チートスキル「即死英語」で異世界無双 ~英語学習用異世界転生譚プロトタイプ~
君は日本の中学生。今は英語の授業中。
君は今、ものすごーく、ねむい。
君は(英語ってなんで聞くとねむくなるんだろう)と思いながら、うつらうつらとしている。
まったく、英語の授業は寝ないようにするのが大変だ……
……君はハッと気がついた。
(いつのまにか、ねちゃってた……?)
でも、ようすがへんだ。
ここは教室じゃない。
君は机のところに座っていない。草原にねころがっている。
君は見たことのない草原にいた。
(どこ? ここ?)
君が混乱したまま、ぼーっと水平線を見ていると、とつぜん、変な音が聞こえた。
ポポポ!
君がふりかえると、巨大なリンゴみたいなものが、草原をこちらにむかってはねてくるのが見えた。
ポポポ!
へんな音は巨大リンゴの鳴き声だ。
巨大リンゴには大きな口と目がついている。
巨大リンゴの大きな口にはするどい歯がならんでいて、長い舌でしたなめずりしている。
あれは、モンスターだ!
巨大リンゴはどんどんと君の方にせまってくる。
戦わなければ、殺されてしまうだろう。
だけど、君は武器なんてもっていない。
(どうしよう!)
そのとき、君は気がついた。モンスターの頭上に文字が見える。
This ( ) an apple
英語の穴うめ問題みたいだ。
君はつぶやいた。
「This is an apple ?」
とたんに、モンスターは「ポー!」と叫んでパックリと割れたかと思うと、消えてしまった。
モンスターが消えたあとには、赤いキラキラした石が落ちていた。
君はその石をひろってポケットにいれた。
(ここって異世界? ゲームみたいな世界かな)
君は視界の右はしに記号が見えることに気がついた。記号にさわろうとすると、ステータス画面が見えた。
君のレベルは2、そして、固有スキル「即死英語」をもっていることがわかった。
どうやら、君はさっき、このスキルでモンスターを即死させたみたいだ。
君はちょっとわくわくしてきた。
周囲をよく見ると町が見えた。反対側には森がある。
どちらに行こうかと思ったところで、君はかすかな悲鳴のような声に気がついた。
声は森の方から聞こえた。
よく見ると、森のはずれのところに、誰かいる。
君はいそいで森へ向かって走っていった。
近づくにつれ、状況がわかってきた。
銀色の髪の少女が黒いカゲのようなものにおそわれている。
少女は魔法で応戦している。だけど、黒いカゲみたいなモンスターには、魔法の攻撃がきかないみたいだった。
君はカゲみたいなモンスターの頭上を見た。そこにはやっぱり英語の穴うめ問題があった。
I am a s___w
どうやら、今度は単語のとちゅうが空白になっているみたいだ。
(sからはじまってwで終わる言葉……わかった!)
「I am a shadow !」
君が叫ぶと、とたんに、カゲのようなモンスターは姿を消した。
「ありがとう。助けてくれて」
少女が君にお礼を言った。
銀色の長い髪と、すけるような白い肌の、きれいな女の子だった。
「あのモンスターには、わたしの魔法がきかなくて、困っていたの。わたしはエリスネヤ。エリーって呼んで。あなたは?」
「……」
答えようとして、君は困ってしまった。
君はなぜか自分の名前が思い出せなくなっていた。
「……思い出せない」
「え? まさか、記憶喪失?」
「記憶……ないかも」
なんとなく英語の授業を受けていたことは思い出せるけど、過去の記憶はすべてがぼんやりとしていた。
君はもう自分の名前も自分の家族のことすら、ちゃんと思い出せない。
「ひょっとして、あなたも漆黒の魔女の呪いで記憶を失ってしまったの?」
「漆黒の魔女……?」
「漆黒の魔女のことも忘れてしまったの?」
「……うん」
魔女なんて聞いたこともない。君は別の世界から来たのだから。
でも、ぜんぶ記憶を失ったことにしたら、別の世界から来たことをかくせそうだ。
これは、つごうがいい。
君は何か聞かれたら「忘れた」と言うことにした。
そんなことを君が考えているとはつゆ知らず、銀色の髪の少女エリーは言った。
「わたしも、魔女の呪いで過去のことが思い出せないの」
美しい少女は目をふせた。ちょっと悲し気な表情が、よけいにエリーの美しさをきわだたせる。
「でも、同じ呪いにかかった人がいるってわかって、ちょっとうれしいかも。よろしくね」
