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作家令嬢の田舎追放推理日記〜「推理なんてやめろ」と言われましたが、追放先で探偵はじめます〜  作者: 地野千塩
第3部・スタテル島編

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第26話 賭けより協力しましょう

 私は隠し通路を走り抜け、古城へ舞い戻る。ニ階のダイニングルームの扉を開けると、ロルフがいた。


 ロルフはハンネスとともに優雅にお茶を飲んでいた。窓の外からカモメの呑気な声も響く。


「やあ、アンナ。やっぱり極悪経営者の妻になるのは嫌だったのだろう。だったら、俺の花嫁にならないか? 一緒に本格推理小説のトリックでも考えようじゃないか」


 さっそくロルフは口説いてきた。相変わらずいい声だ。内容も甘ったるいが、無視だ。今はロルフの求愛なんてどうでもいい。


「ロルフ、この城の図書館へ案内して」

「は?」


 思ってもみない提案だったらしい。ロルフはポカンと口を開けていた。せっかくの整った顔も台無し。


「賭けは無しにしましょう。私の極悪婚約者が失礼したわ。その代わり、事件解決のために協力しません?」

「何言ってるんだよ、この成金令嬢!」


 ハンネスはキャンキャンと吠えて邪魔してきたが、無視した。


「この誘拐について文芸誌でエッセイにでもして公表するわ」


 上級国民で罪に問えないというなら、ペンを使うしかない。ペンは剣より強い。だから正しく使えとエドモンド編集長に言われていたが、この場合も、正当な理由だと思う。私は堂々と胸をはり、この茶番のような誘拐劇もネタにして小説にすると訴えた。


「お前、脅してるのか?」


 ハンネスの言葉など無視だ。さらに知り合いの大御所作家や評論家にもこの件を公表すると言ったら、ロルフはあっけなく折れた。ロルフも作家だ。仕事に悪影響があることは避けたいのだろう。


 同時にクリスやマクダも追いかけてきた。再び一同がダイニングルームに集う。ハンネスだけがキャンキャンと吠えていたが、結局、ロルフは図書室まで案内してくれることになった。


 ロルフは舌打ちし、実に不機嫌そうだ。カードゲームに負けた時みたいに癇癪は起こしていなかったが、渋々、二階のダイニングルームの反対方面のある図書室まで案内してくれた。


 古城の北側にあり、薄暗く、窓も小さい。古い紙の匂いがする。本棚には数えきれないほどの本が積まれている。植物や料理などの魔法と関係ない本も多そうだ。これは探しにくそうだが、今度はクリスがロルフを睨む。


「そうだな。お前らの一族、会社も持ってるよな? それも俺の都合のいいように買収していいか?」


 クリスも低い声だ。わざとそんな声を出しているのだろう。目も細め、顎をつり上げ、まさに極悪な顔も見せている。これにはロルフも渋々頷き、ハンネスに古い魔導書をとって来るように指示を出した。


 ハンネスも主人の命令には逆らえないらしい。マクダに手伝ってもらいながらも、すぐに本を抱えてやってきた。


 比較的新しい本もある。古語を解読しなくても読めそうな本から確認するが、百年前の人魚と魔王一族に関する歴史書を発見。


 中身をめくって後悔した。ざっと目を通しただけだが、当時、魔王一族が人魚を乱獲し、かなり残酷に痛めつけていたらしい。その方が魔力が増すと信じられていた。その力で敵国の軍隊を呪ったり、武器の開発もしていたという。


 永遠の命に関する研究もしていたらしい。特に美人、歌声が美しい人魚を殴り殺すことで得られるらしい。噂通りだ。


 確かにマリアは人魚じゃない。しかし、その特徴に当てはまる。それに知能が高い動物の件。そのトップは人間だ。犯人が永遠の命を得るために人間を殺すことを思いついてたしても、不自然ではない? 


 特に犯人は魔法やオカルトに傾倒していたら、全く不自然じゃない。それに切実に願いを叶えたい事情もあったかもしれない。判断力を失って、魔法に頼ろうとしまうこと、普通にありえそうだ。


「しかし魔法って残酷ね。今だにこんなものを美化したり、実験しているのが信じれない」


 あえてロルフの目を見ながら言うと、彼はシュンとしていた。


「アンナの言う通り。もう魔法なんてないよ。真っ当に生きてほしいものね」


 マクダににもはっきりと指摘され、ロルフは絞られた雑巾みたい。


 一方、クリスはニンマリと笑っていた。相変わらず性格が悪そうだが、動機がわかっただけで、まだ犯人がわからない。ここで笑うのはまだ早い。


 おそらく犯人は魔法やオカルトに傾倒していた人物だ。こんな魔導書なども持っているような。一体誰だろう。


「そうね。島でのオカルト好きは、リーザね。この島の魔法戦争時代の資料館の学芸員だわ。リーザが犯人じゃなくても、魔法やオカルトの話題だったら、何か知ってるんじゃ? 資料館の方が極秘の本とかもあるんじゃないかな?」


 マクダから良い情報を得た。さっそく資料館へ行くとしよう。そういえば資料館の館長もテオのアリバイに関わってると聞いた。テオの件も何かわかるかもしれない。これも一石二鳥で捜査できるじゃないか。


「よし、アンナ。行くぞ」

「ええ、クリス。行きましょう」


 クリスと共に古城を後にした。ロルフも行きたがっていたが、仕事の締め切りが近いらしい。ロルフと協力するのはここまでだ。


 とはいえ、だんだんと事件の手がかりが集まってきている。犯人がわかるまで、あと少しだ。そんな気がする。

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