番外編短編・その後の新婚旅行計画の話
王都の公園、もうすっかり春らしい雰囲気だ。木々の緑は濃く、花壇のお花もピンクやイエローで華やかだ。空の鳥は優雅に飛び交い、風も柔らか。
「ということで、スタテル島特産のお魚を使ったフィッシュバーガーよ。とてもおいしいわ。クリスも食べてみて」
私は公園のベンチに座り、たった今買ってきたフィッシュバーガーをクリスに差し出した。
どうも、みなさん、こんにちは。作家のアンナ・エマールよ。きょうは婚約者のクリスと公園デート中。こうして一緒にフィッシュバーガーを食べていた。
「うま! これはレベル違いだな。なんだこのフィッシュバーガーは」
クリスもフィッシュバーガー、気に入ったらしい。目を見開き、感動しているじゃないか。
かくいう私も、このフィッシュバーガーにハマっていた。というかお魚料理全般に。じいやに呆れられるほど、連日、魚フライ、魚スープ、ムニエル、フィッシュバーガーとお魚祭りだった。
時にスタテル島という南の孤島でとれたお魚がおいしいみたい。すっかりハマってしまったわ。
「だったら、アンナ。スタテル島へ旅行行くか?」
「え、けっこう遠くないかな?」
スタテル島、我が国の最南端にある。もちろん、船で行くしかない場所だが、そう気軽に行ける距離でもない。
クリスはそんな私の思考を読んだみたい。ニヤリと笑い、子供みたいに目をキラッとさせていた。この目、アサリオン村で推理中もよくしていた。ちょっと嫌な予感。
「我々は婚約中だ。だったら、新婚旅行でスタテル島へ行けばいいってことだ」
「な、なんでそうなる?」
突然、新婚旅行の話なんかされ、私の顔はっと熱くなってしまう。確かに全く考えていないわけじゃないけれど、ハネムーンとも呼ばれているものだ。恥ずかしい。
「よし、さっそくスタテル島でバンガローでも買っておくか。別荘買ってもいいわな」
「ちょ、行動するの早いから」
恥ずかしさで、ゴホゴホとむせてしまう。おかしい。このフィッシュバーガー、お魚は骨抜きだったのに。
「覚悟しておけよ、アンナ。素晴らしい新婚旅行を過ごそう」
耳元で囁かれ、私はもうキャパオーバー。おいしいフィッシュバーガーの味も忘れてしまった。