少女は笑顔をみせてそう言い、君はなんだかちょっとドキドキしながら、うなずいた。
「うん。よろしく」
「わたしはエリー。あなたのことは、なんて呼べばいい?」
「うーん……。名前、思い出せない……。なにか、あだなをつけて?」
「じゃ、クロってどう? あなたの黒い髪の毛と瞳がきれいだから」
君は「きれい」と言われてちょっとてれながらうなずいた。
君は銀色の髪の少女エリーといっしょに、草原のむこうの町にむかった。
町に入ったところで、君はエリーにたずねた。
「この後どこに行く? 冒険者ギルドとかってあるのかな? 依頼を受けてモンスターを倒すと報酬がもらえるようなところ」
まずはお金をかせがないといけない。君は今、一文なしだから。
エリーは町を見わたしながら答えた。
「これくらいの大きさの町だったら、冒険者ギルドはあると思う。ギルドに登録するの?」
「うん。ギルドでお金をかせぎたいんだ」
「じゃあ、わたしも登録しようかな」
「いっしょに行こうよ」
君とエリーはいっしょに冒険者ギルドを探して町の中をあるいていった。
冒険者ギルドはすぐに見つかった。ギルドの入り口で呼びこみをしている人がいたから。
「新人冒険者募集中! いま冒険者登録をしたら、特典のモンスター図鑑がもらえるよ!」
よびこみの人に、君は話しかけた。
「あの、冒険者登録したいです」
「登録してくれるのかい! ありがとう! 君は未来の大英雄だ。さぁ、そこから入って受付のお姉さんに手続きをしてもって」
君は案内された通り、ギルドの受付にむかった。
ギルドの受付のお姉さんはとてもよろこんでくれた。
「冒険者登録希望ですか? ありがとうございます。この町では今、冒険者がとても不足していて。猫の手もかりたいほどなんです」
受け付けのお姉さんは、すぐに君とエリーに冒険者証を発行してくれて、特典のモンスター図鑑と周辺の地図をくれた。
「はじめはFランクからです。依頼のクエストをこなしていくと、ランクがあがります。クエストの掲示板は、あちらにあります。Fランクの冒険者はEランクまでの依頼を受けることができます。でも、無理はしないでくださいね。このあたりのモンスターはけっこう強いですから。最初はFランクの採集クエストや町の中のお手伝いクエストがおすすめです」
君とエリーは何かクエストを受けるために掲示板を見に行った。
Fランクの依頼には町の中の迷い猫探しやゴミ拾い、町はずれでの植物採集がのっていた。
でも、君はせっかくだからモンスターと戦ってスキル「即死英語」をもっとためしてみたい。
Eランクの依頼には、「アポーの魔石」を集めるというものがあった。アポーは君がさっき草原で倒したモンスターだ。
(このクエストでお金をためようかな。まずは今日の宿代とごはん代をかせがないと)
君がそう思っていると、後ろの方から、しゃがれたよわよわしい声が聞こえた。
「おねがい。だれか、あたしといっしょにパーティーをくんで、解呪の魔石を手にいれるのをてつだって」
君がふりかえると、猫みたいなおばあさんがいた。人間みたいに2本の足で立っているけど、耳や鼻は猫みたいで、顔にも毛がたくさんはえている。
杖にすがってやっと立っているよぼよぼのおばあさんだった。
近くにいた冒険者の男が返事をした。
「おいおい、猫人のばあさん。パーティーを組むって、あんた、戦えるのかよ? ジョブは? 魔法使いかなんかか?」
「あたしは、盗賊だよ」
「盗賊ぅ!? すばやい身のこなしが売りのジョブだってのに、そんなよぼよぼじゃ、まるっきり戦力外じゃねぇか。解呪の魔石を手に入れるにはAランクのモンスターを倒さなきゃいけないってんのに」
「たのむよ。このままじゃ、あたしは漆黒の魔女の呪いで死んじゃう。解呪の魔石を手にいれたら、その後、ただで働いてあげるから」
だけど、他の冒険者たちも口々に言った。
「ばぁさん。おとなしくギルドに依頼しな。解呪の魔石の入手なんて、依頼料200万Gはくだらねぇだろうけどな」
「でも、このギルド、今は冒険者不足でAランク任務をこなせるやつなんていないぜ。依頼するなら、早くよその町に行った方がいい」
猫人のおばあさんはすっかりしょげかえった様子で、近くのイスにすわった。
いっしょに様子を見ていたエリーが君にたずねた。
「かわいそう。ねぇ、クロ。あの人のお手伝い、してもいい?」
