちなく手を動かしてしまう。
獣は静かに目を閉じた。
獣は隊長に気に入られているようだ。
あの無表情は、俺がここに入った頃から仕事を機械のようにこなし、仕事のこと以外は興味がないようだった。
かといって部下を軽んじるような人ではなく、副隊長も「感情表現がへたくそなんですよ」と苦笑していた。
そんな隊長を尊敬はしていたが、どうしても距離があったことは否めない。
その隊長が俺に言う。
「ベストは何色がベストだ」
狙ったのか、素なのか、素なんだろうな、天然なのか、天然なんだな。
こんな隊長ははじめてだ。
いつの間にか、軽く罵倒出来る程度にまで、距離は縮まっていた。
獣は隊長の机の上で、悟りを開いているようだった。
子供に引っかき傷一本でもつけたら、殺そうと自分に言い聞かせていた。
俺にはどうにも出来ないだろう。
ここにグレ先輩がいてくれたらと、俺だって思ったんだ。
自分に懐くような子供は、弟ぐらいだろうと知っていた。
子供は怖かった。
その目が。
柔い肌が。
小さな手が。
子供はまだ人間じゃない。
なりきれていない。
子供は俺の中で、獣にも並ぶ化け物かもしれない。
獣は子供の手を舐めた。
頭をこすりつけて、元気よく鳴いた。
遊ぼう遊ぼう、そう言っているかのよう。子供が笑う。
獣は器用に尾で子供の涙をすくう。
まるで人間のような仕草。
獣は凶暴で残忍で。
本能のままに人を殺す。
使役報告されている獣だって、命令があるから動くのだ。
けして人間の仲間ではない。
こんな穏やかなものではない。
俺が呆然としている内に、グレ先輩が追いつき、きゃっきゃと騒ぐ子供の名前を聞いて連れて行ってしまった。
「にゃんにゃんばいばいー」
「にうにうー」
応えるように、尾をぶんぶんと振る。
違う、偶然だ。
思い出せ。
「にう?」
心配そうに見上げられた瞳を無視して、俺は歩き出す。
そんなわけがない。
自分の歩調がゆるやかになっていることに、俺は最後まで気づかなかった。
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別視点でした。
初あとがきを書きます。
はじめまして、さかとです。
どうぞよしなに。
今になってようやく、この投稿機能の使い方が見えてきました。
お気に入り数もいつの間にか増えていて、嬉しい限りです。
設定も結末も展開も、見切り発車なこの物語ではありますが、面白いと言っていただけるよう、ようよう勉強しますので、よろしくお願いいたします。
ご感想ご感想、お待ちしております。
うし、なんかすげえ常識人にみえる俺。