猫。すっぱい。
ゴミ袋を纏い、一人困る俺。
もう、なんなん?
厄年なん?
比較的ちっちゃい身長。
不本意です。
しかし、それが今役立ってる。
狭い路地裏、ちょろちょろ走る。
自分の二本の足で。
見向きもされないのは、慣れてるからだろう。
見渡せば同じような子供。
いや、年下なんだけど。
…年下、だよなあ?
異世界の子供、発育良すぎ。
年下のくせに俺よりでかいという矛盾。
俺よりでかい分は削りとる、そんな法律あったらいいな。
恐怖政治万歳。
あれ、先ほどから空をかく足。
俺の羽についに飾り以外の効果が。
「お前、どこのやつだ」
いややー。見とうないー。
見とうないのに、見てしまうー。
俺の眼球のいけずー。わーん。
「のび太のくせに生意気だ」
アテレコしてしまった。
リアルジャイアン。
ないす、ジャイアン。粒餡。
アニメに帰れ。
「は?」
お怒りです、ジャイアンお怒り。
そりゃ、のび太じゃなくても、知らん人に生意気言われたら、轟け俺のイカズチてなもんですよ。
「ふざけてんの?」
俺がふざけるのは、君の心のバリアフリーのためなんだ。
「滅相もないじぇりあ」
あれれ、君の心はATフィールド全開のようだね。
ジャイアンは俺の胸ぐら、むんずと掴み、ゴミ袋がびりびりびり。あ。
「は」
目が合った、けど合ってない。
ジャイアンの目が市民プールで遊んで入るようだ。
俺はゴミ袋寄せ集めてかぶり、釣りはとっとけと、走りさる。
彼の手にはゴミ袋。
いらねえ。
と、言うわけで。
家に帰れなくて、俺は今、生ゴミの隣に鎮座してる。
道がわからないわけじゃない。
鼻はいいから。
姿がまずいのだ。
イニアと散歩中(グレ兄行方知れず)階段から落ちたら、中身が入れ替わってしまっていたの。
おったまげた。
嘘です。
体が戻っておりました。
いえす全裸。
イニアを置いて、盗んだバイクで逃走。
今に至る。
「ふふふ、夢みたーい」
もちろん、しゃべれる。
さっきはいらん事をしゃべってしまったが。
しかし。
嬉しいはずの手足が嬉しくない。
嬉しいはずの言葉が嬉しくない。
嬉しいはずの人間が嬉しくない。
俺は猫になりすぎた。
もう膝に乗れないし、日なたでごろごろも出来ない。
待っててもグレ兄の飯は食えないし、ていうか飯が食えない。
無一文。
俺はニートになりすぎた。
あかんです。
俺、餓死フラグ。
神と結ばれるルート。
おーまいごっと。神だけに。
あ、でも、この生ゴミ食えんじゃねえ。
なんかまだそんなに臭わないし、セーフ、うんセーフ。
人としてはアウト。
せめぎ合う心。
猫の時は躊躇しなかったのに。
美味しい。
少し酸っぱいのは味付けですよね。
そうだといって。
「こら」
新しい食料を持った、女の子?
薄ピンクの髪の、うぇいびー。
波打つ髪が綺麗ですの。
「捨てるの?」
とりあえず、手を入れ物の形にして、差し出した。
ちょーだい。
「あげません」
しょうがない、捨てた後を狙おう。
野生のカラスは親戚ですが何か。
よっこいしょ。
「そこに陣取られても」
対応が落ち着いてるのは、日常茶飯だということかもしれない。
ライバル多し。くそう。
「あなた、新しい孤児?」
「…似たようなもの?」
「疑問系で返されてもね」
二人で首を傾げた。
「マリアル、どこいった!!」
女の子がビクッと体で返事をした。
わたわたと戻って行く。
食料と一緒に。
それは置いてけ。
生ゴミの隣、無性に一人を感じた。
「まだいたの?」
お店が静かになった頃、さっきよりも増えた食料を持って現れたマリアル。
「いるよ」
だって、いくところがないんだ。
「おいで」
マリアルは手を差し出した。
食料を受け取った。
「それは捨てます!!」
捨てられた。
手を盗られる。
俺の手がー。
「こんなに小さいのに」
器は比例して大きいのだよ。
マリアルは意外とげふんげふん。
「戦争って嫌ね」
「ね」
そこは同意しといた。
さっき歩いた路地裏は、イニアとは歩かない。
そんな秩序もない場所なんだろう。
フリーダムという無関心。
「どこいくの?」
にこ。ニコニコ堂。
優しい顔。
あれ、誰かに似てる。
でも誰かは絶対こんな顔しない。
「うちよ」
自分で言うのもなんだけど、こんな見ず知らずのどこの馬の骨ともわからんもうすぐ成人(強調)を、拾ってっちゃ、だめだと思う。
猫じゃあるまいし。
「怒られるよ」
ママとパパに。
「兄と二人暮らしだから、大丈夫よ」
怒る対象が兄に変化しただけだそれ。
大丈夫でもなんでもない。
「ふふ、それにその可愛い尻尾は隠した方がいいわ」
見た。出てた。俺の馬鹿。
見るからに挙動不審になる俺。
彼女は変わらず微笑んだ。
…彼女?
無言で髪の毛引っ張った。
「あいた」
ずるぅ、皮が剥けたような、君の悪い感覚。
そうだそうだ、君が悪い。
中からデジャブを思わせる、金髪。
「あはは、バレた」
これでも十分女の子だが、いかんせん、声が下がった。
さっきまでの鈴を投げた声は、意識して作っていたのか。
「秘密にしてくれる?」
一対一にしてくれた、優しい人。
俺もあなたみたいに笑えたらいいな。
「秘密にしてあげる」
優しい人はみんな好きだ。
手を繋いで帰る。
「何拾ってきたんだ」
二人で正座で怒られた。
イニアに。
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筆者現実逃避ちゅう。
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