猫。さいかい。
猫に首輪。
猫って本来、自由であるべきだよね。
そうでしょ?
でも、俺の首には輪。首輪。
白銀の高そうなやつ。
ご丁寧に、中央の鈴まで白銀。
どこかの誰かが「おそろい」と無表情でのたまう代物。
そして何より首輪の後ろ側に付けられた、タグ。
これ重要。
なんだと思う?って無駄にもったいぶってみる。
ええ、そうなんです。
迷子札なんです。
この年で!!
ああ、この年で!!
絶望、失望、落胆。
どんな言葉でももやっとボールなこの気持ち。
しかも保護者の欄には『ばど』ってちゃっかり書いてあるんだ。
丸文字で。
その図体で!!
ああ、その図体で!!
いや、差別じゃないよ?
素だったら苦笑いに留めるよ?
でも、お前書類のサインとまるっきりちゃうやんけ。
どこにかわいこぶる必要が。
どこにかわいこぶる必要が。
そんなわけで、言いたいことはまだまだ山盛りもりもりなんですが、話が進まない。
俺の独白で2000文字になってしまう。
エッセイか。
うん。
話を戻して、只今、隊長の膝の上。
今回はまたおでかけらしいのです。
散歩、じゃなくて任務です。
ちっ。
「シャルさんまだ来ないんですかー」
古びた長机。端。
イニアがぶうたれています。
弟の前ではお兄さんお兄さんなのに。
実は甘えん坊さんなのぬ。ぬ。
「任務の直後に呼んだんだから、しょうがないだろ。あっちの方が大変だ」
隣でグレ君が苦笑。
俺の認めない空色が優しく細くなった。
グレ君はいいお母さんになるわ。
「……」
隊長は上座で俺をひたすら撫でてます。
俺が戻ってからの隊長は、前よりもさらにバージョンがアップしたようで。
どこでもいっしょ。
俺はどこかの白猫扱いです。
唯一の自由かと思った、トイレにまで追跡機能搭載。
砂かけてやりました。
しかしながら、自分が原因なだけに怒るに怒れない。
砂はたくさんかけたけどね。
そりゃあね。
遠慮なくね。
イニアにぶらぶらと連行されてきた俺を見て、さめざめと泣き出した隊長。
イニアごと俺を抱き込む始末。
頬をこれでもかと擦り付ける始末。
愛を囁く始末。
どん引きのイニア。
俺を隊長に投げつけて逃げてった。
許すまじ。
「遅れましたわぁ」
軋む扉を開けて入ってきたのは、軍服を着こな、せてない幼女。
ほわほわの巻き髪は綺麗な水色。
ランドセルが似合いそうな顔と体。
しかし似合わないグラマーなお胸。
ま、まて。
こんなギャップを狙ってます的な生き物がここにいるわけが。
と、衝撃を受けた矢先。
さらなる衝撃がその後ろに。
「失礼しますー」
頭に巻いた包帯からこぼれ落ちる、雪のように白く細い髪。
血のように真っ赤な瞳。
チェシャ猫のような表情。
に、軍服。
「にうっ!?」
うさぎさんじゃないですか!?
〇村、うしろうしろ!!
「あらぁ、その子が例の御稚児さんですかぁ」
幼女は黙れ!!
「わあ、可愛い猫ちゃんだねー」
うさぎはもっと黙れ!!
「にうにう」
隊長、隊長ちょっと。
あれあれ。
「ああ。わかっている」
ありがとう、以心伝心。
「今日はジャスミンだな」
違うよ。
今日のお風呂の入浴剤の話じゃないよ。
どっちかっていうと、クールにミントで頭をすっきりさせたいよ。
「…先輩、シャルさんの後ろの誰っすか?」
不審そうなイニア。
そうだよ、そのリアクションだよ。
「ああ、そうだった。お前の自宅療養中に入った新人。シャルが空いたからシャルについてるんだ」
「ドラジェまた入院すか」
「…ああ」
「俺は先輩で良かったっす」
「…その感想は少し微妙」
こほん、と咳をし立ち上がるグレ君。
「シャルと、えっと、ヨンヨンだっけ」
「あたりー」
「おい。先輩に敬語使えよ、変な名前」
「イニア」
めっ。
グレ君の、めっ、が出ました。
「2人ともそちらに座って下さい」
「グレに言われなくともぉ」
「座るよー」
イニアが少し不機嫌です。
ペンをカツカツと机にぶつけています。
グレ君は何も気にしてません。
地図を広げ始めました。
シャルと呼ばれた幼女は机が高いのかイスが低いのか、半分しか見えません。
水面から目だけだしているワニのようです。
ヨンヨンと呼ばれたパンダかお前は、な、うさぎさんは笑顔で機嫌が良さそうです。
ひらひらとこちらに手を振っています。
隊長は馬鹿です。
「えー、今回は獣の討伐ということで、ここにいるうちの隊の5名で向かうことになります。場所はここ」
「ええー、遠いです先輩」
「そこ名産の豚肉は美味しいよー」
「どうでもいいけどぉ、私に休みはないのかしらぁ」
「ここがいいのかここがいいのか」
「にうぅ、ごろごろ」
…この…テク…ニシャン…めっ…。
「馬で4日か5日ってだけだイニア、豚肉は後で雑談してくれヨンヨン、休みは後でまとめて出すそうだシャル、隊長は仕事をして下さい」
げんなりグレ君。
よく息が続くなあって見てたら、お前はいいなあって視線をもらった。
ごろごろごろごろ。
「わかりましたわぁ。お休みがいただけるんでしたらぁ」
返事をする幼女、幼女、幼女?
