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三国志演義

三国志演義・乱世の黎明~蒼天已死~

作者: 霧夜シオン
掲載日:2025/02/22


声劇台本:三国志演義・蒼天已死(そうてんすでにしす)~乱世の黎明(れいめい)~


作者:霧夜シオン


所要時間:約20分


必要演者数:最大7人

      6:1

      7:0


はじめに:この一連の三国志声劇台本は、

     故・横山光輝先生著 三国志

     故・吉川英治先生著 三国志

     北方健三先生著 三国志

     王欣汰先生著 蒼天航路

     Wikipedia

     各種解説動画

     正史・三国志

     羅貫中(らかんちゅう)著 三国志演義

     の三国志系小説・マンガや各種ゲーム等に加え、

     【作者の想像】

     を加えた台本となっています。

     またこの作品でこのキャラが喋(しゃべ)っていた台詞を他のキャラが

     喋(しゃべ)っているという事も多々あります。

     なお、人名・地名に漢字がない(UNIコード関連に引っかかっ

     て変換表示できない)場合、誠に遺憾(いかん)ながらカタカナ表記と

     させていただいております。

     また、役の性別転換は基本的に禁止とさせていただきます。

     名前のない武将たち(例:〇〇軍部将や〇〇軍兵士など)

     が性別不問なのは、過去の歴史においていないわけではない

     、いたかもしれない、という考えに基づくものです。


     ある程度ルビは振っておりますが、一度振ったルビは同じ、

     または他のキャラに同じのが登場しても打っていない場合

     がありますので、注意してください。


     上演の際はしっかり漢字チェックを行い、

     【決してお金の絡まない上演方法】でお願いいたします。


     なお、古代中国において名前は 姓、諱(いみな)、字(あざな)の3つに分か

     れており、例を挙げると諸葛亮孔明(しょかつりょうこうめい)の場合、諸葛(しょかつ)が姓、

     亮(りょう)が諱(いみな)、孔明(こうめい)が字(あざな)となります。

     古代中国において諱(いみな)を他人が呼ぶのは避けられていた為、

     本来であれば諸葛孔明(しょかつこうめい)、もしくは単に字(あざな)のみで孔明(こうめい)と記載

     しなければならないのですが、この一連の三国志演義台本

     においては姓と諱(いみな)で(例:諸葛亮)と統一させていただき

     ます、悪(あ)しからず。


     長くなりましたが、以上の点をご理解いただけた上で

     演じてみたい、と思われた方はぜひやってみていただけれ

     ばと思います。


●登場人物


張角(ちょうかく)・♂:字(あざな)は伝わっていない。

     冀州(きしゅう)・鉅鹿郡(きょろくぐん)の出身で、郷土(きょうど)の者からは稀世(きせい)の秀才と呼ばれて

     いる。

     腐りきった後漢(ごかん)王朝の支配体制に嘆(なげ)く日々を送っていたある日、

     一人の老人と出会う。その日から彼の運命は変わった。


張宝(ちょうほう)・♂:字(あざな)は伝わっていない。

     張角(ちょうかく)の弟。兄と共に腐敗(ふはい)した世の中を憂(うれ)いている。

     兄・張角(ちょうかく)が南華老仙(なんかろうせん)から書物を与えられ持ち帰ったその日

     から、兄と共に知識を身につけ、救世(ぐぜ)の志(こころざし)を育てていく。


張梁(ちょうりょう)・♂:字(あざな)は伝わっていない。

     張角(ちょうかく)兄弟の末弟。

     二人と共に堕落(だらく)し切った漢王朝(かんおうちょう)の支配する世を改めたい

     と願っている。張角(ちょうかく)が太平要術(たいへいようじゅつ)の書を得たその日から、

     彼と共に救世(ぐぜ)への行動を起こす。


南華老仙(なんかろうせん)・♂:張角(ちょうかく)が山の中で出会った人物。

       太平要術(たいへいようじゅつ)の書(しょ)三巻と忠告を彼に与え、雲と化して飛び去る。


民1・♂:


民2・♀:


民3・♂♀不問:


民4・♂:


民5・♀:


民6・♂♀不問:


方将(ほうしょう)1・♂:


方将(ほうしょう)2・♀:


方将(ほうしょう)3・♂♀不問:


方将(ほうしょう)4:♂♀不問:


ナレ・♂♀不問:雰囲気を大事に。



※演者数が少ない状態で上演する際は、被らないように兼ね役でお願いします。


おおよその役割あてになります.


