第二話
キーンコーンカーンコーン。
鳴った!!詠唱省略 空間魔法《一時停止》!
よしよし。こうやって時間を止めてあいつが言ってた場所に向かえば……優雅に歩いてむかっても私が先に着ける!今回は俺のほうが遅かったみたいだなって言われてやる!
今日こそ私の勝ちだ!ふははははははは!
だが、わたしの思いとは裏腹に約束の場所にはわたしの婚約者がいた。なぜ?
「……《一時停止》解除》」
「……ん?今日は随分と速かったな俺の10分後に来るなんてな」
……解せぬ。
「なんで私より先にいるのよ……」
「誰かが超上級魔法を使う気がしたのでな。魔法無効化を使って、少し急いで移動した。……校内での超上級魔法は禁止だが?」
「魔法無効化も超上級魔法ですけど?」
「俺はこの国の中心だからな。何をしても許される」
「何その糞仕様」
「この国は俺を中心に動いている」
「どっから来るのその自信」
なんでこんなやつが次の皇帝に選ばれたのかか……。意味がわからない。
「今日の昼食も美味そうだな」
「そりゃどーも」
「また自分で作ったのか?」
「うん、だけどメイド長にお辞めくださぁぁぁぁいって叫ばれた。」
「料理などシェフにやらせれば良いものを、なぜ自分で作るんだ?」
「そりゃあ……将来作ってあげたいじゃん」
「両親にか?それはきっと喜ばれるぞ」
ひょいっと私の昼食からコカトリスの卵焼きをとっていく私の婚約者。せめてサラダとか持っていってほしかった。楽しみにしてたのに……。
「なにせこんなに美味なのだからな。俺にも作ってくれると嬉しい」
「許した」
「なにを?」
それともう一つ。
「作ってあげたいの、両親じゃない」
「……?じゃあ誰だ?お前に両親以外の知り合いなどいたか?」
「知り合いくらいいるわ……友達がいないだけで」
「……」
やめろ。哀れむような目をするんじゃない。悲しくなるからせめて何かいってくれ。
「私が作ってあげたい人はきまってるから……将来私の作ったご飯残したら許さないからね」
「……不意打ちはずるくないか?」
「何がずるいのかわかんないけど、喋りにくいから上じゃなくてこっち見て?」
「……わかった」
いや切り替え早いな?……毎回思うけどこの人の目綺麗だな……ってなにを見惚れてるの私は!
「……こっち見ないで」
「こっちを見ろと言ったのは何処の誰だ?」
「はいはい、すみませんでした!離れてください!」
「それはできない相談だな」
なんでだよ。ここ広いからもっとそっちいけるでしょ。
「くくっ……わかった、離れるからそんなに睨むな。もっといじめなくなるだろ」
「うわ。急なドS発言。キツイわー」
「生まれて初めてこんなに心が傷ついた」
「やったー!うれしくない初めてもらっちゃった」
「最初と後の言葉が矛盾してるのだが?」
「あはっ。……そろそろ時間だ」
「本当だな。お前と一緒にいると時間が過ぎるのが本当に早い。」
「あ、もしかして私無意識で魔法使っちゃってるかもー」
「なんで一緒にいると楽しいって意味が伝わらないんだ?」
「わざとに決まってるでしょ」
「性格わるすぎないか?」
元々こんなんですー。
「じゃあ明日もここね」
「仕方ないな。特別だぞ」
「ワーイトッテモウレシイー」
「今日お前の寮の部屋にあふれんばかりの花をプレゼントしとく」
「嫌がらせのやり方が汚い」
「綺麗だからいいだろ?しかもこの時期は花粉がとても飛んでいるしな。国一番の花の花粉を楽しむが良い」
「その影響を受けやすい婚約者の部屋にあふれんばかりの花をプレゼントするのって結構な嫌がらせじゃない?」
「あぁ、悪意100%だ」
この人、いじめの才能あるわ。……後で部屋に忍びこんでキッチンによくいる"あいつ"を部屋のなかに10匹ほどぶちまけよう。
「今とてつもない寒気がしたんだが……」
「気の所為!気の所為!」
「こんなに速く犯人が分かることってあるんだな」