第37話 みんなでワチャワチャ推理大会です
「さあ、スタテル島へようこそ♪ 遊ぼう、遊ぼう!」
歌カフェのステージは、地元の歌手が手を叩き、歌っていた。リズムカルで可愛い曲だった。二十歳ぐらいの女性だったが、陽に焼け、健康的な雰囲気が眩しい。
あの後、私たち一同はリネット店長の歌カフェにいた。クヌート所長に論破され、気分転換したくなったのもある。
その目論みは成功した。こんな賑やかなカフェにいたら、クヌート所長のことなど全部忘れそう。クリスも手を叩き、マクダやハンネスも声援を送り、ロルフはハミングしていた。みんな笑顔だ。もうクヌート所長の論破など気にしてない。
「私の歌手仲間、マリアはだいぶ元気になってきました。ただ、事件については記憶喪失みたいです。お客さんたち、もし犯人が分かったら、マリアの代わりに捕まえてね」
ステージの歌手はそう言い残し、去っていった。そうだ。気分転換しても事件は忘れてはならない。私の気はしっかりと締まってきた。
その後、次の歌手は体調不良になってしまい、急遽、ステージは中止になった。お客さんたちおもゾロゾロと外に出ていき、結局、客席は私ちだけが残った。
同時にリネット店長も登場し、アイスコーヒーやクッキー、チョコレートなどを振る舞ってくれた。サービスだという。
「城のみんな。アンナもクリスも来てくれて嬉しいよ。事件はまだ終わっていないけど」
そう語るリネット店長。マリアのこと、相変わらず心配らしい。こっそり私にも耳打ちしてきた。私もリネット店長へ小声で進捗を報告。
「まあ、そうなの。だったら、クヌート所長がボロを出すような罠を考えないと。みんなはアイデアあるの?」
リネット店長、そう提案していた。リネット店長はクヌート所長を現場で目撃している。それを思うと、より早く解決したいのだろう。
「ロルフは何かアイデアあるかい?」
リネット店長、ロルフに飴玉を与えて、意見を引き出していた。このロルフは子供みたい。まんまと飴玉につられ、アイデアを語った。
「そうだな。やっぱり推理小説のクライマックスではイベント、パーティーなんかで犯人がボロを出す。そうするか? もう平和祭りは終わったが」
イベントと聞いて、私も何かアイデアが出そうだが、どうも何か引っかかって出てこない。
「ハンネスはどうよ?」
ロルフはハンネスにバトンを投げた。アイスコーヒーを啜っていたハンネス。少し考えて、発言していた。
「そうだな。俺はやっぱり兄のテオも怪しいと思ってる。事実、マリアにストーキングもしてた。そうなると、イベントにテオも呼ぶか、うん」
テオ関連はハンネスに投げても良さそう。
「マクダは何かないのかよ。マクダは頭はいいんだから、アイデア出せよ」
次はハンネスからマクダへ。マクダはずっと無言だったが、ここでようやく意見を言う。
「古城でチェルシーの遺品が見つかったって言えばクヌート所長も来るんじゃない? 実際、チェルシーの私物、けっこう残ってるのよ」
マクダの言う通りならクヌート所長もおびき寄せるだろう。
「でも肝心のイベントは? 今から用意できるものってある?」
リネット店長の指摘はもっともだったが、ロルフが挙手した。
「うちの古城でやればいい。どうせ一階のパーティルームとか余ってるし。うん、俺の誕生日も近いし、そのイベントっていう体でいいわな」
ロルフの提案で古城でパーティし、クヌート所長をおびき寄せる方針で固まった。準備は大変だが、リネット店長や島の歌手たちに協力してもらう。どうにか準備の人数は足りそう。
「イベントはミステリーツアーにしろ」
そして最後にクリスは、偉そうに提案した。
「ミステリツアーって、私が前に作った暗号文の?」
確かクリスと二人、そんな話題もしていたが、まさかここへきて実現?
手に汗が滲んできた。もし、本当にあの暗号文の数々がいかせたら?
「あのクヌート所長、暗号文は得意だと抜かしてきた。だったらアンナ、本格推理作家の本領を見せてやれよ。そんで解読する暗号文、クヌートが犯人というメッセージもいれて困惑させるんだ」
クリス、憮然と言い放つ。どうやら私以上にクヌート所長の発言に怒ってくれたらしい。私はもうなんだか、それだけで救われた気分なのだが。目頭が熱い。
クリスのこと、改めて好きだと思う。些細な約束も守ってくれた。もう私、クリスしか見えない。ロルフなんて全く眼中にない。
こんな様子の私に、ロルフも何か察したのか、大人しい。叱られた子供みたい。クリス発案のミステリーツアーイベントも全面的に協力してくれると約束した。
こうなるとハンネスもマクダも同意した。リネット店長もさっそく島の歌手に呼びかけるという。
「でも問題は暗号文よ。クヌート所長がビビって動揺するぐらいの暗号文、みんなで推理して一緒に作らない?」
私は最後に提案した。確かに自分一人でも暗号文は作れるが、みんなと一緒にワチャワチャ推理しながら作った方が勝てそう。今の私、あの論破王にはないものを持ってる。こうして一緒に事件解決に協力してくれる仲間がいること。一人では論破されるかもしれないが、みんなと考えたら、絶対に勝てそうだ。
「ということでみんな、暗号文作りに協力してくれます?」
私は笑顔で提案した。
「みんなの知恵が必要よ。あの論破王にも絶対勝てる知恵が。私一人では無理だから」
そう言うと、みんなやる気になってきた。さっそくみんなで輪になり、暗号文作りに取り組む。
楽しい。自分一人で暗号文を作っても楽しいが、みんなで知恵も出し合いながら作っていくのも楽しい。これは負ける気がしない。論破王なんかに負けていられないのだ。
「クリス、何だかとっても楽しいわ!」
思わず笑顔で言うと、クリスも吹き出し、気づくとみんなも笑っていた。




