猫。めりくり
「くりすます?」
マリアルが不思議そうに言いかえす。
こくり、俺は頷いた。
詳しく聞きたいと言うマリアルに、俺は説明を始めた。
「行いが悪い子供の家には、夜な夜な赤いお爺さんがやってきて「右が左か」低い低い声で問うてくるんだ。でも、決して答えてはいけない。右ならば生きたまま獰猛なトナカイの餌にされ、左なら四次元袋に詰め込まれ、二度と戻ることはない。…えっ、答えなければ助かるのかって? さあ? 赤いお爺さんが現れて助かった話は聞いたことがないから。…なら、何故その話を知っているのかって? ふふふ、僕はこれから君に問わなければならないから」
俺はいくらか青くなっているマリアルに、臨場感を意識つつ告げる。
「みg」
マリアル。
「…にこり」
マリアル、口で言った口で言った。
そして笑った。
まりあるが、わらった。
本能が言っている。ここで死ぬさだめではないと。
ていうか、死にたくないと。
「サンタさんがやってくる日だよ!!」
無意識に震える足を叱咤し、俺は続ける。
直立不動。微塵でも不審な動きをすれば、聖夜に赤い花が咲くことになるに違いない。俺の命は散るんですけどね。
「…サンタ?」
小首を傾げる、天使のような美少女。
薄桃色した髪と唇。つるつるほっぺにまんまるおめめ。
これが、さっき俺を殺めようとした本人なのか。俺は夢をみてるんじゃないのか。
でも体の震えが止まらない。
「うん。赤いふ」
「赤いの」
「赤くない赤くない赤くないから、いやほんとに!! むしろ、青い。青いかもしれない、いやほんとに」
危ない。
さっきの話を引きずっているマリアルに、本当のことは言えそうにない。
ごめんなさい、サンタさん。今年のプレゼントはもらえそうにないなあ。てへ。
「青い(ごめんなさい)服きた白いお髭のおじいs」
「お爺さ」
「お婆さんだね!!」
ごめんなさい、サンタさん。これからはレディとして生きてくれ。プレゼント入らんから。
「そう、お婆さん(許して)が、みんなが寝静まった夜に」
「夜」
「朝だね!! もうニワトリとか鳴いちゃう感じの早朝!!」
ごめんなさい、サンタさん。起きたら枕元にプレゼントがって夢は、ない。子供に見つかりまくり。顔見られまくり。身近過ぎる。逆になんかあげようか。
「で、朝日が眩しい中プレゼントを配るんだよ」
「なんで?」
「その一年、良い子でしたねっていう。ご褒美みないな感じ?」
「疑問系なんだ?」
「もらったことないんだもん」
サンタさんからは。
サンタが来ないと泣いた私に、プレゼントをくれるのは。いつも隣の君だった。
それがずっと続くのだと。
なんの根拠もなく思ってたんだ。
「…ふむ」
目線を向けると、こちらを眺めるマリアルと目が合う。腕組みしながら考えてる姿は、可愛らしいの一言。
ふと、腕を緩め、手を伸ばす。
俺の方に。
温かさが、頭の上に落ちてくる。
「………どうしました?」
思わず、敬語。
何故、俺はこのタイミングで撫でられているのだろう。
今は猫ではないというのに。
付属品は取れないけれど。
「いいこと思いついたー」
棒読み。
絶対、いいこと、違う。
「あと語尾伸ばすと被るよ」
「大丈夫。被るような奴は、いつの間にか消えてるんだ」
うさぎ逃げて。
「サンタになろう!!」
とびっきりの笑顔で。
そして、着きましたは、イニアがグレ君が隊長が愉快な仲間達が、クリスマスも関係なくせこせこ働く職場。
玄関前。
青い服(マリアルの手製。薄い青や濃い青の布を重ね着、ごてごてのふりふりである。ちなみに、マリアルはミニスカ、ニーハイ。俺はズボンを力いっぱい推したら、力いっぱいダメージ加工。寒い)を着た、二人組。
