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きらきらな鳥たち

作者: C07
掲載日:2026/01/11

あなたにとっての宝物は何ですか?

 あるところに、アオ色の羽を持った黒い鳥がいました。鳥は傲慢で、いつもひとりで自分の家の中にいました。その家はたいそう豪華で、七色の宝石や、金や銀で作られた装飾品で溢れていました。黒い鳥は自分の家のことをとても自慢に思っていたのです。

 ある日、1羽の鳥が黒い鳥に話かけました。


「あなたはどこからこれだけのキラキラした物を持ってきたのですか?」


 黒い鳥は誇らしげに、そして満足げに答えました。


「そんなの色々な所さ! 黒色の地面、青色の袋、豪華に飾られた家の中や、ガヤガヤしててチカチカする場所とかな!」


 それを聞いた鳥は驚きに目を丸くしました。何故ならそれらの場所は全て、他の鳥たちが行くことを怖がっている場所だからです。


「凄いですね! 誰も行かない場所に行って色んな宝物を見つけるなんて! 僕にはそこに行く勇気なんて……」


「まぁ、俺くらいになれば朝飯前よ! なんならお前の分も取って来てやろうか? 1個取ってくるのも2個取ってくるのも同じだからよ!」


 鳥の言葉に気分を良くした黒い鳥はそう提案しました。しかし、鳥は首を横に振りました。


「いえ、遠慮しておきます! 自分の物は自分で取らないといけないですからね」


 鳥はそういうと黒い鳥の家から飛びさりました。黒い鳥は飛び去る鳥の後ろ姿をじっと見つめた後、やがてキラキラした自分の家へと入って行きました。黒い鳥は自慢の宝物たちをせっせと整理し始めました。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 ある日、黒い鳥の家の近くに新しい家ができました。小枝と鉄の糸でできたその家は黒い鳥に比べると、きらびやかな物とはとても言えませんでした。


「こんにちは! 今日から近くに引越して来ました! よろしくお願いします!」


 鉄糸でできた家の鳥が黒い鳥を訪ねてそう言いました。よく見るとそれは以前黒い鳥を訪ねてきた鳥だったのです。


「お前はこの前のヤツか! 俺の近くに引っ越すなんてどういうつもりだ?!」


 黒い鳥は引越して来た鳥を怪しむように訊ねました。まさか自分の宝物を狙っているのでは無いだろか。そんな考えが黒い鳥の頭をよぎったのです。


「私はただ、あなたのように勇敢な人の近くにいたいだけですよ! あなたの近くにいると私もなんだか強くなれる気がするんです!」


 曇りのない純粋な目をするその鳥に黒い鳥はたじろぐしかありませんでした。鉄糸の家をよく見ると、そこには1匹のメス鳥と数個の卵がありました。


「もうすぐ産まれるんです。だからそれまでに家をもっと丈夫にしないといけないんです」


 黒い鳥は目の前の鳥が結婚していたことに戸惑いながら、それでも睨み付けることを止めませんでした。キラキラした瞳に、黒い鳥の暗い瞳孔が映し出されました。


「好きにしろ」


 親鳥の瞳から目を反らし、黒い鳥はそれだけ言うと自分の家の中へと戻って行きました。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 それから数ヶ月後、黒い鳥の周りには色々な鳥の家が作られました。それらは全て、初めに引っ越してきた父鳥の友人やその知り合いでした。黒い鳥の周りはいつしか、夫婦たちの幸せな声や、母鳥たちの談笑や、父鳥たちが相談し合う声で溢れるようになりました。

 しかし、そのどの声の中にも黒い鳥の姿は見えませんでした。黒い鳥はいつも、キラキラした自分の家で過ごしていたのです。ある日、最初に引っ越してきた家の親鳥が黒い鳥に訪ねました。


「どうしてあなたはみんなと話さないのですか?」


 親鳥の質問に黒い鳥は不機嫌に答えました。


「どうしてお前たちと話をしないといけないんだ。話すことが無いから話さないだけだ」


 黒い鳥の言葉に親鳥は首をかしげました。


「そんなこと言わないでくださいよ。みんなあなたの話を聞きたがるはずです」


 親鳥の言葉に黒い鳥は視線を逸しました。お腹の下にある宝石達の冷たさが頭に直接伝わってくるような感覚に黒い鳥は顔をしかめました。


「そんなことあるわけ無いだろ。適当なことを言うのは止めてくれないか?」


 つぶやき声に似た黒い鳥の言葉に親鳥は力強く答えました。


「私はあなたの凄さをみんなにも伝えたいのです! あなたがいてくれれば、ここはもっといい場所になるはずなんです! お願いします!」


 親鳥の真っ直ぐな瞳が黒い鳥を突き刺しました。協力して家を作ろうとしている父鳥たちや、助け合って子供を守ろうとする母鳥たちの姿が黒い鳥の頭に浮かび上がりました。そのどれもが黒い鳥にとっては眩しすぎるほどキラキラした物だったのです。


「出て行ってくれ。俺は俺の好きなようにする」


 そっぽを向く黒い鳥の姿を親鳥は残念そうに見つめていました。心強く、頼もしく見えていた黒い鳥の背中が今では少しくすんでいるように見えました。


「わかりました。でも、いつでも来てくださいね。待ってますから」


 そう言うと親鳥は寂しそうにその場を後にしました。黒い鳥はその姿を見届けると、お腹の下にある宝石の整理を始めました。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 それからどれだけの月日が経っても、黒い鳥が姿を見せることはありませんでした。黒い鳥の家にあった宝物たちは月日と共に色褪せていき、やがてくすんだ石ころたちに変わってしまいました。

 それでも黒い鳥は今日もそれらを整理を続けていました。黒い鳥にとってそれらは、自分の中で唯一のキラキラした宝物だったのです。

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