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銀髪。探す。

××××××××××

××××××××××

××××××××××

ここから先はお子様には刺激の強い、流血、血みどろ、エイリアンな展開となっております。

あと隊長の変態加減がハンパないです。

おっけーおっけー変態ばっちこい、な方だけお進み下さいませ。

××××××××××

××××××××××

××××××××××


小さい頃、よく生き物を殺した。



軍でも上層部にいる父が、肉や骨を切る感覚を覚えるためだと言って、連れて来た生き物だ。

父の命令だったし、抗う理由も特になかった。


鼠、蛇、鴨、亀、猫、犬、虎。

牛を切ったときは、夕飯は大きなステーキが出た。

食べられない動物を切るよりは有意義ですね、言ったら殴られた。

お前はみんなちゃんと食してる、父が俺と同じ無表情で言った。

吐きそうになった。




人を殺した。

たまたま人手不足で、父の計らいあっての式典の警備の真っ最中。

本来なら俺のようなひよっこはつけない仕事。

王を人差し指くらいの大きさで見ることが出来る仕事。感謝も感激も感慨も何もなく、ただただ立っていた。


平民だろうか、汚い服を着て、臭いもそれなりにしたと思う。

騒ぎたて、ガラス瓶を王の方に放った。

こんな遠くから届くわけはなく、俺の近くでカシャンと遠慮がちに割れる。

殺せ、と言われた。


だから殺した。


王に御苦労だったと、お言葉を頂いた。

殺した男は、ボロ布、いや枯れ枝のようになった子供を抱いて事切れている。

その横で、王に御苦労だったと、お言葉を頂いた。


帰ると父が待っていた。

いい手柄が出来たろう?

どうやら、父が仕組んだようだった。

味のしない夕飯を、自室で吐いた。




家を出た。

王が見たいわけじゃない。

父に誉められたいわけじゃない。

命令に抗う理由はなくとも、従う理由だって俺にありはしないのだ。


俺が殺した男に会いに行く。

野ざらしの荒野に山が二つ。

罪人は埋葬出来ない。

カラスにつつかれ、原型がわからなくなった死体を、こそこそと運んで埋めた。

埋めたのに理由はない。

したかったから、した。


不健康な男の体を切るのに、力は要らなかった。

死の覚悟をした男を切るのに、心は足りなかった。

ただ、それだけ。


手の甲を剣で貫く。

痺れるように、脳天を突き抜ける衝撃。

彼はもっと痛かったのだろう。

剣を首筋に当てた。

剣は動かない。

剣は動かない。

剣を動かせない。


死を理解するのが遅すぎた。




いつの間にか、隊長になっていた。


機械的に仕事をしてるだけの私が、部下を持った。

人の上に立てるような人間じゃないのは、自分が一番知っている。

幼なじみ兼副隊長に、一任することにした。


先輩、隊長ってちょっと怖くないすか?

