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プロローグ

それはとある休日の昼下がり。走行中の電車内で起こったことだった。


「お母さん!どこーっ?!!」


幼児の泣き声が、車内に響き渡る。傍には誰もおらず、あるのはいくつかの人の形をした石像だけ。

そんな幼児に近寄る一つの重い足音があった。幼児がゆっくりと振り向くと、そこには一見人間と見た目は変わらないが、鋭い牙や縦長の瞳孔、長く先が裂けている舌を持った異様な化け物が立っていた。


触れることで人を石化させる事ができ、石化させると共に人間のエネルギーを吸収する化け物、“メドゥーサ“だ。古より語り継がれてきたメドゥーサのように頭から蛇が生えたりなどはしておらず、体格や外見は個体によって変わる。今回は屈強な肉体の大柄な個体だ。


「お願いします!開けてください!娘がまだ取り残されているんです!!!」


隣の車両は乗客がすし詰め状態だ。そんな中、一人の女性が泣きながら声を上げている。


「ダメだ!もう何人も石化されてる!ここを開けたら()がこっちに来るかもしれない!」


「いやぁ!!!ひなぁー!!!!」


どうやら取り残された幼児は声を上げる女性の娘だったようだ。


「おい!誰かこの女性をもっと奥へ連れて行ってくれ!」


貫通扉が開かぬ様抑える男性が、声を荒らげる。女性はそんな男性の、貫通扉を抑える手を、離させようと男性に掴みかかる。


「おい!やめろ!!死にたいのか!!」


「娘が死ぬくらいなら私が死にます!!!!!」


男性が女性を抑えるため、貫通扉からふと手を離したその時。

まるでその時を待っていたかのように、何者かが瞬時に貫通扉を開け、メドゥーサと幼児のいる隣の車両へと移動した。


「あっ?!」


男性は慌ててもう一度扉を閉める。だが、その何者かは既に隣の車両内だ。


「グフフフ。」


薄気味悪い笑みを浮かべたメドゥーサが、幼児の頭を掴もうとゆっくりと手を伸ばしている。だがその瞬間、


「待ちなさいっ!」


メドゥーサの背後から何者かの声がした。音に反応し、メドゥーサが振り向くと、そこにはロングヘアの端麗な顔立ちの少しだけ吊り上がった目の少女が悠然と立っていた。少女は手に小さな果物ナイフを持っている。

そして、その少女の大きな瞳は水色に光り輝いていた。


メドゥーサは標的を変えたようで、体を勢いよく少女の方に向け、少女の方に腕を伸ばす。


「能力、腕力強化。無効化してしまえばレベル1と言ったところですね。」


何やらブツブツと呟くと、少女はメドゥーサに向かい思い切り走り出した。少女がメドゥーサの間合いに入ると、メドゥーサは少女に殴りかかってきた。だが少女はその攻撃を華麗に避け、手に持っていた果物ナイフを人間の心臓の位置に突き刺した。


グアッと一声上げ、メドゥーサは刺された心臓部からみるみるうちに黒い塵と化していく。

同時に駅に到着したようで列車は鋭い金属音を立て停車した。


「八咫烏戦闘部隊です!大丈夫ですか!」


空いたドアから、金色の、三本足の鳥の紋章が胸元に光り輝く黒い服を着た者達が数名飛び乗ってきた。だが、目の前の光景を見ると全員が固まった。


「これは....一体....?」


少女が長い髪を靡かせながら振り向くと、一言だけ呟いた。


「私が狩りました。」

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