「うん。手伝おう」
エリーは猫人のおばあさんに声をかけた。
「おばあさん。わたしたちがいっしょに解呪の魔石を手に入れに行ってあげる。わたしとクロも漆黒の魔女の呪いで記憶を失ってしまったから。協力して解呪の魔石を手にいれましょう?」
おばあさんは、いきおいよく立ち上がった。
「ありがとう!」
そして、おばあさんはすぐに腰をおさえてイスにすわりこんだ。
「あたたた! あぁ、もう。漆黒の魔女にかけられた老化の呪いのせいで、急に動くとそれだけで、腰痛がひどくて」
「老化の呪い? それが、あなたが漆黒の魔女にかけられた呪い?」
「そうだよ。このままじゃ、あたし、老衰で死んじゃうよ。その前に呪いをとかないと。あたしの名前はキット。解呪の魔石をもつモンスターの居場所はわかってるんだ。でも、とっても強いモンスターだって話だから、たおすのはたいへんかも」
「だいじょうぶ。魔法がきかない敵じゃなければ。わたし、けっこう腕に自信があるの。さっそく行きましょう」
エリーはそう言った。
君たちは、解呪の魔石を手に入れるために草原の向こうの森へむかった。
ボランの町の外には草原が広がっていて、その向こうにいくつか森がある。君がエリーと出会ったのは西の森のはずれ。
今、君達がむかっているのは東にあるゴラルの森だ。
森にむかって歩いて行く途中、君はどこかからかポポポポポポという音が近づいてくるのに気がついた。
「アポーの音?」
「見て! アポーの大群!」
キットが叫んだ。キットが指さす方向は、草原を赤くそめるほどにたくさんのアポーがとびはねながらこっちに向かってくる。
キットはなげいた。
「こんな時にモンスターのスタンピードにそうぐうするなんて。ついてなさすぎだよ」
「スタンピード?」
「たまにモンスターが大量発生して暴走することがあるんだよ」
そうこう言っている内に、アポーの大群が近づいてきて、英語の穴うめ問題が見えるようになってきた。
This is an a___e.
T___ is an apple.
My color is r__.
( ) am a red apple.
君はかたっぱしから「即死英語」を発動させようとした。
「This is an apple! This is an apple! えーっと……My color is red! I am a red apple! ……」
「即死英語」でどんどんアポーを即死させることはできたけど、数が多すぎて、きりがない。アポーの大群はどんどんと近づいてくる。
このままでは、君たちはモンスターの大群にのみこまれてしまう。
そこで、エリーが言った。
「ここは、わたしにまかせて」
エリーが呪文を唱え、とたんに巨大な炎が草原をかけめぐった。
アポーの大群はいっしゅんで消えうせた。
キットが口をあんぐりあけて言った。
「すごっ! 今のって、最上級Aランク魔法の<劫火の拭浄>でしょ? エリーって、ほんとうにすごい魔法使いだったんだね」
君はこの世界の魔法のことは何もしらないけど(なんかすごそう)と思った。
キットは君とエリーを見ながら言った。
「あんたたちって、ふたりとも、あたしの鑑定スキルでレベルもスキルも読み取れないから、何者なんだろうっておもってたんだけど」
君も(エリーは何者なんだろう)と思った。
エリーは、キットにほめられて、ちょっとはずかしそうに言った。
「何者かって言われても。わたしは記憶がないから」
「そっか。ふたりとも漆黒の魔女の呪いで記憶がないって言ってたね。実はふたりとも記憶を失う前は大物だったりして」
君は、自分はただの異世界人です、と思ったけれど、何も言わなかった。
エリーははずかしそうに森の方を見て言った。
「さ、早く森に入りましょ」
「待って。モンスターが落とした魔石やアイテムを集めるから」
そう言って、キットが「ドロップアイテム回収」というべんりなスキルで倒したモンスターの魔石をいっしゅんで全部集めてくれた。
集めたアポーの魔石は61個もあった。
ギルドにもっていけば、すぐに冒険者ランクがあがりそうだ。
ゴラルの森のモンスターたちも、君の「即死英語」とエリーの魔法で簡単に倒せた。
君たちは森の中をどんどんと進んで行った。キットはすぐにつかれてしまうから、途中でなんども休みをとらないといけなかったけれど。
