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作家令嬢の田舎追放推理日記〜「推理なんてやめろ」と言われましたが、追放先で探偵はじめます〜  作者: 地野千塩
第3部・スタテル島編

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第43話 そして日常へ

 創作講座の講師の仕事ほど、憂鬱なものはない。改めて思う。本音ではこの仕事はキャンセルしたいけど、新人作家の私に拒否権などない。


「皆さん。皆さんは小説書いたことありますか? まずは小説の基本的な作法から説明します。文法上のルールなどきちんと守っていきましょう」


 今日もその仕事があり、講師中だった。島から王都に戻ってきても休む暇はない。島にいたため、仕事も溜まり、一つ一つ処理していた。正直、目が回るほど忙しい。クリスとの結婚準備も何も進んでいない。


「先生、そんな地味なことはいいから。楽して小説新人賞を受賞する方法を教えて」


 生徒の一人がそんな事を言ってきた。ため息が出て来る。そんな魔法はない。


「ないわ。ちゃんと正攻法でいきましょう。それにズルして夢を叶えても幸せ? 心から嬉しくないわ。一生罪悪感をもつわ。それでもいいの?」


 私がそういうと、生徒たち黙ってしまった。少々厳しくしてしまったが、仕方がない。楽して作家になれるなどと言った方が不誠実だ。


 案の定、わたしは生徒から嫌われ、創作講座の雰囲気は悪い。でも、まあ、仕方ない。時には本当のことを伝えるのも必要だ。


 ようやく、この苦行のような創作講座も終わった。ここの会場の文化センターの控え室に直行するが、嫌なこと思い出す。そういえばロルフに誘拐された場所もここだった。ロルフについて思い出す。


 ロルフも所有していた会社をクリスに買収され、今は作家業一本で何とか生活しているという。古城も手放したそう。今は島の共有地として改装しているらしい。ミステリーツアーのようなイベントに使うらしい。また一部を魔法戦争資料館の展示室にもするしい。資料館は老朽化していたし、ちょうど良かった。茶番のような誘拐騒ぎだったが、これだけは良い結果だ。


 それにマクダも私の実家のメイドとして働いている。じいやも感心するほど有能で、さっそく即戦力になっているとか。


 そんなことを考えながら、控え室の扉を開けたら驚いた。クリスがきてた。仕事の後だからか、きちっとスーツ姿だ。髪もセットしていた。私の婚約者だけれど、宇宙一番イケメンじゃないか。


「クリス、どうしたの?」

「いや、エドモンド編集長にきいたらここにいるって知った。また何かあったら困るからな」


 つまり迎えに来てくれたらしい。過保護だ。案外、クリスも心配性らしいが、嬉しいのも事実。仕事もあるのにわざわざ来てくれたと思うと、さらに口元が緩んでしまう。


「嬉しい、クリス。会えてよかった」


 素直に自分の気持ちを口にしてしまった。恥ずかしいが、まだスタテル島の影響があるのかも。今のクリスは元気だが、一時期は死にかけた。こうして会えるのも、奇跡じゃない?


 魔法なんか使わなくても、日常の中に奇跡はあるのかもしれない。今まで見えなかっただけだ。ちゃんと目を開ければ、目の前にある奇跡いっぱい見えてくる。


「いや、そんな笑顔でいうなよ」

「ふふ、恥ずかしがってる? でも、とりあえず今日は帰る? うちで夕飯食べる?」

「いいね。あと式場や新居についても打ち合わせしよう。うちの実家にもいく予定立てないとな」

「そ、そうね」


 これから結婚に向けて義務もたくさんある。キラキラとしたものばかりじゃない。面倒なこともある。ちょっと考えるだけで嫌になってくるが。


 それでも、いいか。こうして日常に戻れたのなら、悪くない。


「うん、そうね。クリス、帰りましょう」

「ああ」


 自然とクリスと手を繋ぎ、一緒に歩き始めた。これからも、大変な日もあるかもしれない。うっかり事件に巻き込まれることもあるかもしれない。


 それでも、クリスと一緒なら大丈夫だ。隣を見上げる。世界で一番大切な人が生きてる。それだけでいい。もう既に私は幸せだった。

 

ご覧いただきありがとうございました。これにて全編完結です(番外編短編は更新予定です)。


3部は当て馬編です。2部で完結しようと思っていたのですが、魔法、古城、魔王、孤島、人魚などのキーワードが浮かび書いてしまいました。もしまたキーワードが浮かんだらスピンオフや新婚編などがあっても良いかなとも思います。


noteには本作のAIイラストつきバージョンのも掲載中です。よろしくお願いします。


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