●キャスト例

※ナレ男性版

張角:(34)

張宝:(25)

張梁:(25)

南華老仙・方将4:(11+3)

民1・民4・方将1:(3+7+3)

民2・民5・方将2:(2+7+3)

民3・民6・方将3:(2+7+3)

ナレ:(11)


※ナレ女性版

張角:(34)

張宝:(25)

張梁:(25)

南華老仙:(11)

民1・民4・方将1:(3+7+3)

民2・民5・方将2:(2+7+3)

民3・民6・方将3:(2+7+3)

ナレ・方将4:(11+3)


――――――――――――――――――――――――――――――――――



ナレ:高祖(こうそ)・劉邦(りゅうほう)が西楚(せいそ)の覇王(はおう)・項羽(こうう)を滅ぼし打ち立てた、前漢王朝(ぜんかんおうちょう)。

   王莽(おうもう)によっていっとき途絶(とだ)えはするものの、光武帝(こうぶてい)・劉秀(りゅうしゅう)が新たに

   後漢王朝(ごかんおうちょう)を打ち立てて以降、その平和は長きにわたって続いていた。

   争い無き世は文化の成熟を促(うなが)すが、同時に乱世へ至る火種(ひだね)をも密(ひそ)かに

   育てていく。


   宦官(かんがん)の権力掌握(けんりょくしょうあく)

   暗愚(あんぐ)な傀儡皇帝(かいらいこうてい)

   金品で官位売買(かんいばいばい)


   後漢王朝(ごかんおうちょう)は末期(まっき)を迎えていた。

   中国黄河以北(ちゅうごくこうがいほく)、冀州(きしゅう)の鉅鹿郡(きょろくぐん)。

   この地に無名ながらも稀世(きせい)の秀才と郷土(きょうど)の者から讃(たた)えられる、一人の

   男がいた。

   名を、張角(ちょうかく)という。


張角:…漢(かん)帝国の腐敗(ふはい)は年を追うごとに進んでいく。

   我らはこのまま、何もできずに老(お)いていくのか…?


張宝:都・洛陽(らくよう)の朝廷(ちょうてい)じゃ、十常侍(じゅうじょうじ)とかいう宦官(かんがん)どもが好き放題やってるっ

   て話じゃねえか!

   兄者(あにじゃ)、このままじゃこの世はどうなっちまうんだ!?


張梁:兄上の苦悩(くのう)、お察しします。

   せめて我らに力があれば…。


張角:…山へ、薬草を採(と)りに行ってくる。


張宝:!ッ兄者! こんな時に山などと…!


張梁:張宝(ちょうほう)兄(あに)、張角(ちょうかく)兄上は山の空気に触(ふ)れたいのであろう。

   …兄上、お気をつけて。


張角:うむ…留守(るす)を頼む。


張宝:……。


張梁:張宝(ちょうほう)兄(あに)、我らは家の事を片付けておきましょう。


張宝:…ああ。


ナレ:腐敗(ふはい)しきっている世の中に対し、歯嚙(はが)みしている者、憂(うれ)える者は、

   張角(ちょうかく)とその兄弟を含め大勢いた。

   その日も悶(もんもん)々と悩みぬいたあげく、彼は薬草を求めてひとり、山へ

   分け入った。


張角:…山の空気は心が鎮(しず)まる。

   だが、今日は妙に霧が濃いな…。


   【三拍】


   むぅぅ、霧がどんどん濃さを増してくる…!

   いかん、このままでは道に迷ってしまう。

   急ぎ下山(げざん)せねば――


南華老仙:張角(ちょうかく)よ。


張角:うっ!?

