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第三話

 優雅な昼休み。ここからは人の一人も見えないが声を聞く限りみんな悠々自適な楽しい昼休みを送っているんだろう。

 ……この空間を除いては。


「……お願いだ」

「無理」

「頼む」

「無理」 

「皇太子の頼みでもか?」

「無理」

「愛する婚約者の頼みで……」

「無理」

「まだ言い終わってないんだが……」


 自分で愛する婚約者って言えるの凄いよ……否定はしないけど。


「そういえば、この間ほしいと言っていた恋愛小説を店側が準備できたと言っていたな……」

「それって……あの私の推し作家様の一番人気恋愛小説の限定版?!」

「そうだ。……一人では寂しいから一緒に取りに行ってくれないか?」

「上目遣いで見られても……正直可愛いくて困るからやめてほしい」

「ほぅ……お前の方が可愛い事をまだ自覚しないか」

「よろしいならば戦争(クリーク)だ」

「それは受けて立つが……どうしても駄目なのか?」

「どうしても駄目!城下町に行くなんて絶対駄目!」


 たしかに城下町に遊びに行きたい気持ちはある。二人でってとろこも魅惑的たけど……。

 もしこんな私が噂の皇太子の婚約者だってバレたら……。やばいやばい考えただけで鳥肌が……。


「そもそも!目立つから学園の中でも話すなっていったのに泣きついてくるから昼休みだけ許したんだから」

「泣いてない。目から塩水を流しただけだ」

「それを泣くっていうんだけど」

「……」


 無言やめようか?もうそれ肯定してるのと同じだからね?

 あと見るからに拗ねるのやめて?


「……わかったから拗ねないで」

「……!行ってくれるのか?」

「あからさまに元気出たね」

「この国の皇太子が拗ねるわけないだろう」

「拗ねると少しほっぺ膨らむの知ってる?」

「……知らないのだが?」

「……知ってたら怖いわ」


 毎回拗ねる時鏡見てんの?ってなるわ。


「日程は明日だ。遅れるなよ?」

「遅れたことないでしょ」

「……空間魔法での偽装は?」

「……三回しかやってない」






「……待ったか?」

「大丈夫!一時間前に来たところ」

「……待たせてすまない」


 ソンナコトナイヨ!っ言いたいところだけど……。


「まだ集合時間の一時間前なんだけどね」 

「本当は三時間前に来るつもりだったんだが……急に用事ができてな」

「皇太子も大変だねぇ」

「それほどでもない」

「じゃあ今日は疲れた皇太子様を私がエスコートして差し上げよう」

「前、散々な目にあったから大丈夫だ」

「あれ?」


 まさか断るとは……思いもしなかった。


「じゃあ、とりあえず……予約してくれてた本取りに行こっか!」

「……そうだな」

「どうしたの?そんなゴブリンがご飯取られたみたいな顔して」

「一国の皇太子に向かって失礼じゃないか?」


 そうかな?これ以上ないほどの適切な例えだったんだけど……。いいじゃんゴブリン、私だったらブチギレるけど。


「……俺と二人で出掛ける(デートする)と決まった時よりも、本を取りに行く時の方がいい笑顔だったのが複雑だっただけだ」


 気にするな、と拗ねながら歩き出されても……。……しょうがない。こういう時は本当の事を言った方が良いって昔から決まってんのよ。

 ……調子に乗りそうだから本当は言いたくないんだけど。



「別にさ、二人で出掛ける<好きな本を取りに行く……ってわけじゃなくて、好きなものを好きな人と一緒に取りに行くっていうのが好きなの」

「……そうか」


 あと今回の限定版恋愛小説のキャラにアスランみたいなキャラがいたから、いつもより楽しみにしてた……はこいつが"絶っ対"調子に乗るから言わないでおこう。


「やはり、お前は俺のことが大好きだな」

「うわー自意識過剰……」

「違うのか?」

「違わないけど」

「なんでちょっとキレているんだ」


 やっぱ言わなきゃよかった。

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