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作家令嬢の田舎追放推理日記〜「推理なんてやめろ」と言われましたが、追放先で探偵はじめます〜  作者: 地野千塩
第3部・スタテル島編

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第39話 北風と太陽大作戦

 古城ミステリーツアーイベントが始まった。参加者は古城に隠された宝箱を探す。中には暗号文があり、それを解いていき、最終的には隠し通路にある宝箱にたどり着く。中には賞金が入っていた。


 ただ今回はクヌート所長を捕まえる目的もある。最後の暗号は彼専用の暗号文。科学記号と古語魔法呪文を組み合わせ暗号文で、両方の知識がないと解けない。一般参加者はここで賞金やノベルティを渡し終了予定だ。その役目はマクダにやってもらい、私とクリスは古城を巡回しながら、様子を見ていた。


 普段、ダイニングルームになている場所もイベント仕様に飾りつけられていた。ここも宝箱を探している参加者が押し寄せ、混みあっていた。


「暗号文、難しい!」

「油断してたわ、ガチじゃない」

「でもやりがいがあるね。楽しいじゃん」


 島民たちの声を聞きながら満足だ。どうやらイベントは好評らしい。


「よお、アンナ、クリス」


 そこにロルフが現れた。ロルフはスタッフとして役立てそうになかった為、普通にイベントを参加している模様。


「実に暗号文が難しいよ。アンナ、一体どういうつもりで考えた? というか、こっそり俺に答えをくれ」


 耳元で囁いてきた。堂々と不正を頼むロルフ。いくら良い声で囁かれても、嫌悪感いっぱいだ。すぐにクリスの隣に逃げた。


「そんな不正で勝って嬉しいんか? 好きな女の前だろ。正々堂々としろよ」


 クリス、もう余裕があるのか、ロルフにも上から目線だった。性格悪そうな笑みは相変わらず。


「あんたの持ってる会社、いくつか俺のもんにするかな? 誘拐事件の代償を払え。それが義務ってものだろう?」


 さらにロルフに近づき、きっちりと正論を述べるクリス。堂々としたものだ。ロルフも背が高く、クリスと大差ないのに、急に小さく見えた。実際、肩をすぼめ、後退りしてる。


「わ、わかったよ!」


 ここでようやくロルフ、不正なんてせず、他の島民と一緒に暗号文を解いていた。


「全く、あの男。よっぽど甘やかされてるな」


 ちょうどクリスがため息をついた時だった。廊下にテオを発見。しかも人気のない図書室の方へ向かっていた。これはチャンス?


 私は小走りにテオを追いかけ、図書室へ入る。一応図書室もイベントのため解放していたが、誰もきていない。実はここにも宝箱の暗号文があるのだが、誰も見つけていない様子だった。


 クリスも追いついてきた。二人でこっそりとテオの様子を伺う。意外なことに、誰も見つけていない暗号文、最初にテオが発見。


「テオ、すごいじゃない。ここの暗号文見つけたの、あなたが初よ」


 思わず拍手して褒めてしまった。


「そ、そんなの……」


 一方、テオは動揺していた。下唇が震えている。身体は硬直しているらしく、何も話せない様子だ。


 怪しい人物だ。実際、マリアにストーキングしていた人物だったが、根っからの悪人でもない?


 隣にいるクリスを見た。相変わらず性格悪そうだ。テオへの視線も冷たい。それと比べるとテオの顔は可愛げがある。


 そうだ。それにテオ、弟のハンネスに比べられ、コンプレックスもありそうだ。レオン館長も心配していたし、犯人の論破王よりは同情の余地はある。


 こういう場合、探偵らしく責めるのは違うかもしれない。むしろ、北風と太陽のように接するのが効果的かもしれない。


 私はあえてバカっぽい笑顔を作り、テオを褒めた。


「すごいわ。あなた、頭がいいのね」


 テオ、褒められられていないのだろう。さらに身体が硬直していたが、根気よく付き合う。


「こんな暗号文解けるのよ。ミステリーの能力があるわ」

「アンナの言う通りだ。ストーキングもしていたことだし、犯罪心理もよくわかるはず」

「ちょ、クリス! そんな刺激したらダメじゃない!」

「でも、こいつストーカーだぜ」

「いやいや、クリスもけっこうな執着でプロポーズして来たわよね?」

「それはいいだろ? 正々堂々としたまでだ」


 クリスは相変わらずだったが、私たちのやりとりを見て気が抜けたらしい。というか、バカバカしくなった模様。ヤケクソっぽく吠えていた。弟のハンネスとそっくりの声。


「そうだよ! 俺は犯罪者! クヌート所長に協力してしまった!」


 テオのツバが飛ぶ。それを避けながら、さらに問い詰める。クリスと共に詰められ、テオも袋のネズミ状態。


「そうだよ! クヌート所長、実は魔法ヲタクだったんだよ! 生贄目的でマリアを殴ったのもあの人! 俺は魔法の資料を探すように命令された!」


 耳はキンとするが、これは大事な証言ではないか。


「俺が悪い。俺がマリアのこと、本当の人魚みたいだとか、美しい人魚だっていつも言ってたたから……」


 テオは叫び疲れ、項垂れていた。


「まさか殺害予告、本当に予告だった?」


 全部知ってたテオ。マリアへの殺害予告も、ストーキング目的で無かった?


 コクンと彼は頷く。どうしてもマリアに危機が迫っていることを伝えたかったが、方法がよくわからなかったという。


「俺が悪い。クヌート所長が犯人だ……」

「だったら、私たちに協力して。この証言、白警団のオーレリアンに言える?」


 一瞬、テオは言葉に詰まったが、頷いていた。暗号文、解けたと褒められて嬉しかったんだそうだ。それに一人で抱えているのも辛かったと呟く。


「ありがとう、テオ」


 私は笑顔でお礼を言う。クリスも不本意そうだったが、営業スマイルを見せていた。


 テオは少し泣きそうな目を見せていたが、結局、ハンネスと共にオーレリアンの元へ向かっていた。こちらはもう安心だ。


「問題はクヌート所長ね」

「ああ、証言が得られただけだ。まだ犯人は捕まえられてない」


 クリスと顔を見合わせて頷く。そう、まだ犯人は捕まっていない。しかも相手は論破王だ。油断するにはまだ早い。

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