【12】
「えっ? 王先生のこと?」
回廊で召使いを捕まえ、聞く。とにかく情報を集めようというものだった。
「何でもいい、教えてくれ」
雅巳が言うと、召使いたちが頬を赤めるのが分かった。それはそうよね、こんな良い男いないものと凛はため息をつく。
「お願いします、少しでいいので。…。…あの」
回廊の隅によると、召使いがこぼす。
「王先生と関係あるか分かりませんが、宦官の黒さんがお金に困っていると聞いたことがあるのですのが…」
「…なるほど、どうもありがとう」
雅巳はうっすらと笑みを浮かべると、召使いがさらに頬を赤くする。
ーこの人たらし。
膝の裏をカクンと押すと、雅巳の体が動いた。
「何だよ」
「…何でも。ふん」
面白くない自分に凛は戸惑う。今は私情を挟むときにではなかった。
「次行くわよ、次」
「はいはい」
今度は男の召使いに声をかけてみる。
「あの…」
「はい、なんでございましょう?」
振り返った召使いが今度は凛に対し、少し頬を赤める。あらと思った瞬間、雅巳が邪魔をする。
「何でもいいから、王先生のことを聞けせてくれないか?」
「それは…」
口をつぐんだ召使いに対し、凛が後押しをする。
「お願いします、啓太様をなぐさめたいのです」
嘘八百で言うと、召使いが声を落として言う。
「その啓太様に新しい家庭教師がつくとか…」
「えっ!? もう!?」
「しー。ここだけの話ですよ」
凛は慌てて口をおさえ、うなずく。ということは、啓太の両親は王のことを気に入ってなかったということだろうか。
「それじゃ、忙しいんで」
「ありがとうございました」
礼を言い、深々と頭を下げる。雅巳が肘でこづいてきたのだが、どうやらそこまでしなくて良いとのことらしい。
「俺の婚約者の役なんだから、堂々としろ」
「分かったわ。ごめん」
「いやに素直だな。明日雪でも降るのか?」
「あのね…」
雅巳の袍を引っ張ると腰をかがんでもらう。
「怪しくない? 麗さんの両親」
「何でそう思う?」
「だって、すぐに新しい先生にしてくれるなんて、あり得なくない? もうちょっと、時を待つというか」
「確かにな…。うーん」
雅巳が腕を組み、うなる。凛も頬に手を当て、息を出す。
ーどの人も怪しく見える。
動いているもの自体が全部そう見えた。誰にも殺す機会があるはずだ。
「とりあえず、もう少し聞き取りをしようか?」
「そうだな。そうしよう」
2人はうなずくと、回廊を歩き出したのだった。




