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【16】
何気ない毎日が戻り、凛は雑貨屋のレジ台で伸びをした。
ーあー、普通が一番ね。
首を左右に振り、肩をほぐす。凛の中では金があるのも幸せなのかもしれないが、こうやってのどかな光景を見つめているほうが自分には合っていると思う。
「ーよう」
そこに雅巳がやって来た。彼は日光を受け、輝いて見える。凛は目を細める。
「今日もお買い物?」
姿勢を正すと、凛は雅巳を真正面から見つめる。雅巳も凛の前までやって来て、見つめ返す。
「そんなようなものだ」
「そう」
2人は黙り込み、互いを見つめ合う。それは嫌ではなく、心地の良いものだった。
「ーちょっと目を瞑れ」
「…はい?」
いきなりの要求に、雅巳は「いいから」と付け加える。何だろうと思いながらも、反射的に凛は目を瞑る。すると、額に柔らかな感触があった。
ーん? …んん!?
ぱっと目を見開くと、雅巳の顔がどアップであった。
「簪、似合っているから、大事にしろよな」
舌を出し、雅巳が出ていってしまう。何の用だったんだというよりも、額の生々しさに凛は大声を出す。
「えー!!」
舞っているトンボ達が、迷惑そうにバラバラに飛んだのだった。