   わ、私の名を呼ぶのは誰だ!?


南華老仙:張角(ちょうかく)よ、そのまま道なりに山を登って参れ…。


張角:! 霧の中でも道だけが…!

   ……。

   行って、みるか。


ナレ:濃霧(のうむ)の中、自分を呼び招く声に従い、張角(ちょうかく)は山を登り始めた。

   足元の道以外、周りは白色(はくしょく)の霧(きり)に閉ざされている。

   どれほど歩いたか、やがて平(たい)らな場所に出た。


張角:坂道が平(たい)らに…登り切ったのか…?

   !!

   うっ、こ、これは、霧が吹き払われて…!?


南華老仙:よくぞ、ここまで参ったな。


張角:(…この神韻(しんいん)漂(ただよ)い、藜(あかざ)の杖をついた姿…もしや、仙人では…?)

   あ、あなた様は…?


南華老仙:我は南華老仙(なんかろうせん)なり。

     救世(ぐぜ)の心を持ちながらも力足らず、日々悩める者、張角(ちょうかく)よ。

     汝(なんじ)を待つこと久(ひさ)しかったぞ…。


張角;(や、やはり…!)

   しかし南華老仙(なんかろうせん)様、俗人(ぞくじん)である私に仙人であるあなた様が、いったい

   どのような用があって…?


南華老仙:我ら俗世(ぞくせ)の外に住まう者は、俗世(ぞくせ)に直接は関われぬ。

     乱れを正し、闇を払い、救世(ぐぜ)の光をもたらすのは、同じ俗世(ぞくせ)に住

     まう者でなければならぬのだ。

     姜子牙(きょうしが)の故事(こじ)は、汝(なんじ)も知っていよう。


張角:姜子牙(きょうしが)…もしや! かの太公望(たいこうぼう)呂尚(りょしょう)の事でございましょうや?

   

南華老仙:しかり。

     彼(か)の者と同じ役割を果たすのだ。

     さあ、これへ参れ。


張角:は、はい…!


ナレ:背を向けて洞窟(どうくつ)へ入っていく南華老仙(なんかろうせん)の後に張角(ちょうかく)が続くと、さほど広

   くない内部の奥には小さな机が置かれ、上に乗せられた三巻の巻物が

   灯火(ともしび)に淡(あわ)く照らされていた。


南華老仙:汝(なんじ)にこの「太平要術(たいへいようじゅつ)の書」三巻を授(さず)ける。


張角:太平(たいへい)…要術(ようじゅつ)の書…!

   これは、いかなるものでしょうや?


南華老仙:天下国家を安泰(あんたい)へ導く為の法が記(しる)されたものである。

     汝(なんじ)はこの書をよく修(おさ)め、俗世(ぞくせ)の混乱を鎮(しず)め、腐敗(ふはい)を除(のぞ)くのだ。


張角:はっはい!!

   お導きに従(したが)い、泰平(たいへい)への道を興(おこ)し、民に善を施(ほどこ)しまする!


南華老仙:ただし、その書の力に酔うて我欲(がよく)に溺(おぼ)れ、悪(あ)しき心を起こす時、

     天罰たちどころにその身を滅ぼすであろう。


張角:ははぁーーーっ!

   必ずや、苦しむ民達の為に書(しょ)の力を使いまする!


南華老仙:ゆめゆめ、忘(わす)るるなかれ。


ナレ:言い終わると同時に、南華老仙(なんかろうせん)の姿は一颯(いっさつ)の白雲(しろくも)となり、その場から

   飛び去った。

   茫然(ぼうぜん)とそれを見送った張角(ちょうかく)はふと、周りの景色を見回して愕然(がくぜん)とする

   。


張角:!? うっ、こ、これは!?

   我が家の前ではないか!

   ゆ、夢…? い、いや、太平要術(たいへいようじゅつ)の書(しょ)がこの手にある…。

   現実だったのだ…。


張宝:兄者、どうしたんだ?

