表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/39

猫。またされ。


蒸れる。



猫ってそんなに体温高くないはずなのに、なんでこんな暑いの。

下を出し、あ、あぶねえ、危うく放送事故になるとこだったぜ。


鶴〇師匠、お疲れ様です。


それはともかく。

正しくは、舌を出して。

そう、俺は舌を出して、熱を逃がそうと試みたんだ。

確か犬の機能だったと思ったけど、犬に出来て猫に出来ないことはない。

猫は「わん」と鳴くことだって、簡単に出来るのだよ。

赤子の首を捻るよりも容易い。

やれないからしないんじゃない。

やれるけど、しないんだ。

何故かって?




坊やだからさ。




使いどころを間違えた。

激しく間違えた。


うん、それにしても暑い。

室内はクーラーもないのに、快適な温度で保たれている。

と、いうのに。

現にグレ君は涼しい顔でステージを見ている(厳密にはクマだからわからない)


どうしてなの先生。

それはね、後ろのあつぅい胸板が嫌な熱気を放ち、君を暖めているからさ。

どうしてなの先生。

え、だから隊長の胸板と高そうなシャツのサンドイッチだからだよって。

どうしてなの先生。

隊長が興奮してるからじゃない。

どうしてなのシャア。



……坊やだからさ。



説明書を、誰かこのセリフの説明書を。

俺に。


目の前のテーブル。

俺としては、そっちに礼儀正しく座ってた方が楽なんだが。

テーブルに座るのが誠に礼儀正しいのかはともかくとして。

小さくつぶやかれた言葉。


「出るな、いい子だから」


無表情な隊長の声色は、こんなにも表情が豊かだから。

心配してくれたの、わかるんだ。

伝わったよ。

でも暑い。


ステージでは女の人が苦笑いしてる絵を、俺が私がってやってるとこ。

アートって、たまに理解できないよね。

奥さんの笑顔見た方が癒やされると思うのだけどね。


うん、それにしても、待てども待てども獣が出てきません。

タメが大きすぎる司会者のようだ。

はよ言えや。

さっきから出品されるのは、どこぞの画伯の絵とか過去の王様が愛用した弓だとか。

あ、神の姿を模したステンドグラスは見物だった。

協会ってこんな感じかなあ、と脳裏に浮かべるくらい、厳かで神々しかった。

落札したのは虎の仮面のおでぶ。

神様も選べないんだ。


ローブを引きずりながら、アシスタントが布のかかった小さい箱を運んできた。

箱を運んできたんだよ。

気づいて。


その箱は幼稚園児がこれっくらいのおべんとばっこに、をしたらそれくらいのサイズになるんじゃない?

って、大きさだった。

ただ俺が幼稚園児の時にやった、おべんとばこの大きさは当てにならない。

走ったからな。

標準サイズで頼む。


それを中央に丁寧に置き、すすす、と下がるアシスタント。

うーん。

顔も見えないのに、なんでだろう。

さっきから目があってる気がするんだよなあ。

そいつ俺のこと好きなんじゃねえ。

ばっか、ちげーよ。やめろよ。

ほら、あんたばっか見てる。

うっせ、あほ、さっさと行こーぜ。



あ、あいつが、俺のことを(ドキドキ)



春ですか。


そうこう考えているうちに、ジャガジャガジャガ、いも。

ごめん、真面目にする。

明日から本気出す。

ちなみに今のは、こう、ジャーンって出す前の盛り上がりの音だから。

実際に鳴ってるから。

妄想じゃないから。


うさぎが何事か叫びながら、布を取った。

ざわめき盛り上がる、観客。

ついに、この時が。




ネックレス。




「にう」


まだなのかよ。遅いよ。

出来れば、尊敬する三村さん風に脳内で変換お願いします。


「…あれ、つい先日届け出があった盗品ですね」


クマさんの開いた口から、グレ君の声が。

クマさん、昼食はグレ君をいただいた模様。


「最近の物も多いな」


鳥さんのくちばしの先から、隊長の声が。

あと、はぁはぁするのやめろ。


よい子の盗品豆知識。

盗んだ物はほとぼりが覚めた辺りで、売りに出すのが一般的なんだって。

足がつかないように配慮してるんだね。

距離もとると安全だよね。

盗まないのが一番安全なんだけどね。


あ、ネックレスが落札された。

孔雀の仮面のセクシャルおねいさん。

飾り羽もご健在です。


ここで暗転。

名実ともに、暗転。

暗闇が目の前を転がった。

一瞬の闇から、ステージに人一人は楽にはいれそうな箱が出現。

お客さんが息をのむ。

そうか、本物はこういうリアクションなのか。

勉強になります。


うさぎが声高らかに告げます。


「本日のメインイベント」


誰もしゃべらない。

貧乏揺すりすら止まる。

空気が爆発しそうだ。



「獣の落札に入ります」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