ゴラルの森の深い所に、木々とやぶに囲まれた円形の空き地があった。
その空き地で、巨大なヘビみたいなモンスターがとぐろを巻いていねむりしていた。
巨大なモンスターを、やぶのかげからそーっと見ながら、キットが小声で説明した。
「あれが解呪の魔石を持つモンスター。魔石の守護者 デドリィサーペン。Aランクのモンスターで、レベルは49。解呪の魔石を持つモンスターの中ではレベルは低いほうだけど、攻撃には猛毒、石化の効果があるものがあるからやっかい。でも、もっとやっかいなのは、デドリィサーペンはとてもすばやいモンスターだってこと。今のあたしは絶対にあいつの攻撃から逃げられない。あたしは見つかれば終わり。悪いけど、殺される自信があるから、戦闘にはくわわれないよ」
「気にしないで。わたしとクロが戦うから」
「それから、もうひとつ。あたしの鑑定によると、このモンスターは、スキル「魔法半減」をもってる。エリーの魔法は威力が半分になっちゃうから、簡単にはたおせないかも」
さいわい、モンスターはまだこっちに気がついていない。
君は仲間に言った。
「しばらく待って。即死スキルを発動できるかためしてみる」
君はデドリィサーペンの頭上の文字を見つめた。
I am ( ) st___gest in this f__est.
今までのモンスターの時とちがって、むずかしい。
空らんが3つもあって、わけがわからない。
でも、君は落ちついて、ひとつずつ答えを考えた。
(fからはじまってestで終わることば……forestだ!)
最後のfからはじまってestで終わる単語は、きっと森という意味の単語forestだ。
だけど、その前のふたつの空白はなんだろう。
stからはじまってgestで終わる単語……。
思いつかない。
それに、その前の空白は、まるっきりヒントがない。
デドリィサーペンが目ざめて、あたりを気にしだした。チョロチョロと長い舌を出し入れしている。
デドリィサーペンが、こちらを向いた。
(気づかれた!)
君はとっさに走りだした。
キットはおそわれたら終わりだ。だから、君がおとりになろうとしたのだ。
デドリィサーペンが君に気がついた。そして、大口をあけ、君めがけて、つっこんできた。
君はなんとか、デドリィサーペンのかみつき攻撃をよけた。だけど、デドリィサーペンはそのまま長い巨体を君に打ちつけた。
くらくらとして気を失いそうになって、気がついたときには、君はデドリィサーペンにつかまり、しめ殺されそうになっていた。
(このモンスター、強い……)
そのとき、君はひらめいた。
(最上級だ!)
一番ってことをあらわす最上級の形になる時、英語の形容詞は変化して単語の最後にestがつく形になる。
つまり、st___gestは、stから始まってgで終わる単語が変化したのかもしれない。
だから、たぶん……
(strongがstrongest になったんだ!)
そして、最上級の形の時、形容詞の前にはtheがつく。これで空白がうまった。
「I am the strongest in this forest! (私はこの森で一番強い!)」
君が叫んだとたん、デドリィサーペンは力がぬけたようにしぼんでいき、消えた。
エリーとキットが、地面に落ちた君にかけよってきた。
「すごいよ、クロ。一撃でデドリィサーペンをたおしちゃったね」
「今の何!? 即死魔法!?」
君は立ち上がりながら、おどろくキットに教えた。
「即死英語ってスキル」
キットは首をかしげた。
「ソクシエイゴ……? 聞いたことないな……」
君はすぐ近くの空中に半透明の光りかがやく魔石が浮かんでいるのに気がついた。
たぶんこれが、解呪の魔石だ。
君は魔石をそっと手でつかみ、エリーにたずねた。
「エリー。この魔石、キットにあげていいよね?」
「もちろん」
「はい、どうぞ」
君はキットに解呪の魔石をわたした。
「ありがとう! 恩にきるよ」
キットは解呪の魔石を、左肩の大きな黒いアザに近づけた。
解呪の魔石が、黒いアザに取りこまれていくようにして消えていった。
そして、キットの姿がみるみると変化していった。
よぼよぼのしわしわだった顔はどんどんと若返っていき、すっかり曲がっていた背中はまっすぐになった。
そこにあらわれたのは、君と同じくらいのとしの猫人の少女だった。
「やったぁ! 呪いがとけた!」