   家の前でぼんやり突っ立って…。


張梁:大声が聞こえたので出てみれば…兄上でしたか。

   ? おや、その巻物は…?


張角:…二人とも、話がある。

   奥へ行こう。


   【三拍】


   …座ってくれ。


張宝:いったいどうしたってんだ、兄者?


張梁:その手に持っておられる巻物と何か、関係が…?


張角:うむ。


   【二拍】


   実はな、山の中で仙人様に逢(あ)ったのだ。


張梁:!? なんと…!


張宝:ほ、本当か、兄者!?


張角:そのお方は南華老仙(なんかろうせん)と名乗られた。

   お前を待つこと久(ひさ)しかったと、世の中の混乱と腐敗(ふはい)を鎮(しず)めよと、

   そう仰(おお)せられた。

   そしてこの太平要術(たいへいようじゅつ)の書(しょ)三巻を授(さず)かったのだ。


張梁:おお…兄上が、この乱れ切った世を救う為に選ばれたのですね!


張宝:すげえ、すげえよ兄者!


張角:私はただちにこの書の教えるところに従って行動を起こすつもりだ。

   お前達はどうする?


張梁:兄上、それは聞くまでもないことです。

   そうですよね? 張宝(ちょうほう)兄(あに)。


張宝:おうよ! 兄者の行くところ、どこへでも付いていくぜ!


張梁:我らも兄上と共に書(しょ)の教えに従います。


ナレ:その後、張角(ちょうかく)の口から伝え聞いた里(さと)の者達は「自分たちの村の秀才に

   に神仙(しんせん)が宿(やど)った」とたちまち彼を救世(ぐぜ)の方師(ほうし)と崇(あが)め、諸方(しょほう)へ触(ふ)れまわ

   った。

   当の張角(ちょうかく)はと言うと自邸(じてい)の門を閉ざし、道衣(どうい)をまとい、身を清め、

   南華老仙(なんかろうせん)から授(さず)かった太平要術(たいへいようじゅつ)の書(しょ)に学ぶ日々を送っていた。


   そしてある年、疫病(えきびょう)が流行(はや)る。


   その勢いはとどまる事を知らず、病魔(びょうま)の手は張角(ちょうかく)の住む村にまで及ん

   だ。


民1:うう…く、苦しい…、助けてくれ…。


民3:けほ…けほ…かか様…。


民2:あ、あなた…坊や、しっかり…うぅ…げほ、げほっ。


民3:か、か…さまぁ……か…、か、か…さ……ま……っ


民2:! 坊やっ…ぼう、や…っ!? うっ、ぐっ、ごほっごほっ!!

   ぁ……か…っ


張梁:いっ、いかん!

   !

   く…なんてことだ……っ!


民1:あ、あぁ…お、おまえ……っ!?

   うっ、ぐうッ、ゲホッ、ゴボッ!!

   

張宝:おっおいっ、しっかりしろッ!


民1:ぁ…ぅ……。


張宝:ち、ちくしょう…ッ!

   なあ張梁(ちょうりょう)、いつまでこんな世が続くんだ!?

   俺もこの疫病(えきびょう)で友を失った…!


張梁:朝廷(ちょうてい)では相変(あいか)わらず宦官(かんがん)どもがやりたい放題だとか…。

   もはや奴らはあてになりません…!


張宝:今こそ兄者が皆を、世の中を救う時じゃないのか!?

   行くぞ張梁(ちょうりょう)!


張梁:ええ! 兄上の元へ!


ナレ:二人は息を切らして張角(ちょうかく)の元へと戻ると、事の次第(しだい)を切(せつせつ)々と訴えた。


張宝:兄者、たったいま村の者が疫病(えきびょう)で死んだ!

   今こそ兄者の出番じゃないのか!?


張梁:民達を救えるのは兄上ただ一人です!

   どうか、立ち上がってください!


張角:…うむ。

   今こそ、神が我に出(い)でよと命じたもう日である…!

   弟達よ、門を開け!

   我みずから、病(やまい)に苦しむ民達の元へゆかん!