門番が今か今か、職務を全うしようとしている。
「つ、捕まるって」
俺が逃げ腰なのも、きっと挙動不審に拍車をかけている。はう。
「何言ってんの、身内だよ身内。兄に会いに来て何が悪いのよ。堂々としてなさいな」
俺ジト目。
「イニアに、妹、はいないんだよっ」
着替える時から思ってた心の内を吐き出した。
そう、スカートと言ったからには、イニアはロングヘアーの女装スタイル。
綺麗と可愛いを合わせ持つ天使ルック。
これでは入れてはもらえまい。
「ふふん、大丈夫よ」
その自信はどこから。
「にゃはは、にゃははははははー」
なるほど。
そういえば、受付は縦ロール。
規則にとらわれない自由の女神。
「あー、笑った笑った。マリアル君、めちゃめちゃ似合う。あたしより美人」
「あは、ありがと。でも、お姉様には負けましてよー」
「見え見えのお世辞、ありがとうだわよ。あなたは中身がもっと、外見のように白いといいのにねぇ」
「美しいものにはトゲがつきものですのよお姉様。あと本心ですわよー」
女子のノリ過ぎて怖いマリアル。
「よくわかりましたね」
俺がつっこむと、何故か撫でられた。
「あらあら、こっちはグレぼっこ」
それじゃグレ君がぼっこみたいやで。
「猫耳似合ってるわよー」
自前ですから。
今日は青いサンタ帽子に切れ込みを入れて、耳が出るようにしてあるのだ。
「で、なんでわかったんですか?」
「うん? ああ、マリアル君。なんでってかー」
「美しいからだよね」
「はは、まあ確かに。化粧しなくてもあんたは美人だけど」
ズビシ。
指さしながら、おねーさん。
「オーラよ」
「あなたは美輪〇宏ですか」
俺は考えるのを止めた。
「あっ」
普通の「あっ」じゃない。
めちゃめちゃ演技のやつ。
ぶりっこしたやつ。
イニアが、袋をごそごそし始めた。
ぷ、ぷれぜんと?って聞き返したくなる感じのを、もりもり詰めた袋。
ちなみに、とても青いよ。
「はいっ」
おねーさんに手渡すマリアル。
それはスリットの入った、大人っぽいスカートだった。
ちなみに、包装は簡易だよ。
リボンが申しわけ程度に。
環境のことを考えたうそです。
「え、何よ?」
「プレゼントだよ」
「誕生日は来てないわよー?」
「それ、何年も前から来てない気がするのは気のせいかしら」
「あたしは年とらないのよ」
「なにそれ怖い」
そんなことを言いながらも、おねーさんはまんざらでもなさそう。
マリアルのセンス(だけ)は信じられるので、素直に嬉しいんだろう。
女の子は服好きよね。
「!!」
ばっ。
嬉しそうに見てたおねーさんが一転、険しい視線でマリアルを見つめた。
「あんたって子はっ」
憎しみ6割、悲しみ2割、諦め1割。
残りの1割に名前は付けられない。
そんな視線だった。
一方のマリアル。
いたずらが成功した子供そのもの。
実際に言葉の通りなんだろう。
俺はため息を吐いた。
「なんなのこの絶妙なウエストのサイズっ。ギリギリ入らない、一番悔しいパターンじゃないっ。あたしが二キロ太ったの、なんで知ってるっ」
「んじゃ、兄さんに会いに行こうか」
「無視すんなーっ」
マリアルは進んだ。
俺も進んだ。
〇〇〇〇〇〇
〇〇〇〇
〇〇
あけましておめでとうございますべからく。
正月にクリスマス。
だめだ、絶望的に乗り遅れた。
久しぶりに書いた(途中までは書いてたのよ、全部)ので、一人称うんぬん。
漢文して下さい。
し、いわく、
知らねぇ!!
俺、漢文、知らねぇ!!
ごめんなさいごめんなさい。
社会の酒井先生ごめんなさい。
酒井先生理科でしたごめんなさい。
ってことで、今年もよろしくお願い致します。
あ、ちなみにこれは番外編ですよ?
〇〇
〇〇〇〇
〇〇〇〇〇〇