第五話
あぁ……憂鬱だ……。なぜこんな陽キャしかいない空間にいなきゃならないんだ。私も仲間たちのいる聖域に行きたい……。
「こうやって食べながら歩くは久々だな。昔、城下町に行った時二人でこぼしながら歩いていたのを覚えているか?」
「忘れるわけないでしょ」
「……そうか」
「食べ物こぼしちゃった……って言いながら泣きそうになってたアスラン腹筋ちぎれるほど面白かった!忘れるわけないよ!」
「その記憶は今すぐに消せ」
絶対にけさな〜い。今ではあのかわい……面白い顔も見れないのが残念だな。
「あっ!あそこの屋台はあの有名な伯爵家の屋台ですわ!」
「その右隣の屋台のシェフ……最近噂の凄腕シェフではなくて?」
みんな楽しんでるな〜。顔見ただけで誰とか分かるのさすがとしかいえない。
「その隣は……なんですの、あれ」
「仮面……?あんなものを被るシェフを召しかかえた貴族がこの学園に……?」
仮面……?ふざけたシェフもいるんだな(笑)一体何処の貴族が召し抱えたシェフだ?
えーっと、1年B組?同じクラス……そんな面白そうなシェフがいる家なんてあったか……?えーっとライナさんのところか。へぇ……ん?
え、いや、ちょっと待て?
「お前のシェフは随分面白いな……」
「我慢してるつもりなのか分からないけど震えてるの見えてるからね?」
私もまさかあんな格好で来るとは思わなかったの!たしかに目立たないようにしてって言ったよね?なにしてんの?!
「顔を隠せば目立たないとでも思ったんじゃないか?」
「たしかにそんな事を思いつきそうなバカだけど……」
「まぁいいだろう。どうせ顔を隠さなければバレるのだ。あのシェフ、近隣の国でも名前を出せば皆分かる超有名シェフではないか」
「まあたしかに目立たずに顔も見せるなとは言ったけど……。裏に回るかと思うじゃん」
「そうだな……」
「だか、笑いを隠すのやめてくれない?!バレバレだから!余計傷つくの!」
「まぁ、今日は気にせず遊ぼうではないか。一年に一回しかない文化祭だぞ?」
……それもそうか。じゃあなにか面白そうな物行きたいなー。……あ、いいの見っけ!
「じゃあこれ入りたい」
「そういえばさっき面白いものを見つけたのたが……」
「多分それがこれだね!行こっか!詠唱省略顔変え。すいませーん入りまーす」
「お二人様ですねー。中暗いので足元を注意してお進みください。それではゴーストの館に行ってらっしゃい」
「はーいありがとうございまーす」
(こんな人学園にいたっけ?)
「……俺がゴーストを嫌いな事を知っていての行動か?」
「なんのことかな?」
「確信犯だなこれは」
はいはい。つべこべ言わずに行きますよー。渡された地図をみるには、まっすぐ進むだけか。これだけなら地図いらなくない?
「……本当に行くのか?」
「はいはい怖がらなくても私がそばにいるから」
「今度そのセリフを使わせてもらおう」
「学園祭のゴーストの館程度で怖がってる皇太子様は一生使うことなさそうだね」
「……そうだな」
ごめんて。謝ったからゴーストさえ逃げ出しそうな形相でこっち睨むの辞めようよ。
「結構暗いね」
「そろそろでてきそうだな」
「ぅ゙わ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!呪ってやる……」
「怖いなら手、握る?」
「あぁ、頼む」
「……え?シカト……?」
「私……キレイ?」
「そういえば今日はいつもと化粧が違うな。似合っている」
「ありがと」
「私はぁ゙……?」
「ガガガがガガガッ……グガッ……ニンゲン……クウ」
「そういえばそのネックレス……私があげたやつじゃない?」
「あぁ。気に入っているぞ」
「昔二人で城下町に抜け出した時に買ったものだから安物だよ?」
「お前からもらった物なんて金じゃ表せないほどの価値があるぞ」
「ラブラブ……ウラヤマシイ……スコシハ……コワガレッ」
「お疲れ様でしたー。ここで終わりです。何回来てもいいのでまた来てくださいねー」
「……え?終わり?……ゴーストなんていた?」
「いなかったと思うが……」
「だよね?いたら泣き叫んでるもんなぁ」
「叫びはしない。ただ静かに泣くだけだ」
「格好いい感じにいってるけどそれ怖すぎて声でないだけでしょ」
「まぁ、そうとも言うな」
もしかしてここのゴーストの館詐欺だったかな?こわいって評判って聞いたんだけど……オタク仲間に。デマ流された?
「さぁ、次は何に行く?」
「とりあえずお前が怖がりそうな物だな」
「よしもう一回ゴーストの館行くかぁ」
「すまなかったからやめてくれ」