キットは空中高くにとびあがり、すばやい身のこなしでくるくると回転した。
そして、着地したと思ったら、キットは君にとびついた。
「ありがとう! クロ!」
「ど、どういたしまして」
キットはだきついたまま君にほおずりをした。キットのやわらかい耳と顔の毛がここちよかった。
キットは君からはなれると元気よく言った。
「あたしは盗賊のキット。冒険者ランクはB。だけど、盗みの腕は冒険者ランクよりずっと上だよ。盗みたいものがあったらいつでも言って。すぐに盗ってきてあげる!」
「盗みって、犯罪じゃ……」
君はとまどったけど、キットは元気よくうなずいてあっけらかんと言った。
「もちろん、犯罪だよ。でも、悪いかは、相手しだいじゃない?」
エリーがきっぱりと言った。
「相手が誰でも、ドロボウはダメでしょ」
「はにゃ? とにかく、これから、よろしくね!」
君たちはボランの町の冒険者ギルドにもどった。
集めた魔石を見せると、受け付けのお姉さんはおどろいていた。
「こんなにたくさんの魔石。しかも、DランクやCランクのモンスターもたくさん……。これはゴラルの森のモンスターですよね? あの森のヌシなんて、Aランクモンスターですよ。冒険者になったばかりで、あんなに危ないところに行っていたなんて」
キットが元気よく言った。
「なんてったって、そのヌシ、デドリィサーペンを倒してきたんだもんね!」
「ええ!? まさか!」
「ほら、ドロップアイテムのデドリィサーペンのキバだよ。うそだと思うなら、行ってみてきなよ。もういないから」
キットはふくろから取り出したデドリィサーペンのキバを見せながら、ギルドの受付のお姉さんにそう言った。
「まさか、本当に? モンスター図鑑を確認させていただいてよろしいですか?」
君は今日ギルドでもらったばかりのモンスター図鑑をとりだした。お姉さんがモンスター図鑑を操作すると、いつのまにか図鑑にデドリィサーペンが登録されていて、そこには討伐済みのマークがついていた。
それを見ながら、キットが君とエリーをうらやましがった。
「あー。いいなぁ。最新のモンスター図鑑じゃん。あたしもほしいなぁ」
お姉さんは信じられないというような目で、君たちを見ていた。
「と、討伐を確認しました。では、デドリィサーペン討伐の報酬を用意しますね」
君たちは報酬としてたくさんのお金をもらった。
それから、君とエリーの冒険者ランクはいきなりFからCにあがった。
ギルドを出た後、君はエリーとキットといっしょに、ごうかなご飯を食べにいった。
この世界の料理屋さんには、君が食べたことのない料理がたくさんあって、君は思わず色々と注文してたくさん食べてしまった。
だけど、キットは君より、もっとたくさん食べていた。
「あー、おいしい。じょうぶな歯と胃があって、たくさん食べれるのって最高!」と言いながら。
キットはおばあさんになっていた時は、食事をするのもつらかったらしい。
君たちは夜は冒険者ギルドのすぐ近くの宿屋に泊まった。
「聞いたかい、あんたたち。この町のギルドに、ゴラルの森のデドリィサーペンをたおした冒険者が出たといううわさだよ。たいしたもんだね」
宿屋のおばさんが、何も知らずにそんなうわさ話をしてきたのが、なんだかおかしかった。
君は宿屋でしあわせな気分でベッドに入ってぐっすりと眠り、そして、小鳥の声でめざめた。
めざめた時、君は信じられない光景を見た。
机、学生服、教卓に、先生……。
君は、いつのまにか学校に戻っていた。
今はまだ英語の授業中だった。
(なんだ、異世界は夢かぁ……。つまんないなぁ)
がっかりしながらそう思った時、君は、先生の頭上に英語の問題がうかんでいるのに気が付いた。
I ( ) a teacher.
とっても簡単な問題だ。
君はなにげなく、「I am a teacher」とつぶやいた。
そして、そのとたん、先生がバッタリと倒れてしまった。
「先生!?」
(まさか即死スキルが発動!?)
君はあわてて、先生のところへかけよった。
先生はたおれたまま、動かない。だけど、息はしていた。
眠っているだけだ。どうやら、こっちの世界では君の英語スキルの効果は睡眠になるようだ。
「先生! 先生!」
生徒たちが大声で呼んでも起きないくらいに、先生はぐっすりと眠ってしまっていた。
試験的な短編なので、ここで終わりです。
読んでくださり、ありがとうございました。