新人の、確か、イニアと言ったか。

大人になりかけの幼さ残る顔立ち。

私がそばにいるのに、全く気がついていない。

ふむ、意見を聞こう。


「だってさだってさ、この間、盗賊が女の子人質に取った時。躊躇なく女の子の前でばっさーですよ。女の子のトラウマになってますよ絶対」


あの時は確かに、ばっさーとはした。

女が早く助けろと言うものだから、その通りにしたまでなんだが。


「俺はすれ違い様に、スリの指を切り落としたぐらいしか見たことないな」

「先輩、それ十分ですよ」


あれは私が前にも捕まえたことのある、常習犯だ。

ちゃんと警告はしておいた。

果たされなかった約束の代償としては、当たり前ではないか。


「何考えて生きてんですかねー」


ふむ。

答えに窮するな。



ガタッ



「た、隊長」


グレが私に気が付いたようだ。

顔が引きつって、変な顔だ。

イニアは首に縄でもかけられたかのように、真っ青。

誰も踏み台から突き落としたりなんぞしない。


「い、いつから、そこに」

「ちょっと怖くないすか、辺りだ」

「最初からじゃないですか」


謝ろうとする、二人の間をすり抜ける。


「謝罪は要らない、もうすぐ巡回の時間だから行ってこい」


我先にと駆け出した二人を、目線で見送った。


ガタッ


視線の先の柱の陰に、副隊長。

ひっひっひっ、変な呼吸法。

どうやら、腹からこみ上げる笑いで苦しいようなので、ちょっと殺そうと思う。




イニアが獣を拾ってきた。

生き物を平気で叩くイニア。

確実に私の部下だと、妙に納得してしまう。

それを止めたのは、私のようになってほしくないと、思ったからかもしれない。


猫のような見た目、小さな翼。

艶やかな毛並みと長い長い尾。

獣にしては愛らしい外見。


小さい頃に殺した猫を思い出そうとして、失敗した。

自分の殺した命さえ、私の記憶にはないようだった。


手の中の命を救うつもりだったのか。

救われたかったのか。


名前を付けようと思った。

絶対に忘れたりしないように。

絶対に殺したりしないように。

でも、私から出る言葉はとても汚れていて、命につけるのが恥ずかしくなった。

ただただ守ろうと誓う。


その日はそのまま仮眠を取った。

いつからか、夢は優しいものではなくなり、黒く無数の影が蠢いた中に一人。

またか、呟く声も闇に溶ける。

永遠に続くかのような恐怖、諦め、受け入れていた。

引き裂かれる体。

目玉をくり抜かれ、耳は千切られた。

痛みは本物と変わりなく、なのに体は綺麗に再生し次に備える。

繰り返される絶望。

顎のない口で笑う。


頬が温かい。

目を開けた先にはいつもの天井。

人の顔に見えるシミ、ばかばかしい。

まだ薄暗い、夜は続いているようだ。


「にう」


黒い塊と目が合った。

夢の続きかと思ったが、ずいぶんと温かい黒だった。

塊は私の頬を舐める。

ざらざらとした舌は、加減が難しいのかたまに空を切る。


「…はは」


はじめて気が付いた。

私は泣いていたのか。

いつ以来なのかもわからない涙は、次から次に流れては落ちる。

止め方がわからない。

いい年して情けない、何をしているんだろう。


「にう」


塊は頬に頭をこすりつける。

そして、胸の上に移動したかと思うと、すぐまるくなった。

尾がパタンパタンと、リズムを刻む。

子供を寝かしつけるかのように。

引き込まれるかのように、また夢のなか。


優しい闇が、待っていた。




一流のデザイナーに作らせたベストを着せて、お出かけ。

ドアに手をかけたところで阻まれた。


「仕事をして下さい」


シクシクと副隊長が泣いている。

目の下のクマが痛々しい。がおー。

今日、塾だから。

無視して開けようとする私を諌めたのは、腕の中の命。


「にう」


お前が退屈そうだから行くのに。


「にう」


ネコパンチを頂く。

左頬も向けたら、ちゃんとネコパンチをくれた。

私は狂ってるかもしれない。


「お前が望むなら」


面倒としか感じなくなった仕事もしよう。

必要としてなかった休暇もとろう。

同じものを見て、共に過ごそう。

お前を通して、私は世界を見るのだから。



だから、いなくならないで。




怖くてたまらない。

破壊と叫びが続く中で、私は君だけを探してる。

きっとあのローブのせいだ。


殺しておけばよかった。

殺しておけばよかった。

骨も残らないくらいに壊してしまえばよかった。


見つからなかったらどうしよう。

すでにここにいなかったら。

瓦礫の下敷きになっていたら。

手の届かない場所に行ってしまったら。

どうしよう。

世界が歪む。

嫌だ、ごめんなさい、謝りますから。

嫌いだ、世界なんて消えてしまえ。

みんなみんな消えてしまえ。


帰ってきて。

君がいなきゃ、俺は世界を愛せない。

××××××××××

××××××××××

××××××××××

隊長視点でした。

ヘタレ注意報発令。

筆者がひいきしてる隊長が、華麗に活躍する話だったはずなのに。


それでは、またお目見え出来ることを願いまして。

さよならの挨拶とさせて頂きます。

ありがとうございました。

あなたに幸あらんことを。

××××××××××

××××××××××

××××××××××


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