幼女じゃない!!
さっきまでどこの偵察部隊の方ですか、してた幼女がグラマラス少女に。
大人と子供の間をさまよう、怪しい色気。
軍服が今度はぴちぴちでセクシャルです。
歩くわいせつ。
後でわかったんだけど、シャルさんはとある呪いで自分の時間が一定じゃないらしい。
猫には誰も説明してくれんせいで、しばらく俺は自分を信じられない生活だった。
私は誰?
ここはどこ?
グレ君の飯美味い。
「目標は小型の獣で、気をつけることは数と毒。隊長と俺が前線、イニアとシャルが後方支援。ヨンヨンもそっちにつけるから、無理はしないように」
「えー、俺も前線がいい」
「却下。イニアは銃の整備を怠らないように、弾は多めに持てよ」
「じゃあぁ、私はお休みがいいですぅ」
「却下。お前はいつも休んでるだろ、頭が」
「僕は遊びたいー」
「却下。子供みたいなことをいわない」
「ここがいいのか」
「隊長は頭のネジを締めて下さい」
すごい。
すごすぎる。
何がすごいって、軍隊っていうより、幼稚園児の遠足だよねこれ。
この国大丈夫なのか。
「出発は明日。針が七の位置。下の入り口前に集合です」
何か質問はと、周りを見回すグレ君。
ただ1人の常識人は辛いね。
グレ君の血圧が心配。
「おやつはいくらまでですかー」
「遠足じゃない」
「バナナはおやつに含みますかぁ」
「だから遠足じゃない」
「先輩いじめんな!!」
イスを倒して立ち上がるイニア。
熱い男です。
大好きな先輩を助けるために立ち上がりました。
暑苦しい男です。
「おやつは300円までって常識だろ!! バナナはおやつに決まってますシャルさん!!」
「…それは常識じゃない」
この隊の別名、寄せ集め。
グレ君の血圧が心配。
「猫缶」
「…もう好きなだけ持って下さい」
話し合いは結構な時間だったにも関わらず、俺がちゃんと聞いていたのはここまでだ。
だって身にならない話なんだもん。
力無き「解散」の声と共に、散ってゆくメンバー。
シャルさんがおばあちゃんの姿で駆けていく。
なんという軽やかなおばあちゃん。
イニアが「先輩またねー」と出て行く。
マリアルにパシ…、おつかいを頼まれているらしい。
残ったのは、真っ白な灰になるグレ君。
燃え尽きちまったか。
「…隊長」
「大きくなったな」
「少し黙って下さい。全てを捨てて殴りますよ」
隊長が俺を襟巻きにし、グレ君の横に優雅な歩調で移動。
グレ君の両肩に手を当て、かがみこんで目線を合わせる。
「…隊長?」
「大きく、なったな…」
「雰囲気つけても変わりません。決死の覚悟で刺しますよ」
ため息を吐く隊長。
困ったちゃんだな、という歪んだ愛情を感じる。
俺を膝に乗せ、腕を、俺の腕を差し出す。
なんだ?
「触ると落ち着くぞ、肉球」
「俺は今、隊長の眼球に触りたいです。潰したいです」
ごめんねって鳴いておいた。
駄犬の飼い主の心情。
馬鹿だけど、可愛いのよ。
馬鹿だけど。
どうしようもなく馬鹿だけど。
阿呆でもあるんだけど。
「さて、僕も帰ろー」
何でやねん!!
白髪にすぴんあたっく。
ちゃんとつっこみたかったんださっきから。
良かった、つっこみの快便。
後ろから隊長がついてきた。
俺のプライバシーがシースルー。
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むしゃくしゃしたからやった。
反省はしている。
こんばんは、筆者です。
実はこれ2回目です。
テイク2です。
やる気出ません。
さっきなんの話をしたんでしょう。
今では幻となったテイク1を見た方はいるんですかねえ?
時間にして3分くらいで下げたと思うんですが。
失敗、バラさないでね☆
では、2回目の別れの挨拶をば。
皆様に食物繊維の神の御利益がありますよう意味なく願いまして。
あ、筆者の携帯ホームページも、よかったらよろしくお願いします。
くだらないことしか書いてないけどー。
筆者のマイページ欄?にリンク設置。
押すなよ、絶対押すなよ。
もちろんフリです。
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