張宝:心得(こころえ)たァ! いざ、開門(かいもん)じゃあ!


張梁:うッ? こ、これは…!


民4:張角(ちょうかく)様! どうか、あっしらを弟子(でし)にしておくんなせぇ!


民5:救世(ぐぜ)の方師(ほうし)様! 私どももお弟子(でし)に加えてくだされ!


民6:おねげえしますだァ、張角(ちょうかく)様ァ!!


張梁:おお…見てください兄上!

   門の前に…民だけじゃない、裕福(ゆうふく)と見られる者まで…!


張宝:す、すげぇ…四、五百人はいるんじゃないのか…!?


張角:うむ…これだけの人数がおれば、各地にはびこる疫病(えきびょう)を早く鎮(しず)める事

   ができるやもしれぬ。

   よし、そなた達を我が弟子(でし)とする!


民4:あ、ありがとうごぜえますだぁ!!


民5:私どもはどこまでも方師(ほうし)様について参ります!


民6:どうか、病(やまい)に苦しむ皆をお救いくだせえ!


張角:あわせて私が神仙に授(さず)かった書(しょ)より会得(えとく)して作った秘薬(ひやく)をつかわす!

   よいか。


   大人の男にはこの金仙丹(きんせんたん)を与えよ。

   大人の女には銀仙丹(ぎんせんたん)を、年端(としは)のいかぬ幼(おさな)い者にはこの赤神丹(せきしんたん)を飲ませ

   るのだ。

   もしそれでも治(なお)らぬ者あらば我に知らせるか、我の元まで連れて参れ

   。

   我みずからが治療(ちりょう)を施(ほどこ)そうぞ!


民4:わかりました、張角(ちょうかく)様ァ!


民5:ただちに疫病(えきびょう)はびこる地へ向かいます!


民6:ようし、まずは西へ向かうぞォ!


ナレ:弟子(でし)たちは四方(しほう)の悪疫(あくえき)はびこる地へと散っていった。

   そして病(やまい)に苦しむ者達に秘薬(ひやく)を与え、張角(ちょうかく)の功徳(くどく)を語り聞かせた。

   病(やまい)の癒(い)えた者はまた張角(ちょうかく)の新たな弟子(でし)となり、疫病(えきびょう)の鎮(しず)まらぬ地へと

   赴(おもむ)く。

   彼に心酔(しんすい)し、慕(した)う者は日を追うごとに増え続け、いつしか太平道(たいへいどう)とい

   う教団となる。

   張角(ちょうかく)はその頂点にあり、大賢良師(だいけんりょうし)と称(しょう)するまでに至(いた)っていた。


民5:大賢良師(だいけんりょうし)・張角(ちょうかく)様の下(もと)に集まれば長く生きられ、幸福を得られる

   ぞォ!


民6:太平道(たいへいどう)の名のもとに、天下泰平(てんかたいへい)の道は開かれる!


民4:長生きして福を得て! 互いに平等に恵みあえ!

   さすれば天下は泰平(たいへい)となる!


民4・5・6:長生きして福を得て! 互いに平等に恵みあえ!

       さすれば天下は泰平(たいへい)となる!


民4:おお…見ろ、大賢良師(だいけんりょうし)様だ!!


民5:張角(ちょうかく)様ァーーーッ!!


民6:大賢良師(だいけんりょうし)様ーーーッ!


【大歓声のSEあれば】


張角:愛(いと)しき我が同胞(どうほう)たち、頭(こうべ)を上げよ!

   よく聞くのだ!


   長生きして福を得よ!

 互いに平等に恵みあえ!

 さすれば天下は泰平(たいへい)となり!

まさに天下にとって大吉とならん!


民4・5・6:張角(ちょうかく)様万歳ーーーッ!

       大賢良師(だいけんりょうし)様万歳ーーーッ!!

       万(ばんばん)々歳ーーーーーッッ!!


