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作家令嬢の田舎追放推理日記〜「推理なんてやめろ」と言われましたが、追放先で探偵はじめます〜  作者: 地野千塩
第3部・スタテル島編

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第21話 新たな事件!?

 夜の病院は静かだ。ロビーは薄暗く、私、クリス、ロルフ、マクダ以外は誰もいない。遠くの方で足音や声もし、急患が出たようだが、すぐに静かになってしまう。


 ロビーの壁にはいくつかポスターが飾られていた。魔法戦争時代、この病院は魔法を拒否し、迫害されていたらしいが、当時、周辺の敵国の攻撃を受け、怪我を負った島民の治療に尽力し、今もその功績が讃えられているという。王都に負けないぐらいの医療技術もあるそう。魔法戦争の不幸中の幸いだったが、私はそんなポスターを眺めながら、ため息が出てきた。今は、魔法戦争とか歴史とかは関係ないから。


 あの後、マリアをこの病院まで運んだ。医療スタッフの尽力により、マリアの怪我は速やかに治療された。全治一週間だという。ただ、マリアの精神的ショックもひどく、記憶消失にもなってしまった。意識は戻ったが、犯人については何も知らないと語っているらしい。


 医療スタッフによると、何者かに殴られた可能性が高いらしい。傷跡から自害や事故の可能性は限りなく低い。ちょうど後頭部を狙っている。明確な殺意をもって狙われた可能性も高いという。


 そんな話を聞いた私たち。全く笑えない。殺害予告も届いていたのに、防げなかったことが悔しい。もうポスターを見るのをやめた。下を向いてしまう。ハンネスやロルフも黙りこんでいた。


「でも誰が犯人? あの人魚みたいな歌手が犯人? マリアも歌手よ。マリアは人気者だし、あの歌手が嫉妬して殴った可能性あると思わない?」


 この中で一番冷静なマクダがつぶやく。確かにその通りだ。状況からいってあの歌手と関連はありそうだ。


「人魚がマリアを殴った?」

「おいおい、マクダ。そんな事はないぞ。もう人魚は絶滅している」


 クリスのツッコミにマクダも黙り込んでしまったが、私は頭の中で推理していた。


 動機から見るとテオが一番怪しい。実際、殺害予告まで送りつけている。が、現場に人影はなかった。本当にテオが犯人?


 一方、あの歌手は状況的には犯行が可能。ただ、動機が不明だ。それに歌った後に犯行に及ぶのも意味が通じない。目立つような振る舞いはリスキーすぎる。それに歌手は女だろう。女が暴行という手段をとるだろうか。


「人魚かもしれない。人魚の幽霊だ。俺のご先祖様の恨みで、呪ってきたんだ」


 ロルフは勝手にホラー風推理をしていたが、そんなバカな話はない。さすがのハンネスも、こんなロルフに付き合えきれない様子だった。黙りこくっていた。


「まー、どうせ犯人はうちの兄だろ。テオ兄さんだ。嫌だね、女が手に入らんからって力づくで殴るとか」

「おお、テオ。その通りだ。お前の主人も女を誘拐し、自分のものにしようとしてたがな?」


 ここでクリス、ロルフにチクチクと嫌味を言い、また二人で野良猫みたいに睨みあっていた。


「ちょっと、二人とも。喧嘩はやめて」


 私がそう宥めた時だった。ここのロビーにオーレリアンがやってきた。


 そういえばここの医者が通報し、オーレリアンもやってきた。彼も医者から事情を聞いていたが、すっかり彼の存在を忘れていた。メガネをかけた顔は嫌味っぽく、相変わらず大股でドスドスと歩き、偉そうな雰囲気だ。


 といっても今日は少しバツが悪そうだ。医者にちゃんと捜査するよう怒られ、今からテオを捕まえに行くんだそう。


「状況からみてテオが関わってるだろ。くそ、面倒なことになった。しかもまた成金令嬢と極悪経営者か? まったく、血筋も悪いくせに目障りな連中だな」


 そんなオーレリアン、私たちに気づくと、嫌味を言ってきた。予想通りだが言い返すのも面倒。


「オーレリアンさん、うちの兄のテオが犯人だろ。いいから捕まえてくれよ。あいつは劣等生で一族のいい恥だからな」

「あー、もううるさい! わかったよ、テオを捕まえればいいんだろ!」


 オーレリアンはハンネスにまでに八つ当たりし、一人で病院を出て行ってしまった。


 一応、これで殺害予告からマリアへの暴行事件は解決か?


 それでも何かスッキリしない。喉に魚の骨がひっかかった感じだ。テオは怪しいが、どうも違う気もする。証拠はない。単なるカンとしか言いようがないが、あの謎の歌手も気になる。


 ロルフやハンネス、マクダも古城へ帰ってしまったが、残った私は考えていた。これは本当にテオが犯人かわからない。それにあのオーレリアンも頼りない。このままあの男に全部捜査を任せるのは、大いに不安だ。アサリオン村での顛末も思い出すと、不安しかない。


「まだ事件は続いている気がする」

「だろうな、アンナ」


 隣にいるクリスも頷いていた。


「人魚は事件に関係あるかしら?」

「さあ、でも俺だってクヌート所長のように非科学的では無いことは嫌いだ」


 クリスは腕を組み、壁のポスターを見上げていた。


「魔法もない。幽霊も事件関係ない。ロルフがいうように、人魚の幽霊なんて絶対に関係ない」

「それってロルフの推理への対抗心?」


 そう思うと、今のクリスって子供みたい。ムキになってる。でも、そんなクリスの一面を知るのも面白くなってきた。


「ええ。事件に魔法も幽霊も関係ないわよね。犯人はファンタジーなトリックは使ってない!」

「その通り。だったら俺らも、正攻法で犯人を捕まえようではないか」

「もちろん!」


 こんな状況なのに、クリスと二人で笑ってしまう。そうだ、この事件も魔法や幽霊なんか関係ない。人の頭脳だけで解けるはず。希望が出てきた。一刻も早く推理したくてたまらない。

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