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第八話

 アスランのお前絶対優勝しろよ宣言から速くも一カ月が経ち、本日は魔法競技大会。

 絶対負けられないこの試合、私は今緊張してるわけでもなく本番に向けてのシミュレーションをしているわけでもない。

 ただ__。


「お、おい大丈夫か?」


 腹痛に苦しめられています。


「うん大丈夫。多分」

「最後に多分をつけるな、余計心配になってくるだろう……今日の魔法競技大会大丈夫なのか?」


 だいじょばないかもしれない。まさか昨日の夜こっそり残しておいた間食があたるだなんて……面目ない。

 でも美味しかったから後悔はない。ただ食べなきゃ良かったって思ってるだけ。


「……至急医師を呼ぼう。今日の魔法競技大会、お前は休め」

「絶っ対にそれだけは嫌」

「お願いだ。俺は他の女と関わるなんてまっぴらごめんだが、それと同様にお前が苦しめられるのもごめんだ」

「……はぁ。本当は本番用に魔力残しておきたかったんだけどな……詠唱省略 光魔法 治癒(ヒール)


 さっきまで痛かったお腹が嘘みたいに痛くなくなった。

 やっぱり魔法や力は偉大ですなぁ。


「……そういえばお前は光属性の適合者だったな」

「今頃?動揺し過ぎなんじゃないですか?(笑)」

「するに決まっているだろう……」

「え?」

「好きな奴が苦しんでいたら、心配するに決まっているだ……う」


 アスランは照れているのか、最後の方は声が小さすぎて良く聞き取れなかった。だが、それで十分だ。

 伝えようとしてくれた事はわかった。

 ……正直、この可愛い婚約者を独り占めしたいだなんて思うのは欲張りすぎだろうか。


「うん、ありがと」

「あぁ。気にするな」


「じゃあ勝ちにいきますかー」

「魔力は大丈夫なのか?」

「私が治癒(ヒール)の魔力消費量ごときで足りないかも……なんて思うわけないじゃん」


「相変わらずの莫大魔力貯蔵機だな」

「せめて庫っていえ!」

「貯蔵庫も貯蔵機も変わらないだろう」

「貯蔵庫の方が可愛いでしょ」


「あ、あぁ。そうだな……今度一緒に心の医師に来てもらおう」

「おい、失礼やぞ」







 魔法競技大会本番。


「__お次は一年B組のライナさんです!」


 呼吸は順調、頭の中もクリア。

 いつもだったら目立たないようにとか、身バレしませんようにとか考えているのに不思議と落ち着いてる。

 観客席にいるアスランと目が合う。

 余裕の笑みを浮かべてこっちをみてる……多分あれはお前なら余裕だ、の表情かな。

 噂によるとアスランは優勝したらしい。それなら心配は要らないね。嫌、元々あの天才皇太子様の心配だなんて杞憂なのかもしれない。


 あとは私が勝つだけだ。


「詠唱省略 神秘魔法 聖龍(スペサルティン)


 会場を埋め尽くすほどの一体の黄金色の龍。

 辺りが息を呑む音がする。そりゃそっか綺麗だもん。

 あぁ、普段ならこんなこと絶対やらないのになぁ。……でも、あいつのお願いなら、しょうがないよね。


「詠唱省略 暗黒魔法 暗黒龍(オブシディアン)


 さっきの龍と同じ大きさの漆黒の龍が一体。

 まだまだ……もっと!


「詠唱省略 植物魔法 翡翠龍(セラフィナイト)


 次は翡翠色の龍。さっきまでうるさかった会場は嫌に静かだ。

 でもそんな事を気にする余裕なんてない。


「詠唱省略 空間魔法 亜空龍(アクロアイト)


 ……純白の龍。成功だ。正直、魔力が足りるかどうか不安だったが……大丈夫そうだ。


飛べ(交われ)


 私の合図と共に空に向かっていくそれぞれの龍。

 違う属性同仕の龍たちがぶつかり合って、絡み合って、天に登って行く。


「次の姉妹校交流会での魔法はアスランと一緒にこれをやるのもいいな」


 そんな未来についての想像をしながら、私は静かに龍たちに見惚れていた。








 魔法競技大会終了後。


「凄い魔法だった。あんなものが使えるなら最初から言ってほしかったな」

「いやだよ、目立つじゃん」

「もう十分に目立っているぞ……優勝おめでとうルピシア」

「……ここではライナだっていってんだろ」

「あぁ、すまない」

「それにしても、あの魔法お前のオリジナルだろう?」

「あぁ、あの飛べ(交われ)ってやつ?綺麗だったでしょ」

「あぁ、とても綺麗だった。だが、俺はお前のほうが綺麗だと思っているぞ」

「あっそ、目腐ってんじゃないの」


「それで、他の生徒の反応はどうだったの?」

「お前がルピシアだと気付く様子はなさそうだ。今のところ噂もなさそうだ」

「そっか……まぁ、そんな噂が流れそうになってもどうにかしてくれるんでしょ?」

「あぁ、俺を誰だと思ってる?この国の皇太子だぞ?」

「ちなみに私はその寵愛を受ける人でーす」


 一瞬目を丸くしたアスランは、次の瞬間には嬉しそうに笑って、


「そうだな」


 と意味のわからない答えを返していた。……動揺してるのがバレバレだっての。

 そういうところも好きなんだけどね。

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