【大歓声のSEあれば】


ナレ:わずか数年ののち、太平道(たいへいどう)教祖(きょうそ)・張角(ちょうかく)の下(もと)に集(つど)った信者の数は数十万

   に達し、その勢力は後漢帝国(ごかんていこく)十四州のうち、実に八州にまで拡大して

   いった。

   張角(ちょうかく)は集まった信者達を三十六方位(さんじゅうろくほうい)に分けて立たせ、大方(だいほう)、中方(ちゅうほう)、

   小方(しょうほう)からなる階級を設(もう)ける。

   大方(だいほう)に任ぜられたものだけでも一万人余り。

   そしてついに漢王朝(かんおうちょう)に対し、彼らは決断することとなる。


方将1:天下を太平(たいへい)に導く、互いに平等に恵みあう道は血を求めぬはずだ!

    乱の企(くわだ)ては太平道(たいへいどう)の道ではない!


方将2:朝廷(ちょうてい)の為政者(いせいしゃ)らが我が太平道(たいへいどう)に帰依(きえ)するまで、ひたすら布教(ふきょう)に専念

    するべきだ!


方将3:いまさら何を生ぬるい事を!

    朝廷(ちょうてい)の腐敗(ふはい)はもはや手の施(ほどこ)しようがないわ!


方将4:そうだ! 我ら方将(ほうしょう)が三十六方位(さんじゅうろくほうい)に立ち、農民たちを訓練してきた

    のは何のためだ!


方将2:それは農民達の自衛(じえい)の為で、朝廷(ちょうてい)に弓を引く為のものではない!


方将3:馬鹿な! ではこのまま指をくわえて見ていろと言うのか!


方将4:集まった民達はすでに数十万! この数が天の意思ではないのか!


方将1:だからと言って、武力で解決するのが正しいわけではあるまい!


【ガヤガヤ言うSEあれば】


張角:………。


張宝:大賢良師(だいけんりょうし)・張角(ちょうかく)様! いやさ、我が兄者!


張梁:我ら二人、太平道(たいへいどう)の教祖(きょうそ)たる張角(ちょうかく)様にではなく、我らが兄上の張角(ちょうかく)に

   対して進言(しんげん)いたします。


張角:…二人とも、いかがしたのだ?


張宝:我が太平道(たいへいどう)、信者の数二十万を超えて以来、その増え方たるや尋常(じんじょう)で

   はない!


張梁:これは、昨今(さっこん)の天変地異(てんぺんちい)による凶作(きょうさく)のため税(ぜい)を払えなくなった民達が

   多数流れ込んで来た為です。


張宝:今、太平道(たいへいどう)に必要なもの…、それはこれからも増え続けるであろう

   信者達の食料を確保する力であり!


張梁:この数十万に膨(ふく)れ上がった信者達を、今以上に強力に統率(とうそつ)してゆく、

   組織としての力であります。


張角:…そしてその力は、我が太平道(たいへいどう)に新たな目標を定める事で生まれる…

   そう申すのだな?


張宝:いかにも!


張梁:すなわち、漢王朝(かんおうちょう)に代わる新たな王朝(おうちょう)の樹立(じゅりつ)!

   これにほかなりませぬ!


方将3:な、なんと…!


方将4:新たな王朝(おうちょう)…!!


方将1:それは、謀反(むほん)では…。


方将2:だ、大それたことを…?


【ガヤガヤ言うSEあれば】


張梁:我が太平道(たいへいどう)は今や、重大な岐路(きろ)に立っております!


張宝:兄者のお考えやいかに!?


張角:……。

   天命は、いまだ帝(みかど)と漢帝国(かんていこく)にあり。

   今、我がそなたら二人の意見をいれれば、数十万の信者全てが反逆の

   国賊(こくぞく)となるであろう。


張宝:否(いな)ッ!

   漢帝国(かんていこく)の天命はすでに尽(つ)きている!


張梁:これをご覧ください!

   各地に流布(るふ)しているこの四文字こそ、天下に満ちる声そのものです!


張角:! 蒼天已死(そうてんすでにしす)…!!

   なんと…そうであったか……!!

