猫。ざつだん。
「にう」
「だって僕も隊員だもーん」
「にう!!」
「え。大丈夫だよー。正々堂々と裏口入学、いや、裏口入隊だからー」
「…にう」
「何、心配してくれてんの。感動で笑っちゃうよ、あははのはー」
「にうにう!!」
「あれは副業でーす。いや、こっちが副業かなー?」
「にう!!」
「いやいや、うちには4人の妻と25人の子供と10人のじじいとばばあがひしめき合っているから稼がなきゃ」
「………」
「ならんってことはないんだよー」
「にうにうに!!」
「まあまあ、そんなことよりー。プレゼントあるんだー」
「に?」
「あれ、どこにいれたっけなあー」
「にに?」
「逃げられたかなー、ポケットに突っ込んじゃったもんなー」
「……にう」
「あ、いた」
「………にう」
「多分、美味しいと思うんだけどー。照れ笑いー」
「…」
「食べないのー?」
「……」
「なんか視線が痛いなー」
「………」
「ねずみー」
「にうにうう!!」
「いたいいたいいたいー、噛むのは僕じゃないでしょー」
「にううぅ!!」
「わかったわかったー。返しますよもといた場所にー。はい」
「!!!!」
「?」
「に、にう?」
「だってここで捕まえたんだもん」
「………っ」
「ところでさー」
「にう」
「僕に穴があきそうなんだなー」
「…」
「なんで目をそらすのー。君のせいだけど君のせいじゃないよー」
「……」
「君は精一杯やってると思うー」
「…にう」
「どういたしましてー」
「にうにう」
「いいんだよ、辛くなったらいつでもおいでー?」
「辛くなんかないわ、幸せよ」
「ほんとー、それはなによりだよー」
「ええ、隊長が昼夜関係なく愛してくれるわ」
「それは逆にどうなのかなー」
「トイレも一緒」
「犯罪じゃないかなー」
「一線を越えてしまいそう」
「通報したー」
「………」
「泣かないで、今まで辛かったねー。君のせいじゃ、ないかもー」
「にうにう」
「断言出来なくてごめんー」
「ってことで隊長、そこから出てきてー。ちっちっちー」
「何を言っているのかわからないな」
「僕にはそこで何をしているのかがわからないよー」
「隊長なんていない」
「目がこんなにもあっているというのにー」
「心の目で見ろ、感じるんだ」
「それでも答えは1つしかないよー」
「命令だ」
「なんて権力の無駄遣いー」
「にう!!」
「猫ちゃんが出てこいだってー」
「隊長の」
「?」
「隊長の」
「―――あ。隊長の、隊長の猫ちゃんが出てこいだってー」
「あいつはそんなこと言わない」
「にうにう」
「………隊長の猫ちゃんが愛してるだってー」
「にう!?」
「お前を信じよう」
「わー、それは僕じゃなくて己を信じてるよねー」
「にうぅぅううう」
「わー、猫ちゃんを上半身と下半身に分断するかのような包容力ー」
「………に、う」
「君のことは忘れないー」
「改めて、我が隊へようこそ。心から歓迎する」
「ありがとー」
「お前とは仲良くやれる気がする」
「そうだねー。一時期は殺されかけたけどー、今となってはそれもいい思い出パターン」
「何を言っている」
「あの時の恐怖はいつまでも、被害者の独り言だよー」
「ヨンヨンだったな」
「うん、そう呼ばれてたー」
「変わった名前だな」
「名前じゃないし」
「何か言ったか」
「何でもないー」
「何か言ったか」
「…じゃあ、例えばなんだけど、僕に名前を付けるとしたら何がいいかなー?」
「白い」
「見た目だよ」
「にう」
「なにー、まだなんかあるのー?」
「……にう?」
「あらやだー、それ聞いちゃう聞いちゃう?」
「にう?」
「ありありー、だって年頃のむす、いや猫科が家を聞きたがる理由は1つしかないよー」
「根絶やしか」
「あんたには絶対教えないー」
「にうにう?」
「ヒントー。広大な敷地、緑が生い茂り、大きなモニュメント、たくさんの人」
「………にう」
「ぶぶー、違いますー。確かにお金持ちではあるんだけどー」
「白い服の給仕達、並ぶ行列、投げられる石、新聞は暖かいよー」
「……………」
「…すまなかった」
「ここは厩舎も一緒になっている。食堂は1階で、頼めばテイクアウトも出来る。仕事しながらの食事も快適だ。気分が悪ければ、これも1階の軍医を頼るといい。ただ日によっては悪化する場合があるから、自然治癒出来るものはすすめない。この2階フロアはうちの隊のほぼ貸切と言っていい。理由は聞くな。いや、お前も仲間となるなら聞いておいた方がいいか。他の隊がパシリとして使いやすいからだ。雑務はまずここに来ると思え。そのせいで、うちの隊はだいたいスカスカだ。みんな出払っているんだ。すまないな、私の力が及ばす。私にはせいぜい、裏の情報をちらつかせ支給金の額を上げるくらいしか出来ない。雀の涙程度の収穫、これは年末や各恒例行事の時に使う。温泉旅行とか。今年は国外も予定している。臨時収入もあったんでな。ああ、それから不用意に5階には行くな。どうしてもの場合は私を呼べ。何かわからないことがあれば聞け。以上」
「………ごめん。さっきの冗談なんだ」
「親切返せ」
「隊長ー、機嫌治してよー」
「ぷい」
「隊長ー、いい年したおっさんがそんなすね方しらた寒いだけだよー」
「ぷい」
「ほらみてー、さぶいぼー」
「ぷいぷい」
「むー。もうしんないー」
「ぷい」
「猫ちゃん遊ぼー」
「………にう」
「ぷい」
「猫ちゃんの肉球気持ちいいなー」
「…ぷい」
「猫ちゃんのお耳すべすべだなー」
「……ぷい」
「猫ちゃんの添い寝最高だなー」
「………」
「猫ちゃんの子守歌聞いてー」
「…………」
「猫ちゃんの膝枕で眠ってー」
「……………」
「朝、いつの間にか左腕に重みが。こいつ、なんてつぶやいて頭を撫でる。無意識に擦りよる仕草、口元が勝手に孤をえがく。いつまでも見ていたいけれど、これも君のため。ゆっくりと慎重に腕を抜き、朝ご飯。新鮮な魚をさばいていると、君が寝癖のまま起きてくる。足取りは頼りなく、目は半開きで、口からはよだれ。僕は言う」
「萌え」
「隊長、他にはー」
「悪かった」
「僕もー」
夜が明けた。
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レトルトのカレーは暖めません。
こんにちはこんばんはおばんですいらっしゃいませ。
筆者です。
今回もご覧くださり、恐悦至極。
誠に蟻がたくさんいたよ。
えー、今回はちょっと意趣替えということで、会話だけで進めてみました。
けして、前の文章を消してしまったからではないよ。
けして、だけにね。
さあて、来週のアワビさんは。
荒波です。
筋を通すために見直さなきゃならないなあとはわかっているのですが、パソコンが使えません。
携帯の限界を感じる今日この頃。
不可能を可能にする来週は
●兄の部屋に潜入
●不快の森
●理解したくないデスクトップ
の3本でお送りするよ。
お楽しみにね…。
…………じゃんけん?
…すまない、そんな気分じゃないんだ。
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