【7】
茶館に戻った凛と雅巳は女給に手伝ってもらい、元の姿に戻ったのだった。
「はあ、このほうが楽だね」
正直に感想を口にすると、雅巳が肩に手を置きながら、首を左右に揺らす。
「いろいろあって疲れたな」
「そうね、あの…」
「何だ? 小声で言え」
顔を向け、どきりとする。雅巳から甘い香りがするので、さらに心臓がうるさくなる。
ーもう!! いいから言ってしまえ。
半ばやけになって、雅巳の耳に手をあて、凛は言う。
「金庫、大丈夫かなあ?」
「ああ、それなら…」
雅巳も周りを気にし、小声で返してくる。
「必ず見つけだすだろうさ、周家の名にかけて」
「周家の名にかけて…。なるほど」
「でなければ、赤っ恥だ。俺なら、そうする」
腕を組み、雅巳が真剣に言った。凛もうなずく。
「そうね、私たちの問題ではないし」
「そうだ。とりあえず、問題は解決したようなものだし」
「雅巳さん、ご両親は…?」
心配になって言うと、雅巳が告げる。
「それは、俺の問題だ。お前をまきこむわけにはいかない」
「…そう。それならいいんだけど」
ほつれた髪を耳にかけ、凛は無関心をよそおって言う。本当は雅巳の両親に興味があった。
ー駄目よ、凛。変に気をもっちゃ。
首をブンブンふると、雅巳に声をかける。
「帰ろうか、甘味処に」
「そうだな、美加さんも心配してると困るし。ただー」
雅巳が天を仰ぎ、それから一言言う。
「俺についてこい」
「は?」
「いいから」
「分かったわよ」
揺るがない雅巳におされ、凛は承諾したのだった。