   その言葉が世に満ちていると、そう申すのだな!?


張宝:いかにも!

   我が兄者、いや、大賢良師(だいけんりょうし)・張角(ちょうかく)様!!


張梁:なにとぞ、ご決断を!!


張角:蒼天(そうてん)はすでに死しておったか…!

   あい分かった!!

   その四文字に我が天命を連(つら)ねて記(しる)し、旗印(はたじるし)とするべし!

   すなわち!

   

   蒼天巳死 (そうてん すでに しす)

   黄夫立当 (こうふ まさに たつべし)

   歳在甲子 (とし こうしにありて)

   天下大吉 (てんかだいきち)


   そして我が太平道(たいへいどう)は今より党を結党(けっとう)する!

   何か良き名はあるか!


張宝:しからば大賢良師(だいけんりょうし)様!

   良師(りょうし)様が常に髪を包んでいるその黄色い布にちなんでーー


張梁:黄巾党(こうきんとう)、というのはいかがでしょうや!?


張角:黄巾党(こうきんとう)…うむ!

   我はこれまで大賢良師(だいけんりょうし)を称(しょう)してきたが、今より新たに天公(てんこう)将軍を

   加えて、大賢良師(だいけんりょうし)・天公(てんこう)将軍を名乗る事とする!

   張宝(ちょうほう)!


張宝:ははっ!


張角:そなたはこれより地公(ちこう)将軍を名乗れ!


張宝:承知いたしました!!


張角:張梁(ちょうりょう)!


張梁:ははっ。


張角:そなたは人公(じんこう)将軍を名乗り、兄(あに)張宝(ちょうほう)と共に方将(ほうしょう)達を統括(とうかつ)するのだ!


張梁:ははっ、謹(つつし)んでお受けいたします!


張角:各地に散らばる全信徒(ぜんしんと)に伝令(でんれい)を飛ばせ!

   我、漢帝国(かんていこく)に取って代わらん!!

   総決起(そうけっき)は明(あ)くる年の三月五日とする!


張角役以外全員:【喚声】

        もしくは、

        蒼天巳死 (そうてん すでに しす)

        黄夫立当 (こうふ まさに たつべし)

        のどれかを何度か言ってください。


ナレ:太平道(たいへいどう)、黄巾党(こうきんとう)となった彼らの雄叫(おたけ)びは空に響き、地を震わせる。

   その様子(ようす)を、はるか遠くに佇(たたず)む一人の老人が苦渋(くじゅう)に満ちた顔で眺(なが)めて

   いた。

   南華老仙(なんかろうせん)である。


南華老仙:…張角(ちょうかく)…道をあやまったか。

     あれほど口を酸(す)くして教えたというに…。

     我が眼も曇(くも)ったか…。

     汝(なんじ)の決断は新(あら)たに長く続く乱世(らんせ)、その端緒(たんしょ)となるであろう。


ナレ:西暦一八四年、支那(しな)歴の中平(ちゅうへい)元年。

   中国史上最大の農民蜂起(のうみんほうき)、世に言う黄巾(こうきん)の乱が勃発(ぼっぱつ)する。

   初めは民(たみ)達の救済(きゅうさい)の為に組織(そしき)されたはずの太平道(たいへいどう)教団。

   しかし、黄巾党(こうきんとう)として決起(けっき)して以降、民の救済(きゅうさい)はいつしか二の次(つぎ)と

   なり、従わぬ者達からは略奪(りゃくだつ)と殺戮(さつりく)を繰り返し、黄巾賊(こうきんぞく)として恐れ

   られるに至(いた)る。 

   これによって後漢帝国(ごかんていこく)の威信(いしん)は地に墜(お)ち、同時に各地に散らばる

   数多(あまた)の淵(ふち)に潜(ひそ)んでいた蛟龍(こうりゅう)たちを呼び覚(さ)ます結果となる。

   三国時代へ至(いた)る大乱世(だいらんせ)。

   黄巾(こうきん)の乱は、その始まりの銅鑼(どら)を高らかに鳴らしたのである。




END





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